586品目の開示
日経の社説に「『聖域』の中身開示し自由化へ議論深めよ」が書かれている。
「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で大きな焦点となる関税の撤廃をめぐり、政府・与党内の調整が活発になってきた。ここは交渉の成否と日本の農業の行方を左右する重要な局面である。経済の実態に即した透明な議論を、政官の当事者に求めたい。
高い水準の貿易自由化を目指すTPP交渉は、あらゆる貿易品目について関税を撤廃することを目標に掲げている。ただ、これは交渉の中身を濃くするための建前であり、本音ではどの国にも守りたい『聖域』が国内にある。
日本では自民党がコメ、麦、乳製品、牛肉・豚肉、砂糖を『重要5項目』と呼び、自由化の例外にすると主張してきた。この5項目を詳しく見ると、関税分類上は586品目に細分化されている。
たとえばコメに分類する品目は『もみ』『玄米』『精米』など、いわゆる『ごはん』の材料となる粒状のコメだけでなく、『もち』『だんご』『ビーフン』『せんべい』などの加工品や、他の原料と混ぜた調製品が多く含まれる。コメだけでも58品目ある。
これらを精査し、本当に関税で守る必要があるかどうか調べるのは当然のことだ。自由化しても国内の影響が少ない品目が含まれている可能性がある。関税撤廃する品目数が多いほど、自由化の比率を示す数字は大きくなり、他国との交渉で有利になるだろう。
品目絞り込みの意見調整は、農業関係者だけによる密室の協議で進めてはならない。対象品目に関連する生産者や加工業者の経営の実態を重視し、何よりも現実の消費の動向を見据えて、透明性の高い議論をすべきだ。
今のところ5項目の中に具体的にどのような関税品目があるのかすら、一般には知られていない。これでは農家や企業だけでなく、最大の利害関係者である消費者の目で判断ができない。
日本の農業政策は、農林水産省、農業協同組合、農林族議員の3者が中心となり、重要な決定がなされる時代が続いてきた。この結果、農政への国民や消費者の信頼が損なわれたという苦い教訓を忘れてはならない。
安倍晋三首相は、TPP交渉参加に際して『強い農業をつくる』と宣言している。その目標は関税で手厚く保護するだけでは実現できない。首相は自ら指導力を発揮して、中身があいまいな『聖域』に果敢に切り込んでほしい」。
「品目絞り込みの意見調整は、農業関係者だけによる密室の協議で進めてはならない。対象品目に関連する生産者や加工業者の経営の実態を重視し、何よりも現実の消費の動向を見据えて、透明性の高い議論をすべきだ」は、正論である。
自民党が、「重要5項目」「586品目」を「聖域」としているが、その中身が開示されておらず、国民は知らないのである。コメだけでも58品目もある。「もち」「だんご」「ビーフン」「せんべい」などの加工品も含まれる。
問題は、これら加工品も聖域になっているが、国民から見れば、関税撤廃、自由化の対象となる。586品目全てを開示し、国民の精査に任せるべきである。おのずと、「本体」を除く、加工品、調整品の約230品目、全体の4割は、関税撤廃・自由化の対象とすべきとなる。この民意をテコに、農協・族議員の抵抗を押し切るべきである。これが首相主導である。
編集 持田哲也
2013/11/06 11:00