日刊労働通信社 | 農協との全面戦争に

農協との全面戦争に

コラム 社会

毎日の「政治いま」に「農政改革やらなきゃ」「菅、石破両氏、政権発足前に腹合わせ」「減反、戸別補償 農協にメス」が書かれている。

 

「政府・自民党内で40年余続いたコメの生産調整(減反)の廃止論が急浮上した。今回の『政治 いま』は減反見直し論の背景を探る。
昨年12月末、第2次安倍内閣の発足を目前に控えた自民党本部の一室で、官房長官に内定していた菅義偉氏と、同党の石破茂幹事長が2人だけで向き合っていた。『農政改革をやらなきゃだめだよね』。菅氏が口火を切ると、麻生政権で農相を務めた石破氏はすぐに呼応した。『そうなんだ。私が農相の時も改革案を出していたんだ』。
石破氏にとっては苦い思い出だ。自民党が政権転落する前の2008~09年、石破農相はコメ農家が半ば強制されていた生産調整(減反)の『選択制』を検討した。減反に参加するかどうかは農家に選ばせ、コメをより多く作りたい農家は参加しなくていい。農地の大規模化と効率化、コメの低価格化による競争を押し進めようとの試みだった。
減反は、国が定めた毎年の生産目標を自治体が農家に割り当て『コメ余り』を防ぐ仕組み。高い価格を維持し、中小農家の収入を確保して保護する農政の基本政策だ。石破案が表面化すると、自民党の支持基盤である農業団体は『中小農家がつぶれる』と猛反発。09年衆院選を控えた同党も激しく抵抗し、石破案はかき消された。石破氏が経緯を説くと、菅氏は『そうだったのか』と膝を打った。
ただ、菅氏の原点は石破氏とはやや異なる。『私は秋田の農家の長男。父親が40歳の時にイチゴ農家の組合を作って、<コメでは飯が食えない>と農協から完全に独立した。農協は全盛期だったし、おやじもよくやるなあと思いましたけどね』。その記憶は『いまの農政は、産業としての自立を阻害している』という問題意識を生んだ。

 

腹合わせを済ませた両氏は、前回の二の舞にならないよう慎重に事を進めた。自民党は政権復帰を果たしたが、参院ではまだ少数与党で、抜本改革の足場が固まっていなかったからだ。まず『首相官邸に改革会議を作るべきだ』という石破氏のすすめで、菅氏は今年5月、安倍晋三首相を本部長とする『農林水産業・地域の活力創造本部』を官邸に設置した。
さらに石破氏は20年来の親交がある農水官僚、針原寿朗氏を『何が何でも中枢に』と菅氏に頼み込み、食料産業局長から事務方ナンバー2である農水審議官に抜てき。組織、人事の両面で布石を打った。
自民党が7月21日投票の参院選で大勝すると、両氏は一気呵成に動き出す。菅氏は8月8日の活力創造本部で『JA(農協)の役割を含めて見直してほしい』と改革の本格化を指示。石破氏も、その直後、自民党の農林関係議員らの会合で、①民主党が導入した戸別所得補償制度の見直し②農協改革③減反見直し――の3点を指示した。首相の懐刀と、党側トップの石破氏。農政改革の二つの「支流」が合流し、大きな流れができつつある」。

 

官邸の菅官房長官と、自民党の石破幹事長と西川公也TPP対策委員長の3人がスクラムを組んで、農業構造改革を首相主導で前進させようとしている。今度こそ、本物である。政権復帰後、加藤、谷津両氏の落選・引退で、農水族の世代交代が進み、改革派の急先鋒である西川氏が農水族の中心存在となり、TPP対策委員長として、族議員の反発を抑え込んでいるからである。
TPP交渉という黒船によって、農業構造改革の好機が来たのである。減反5年後の廃止に次いで、本丸である「企業の農地所有の自由化」まで一気に切り込むべきである。農協との全面戦争になるか。

 
 
編集 持田哲也

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