日刊労働通信社 | 年間被曝線量基準変更

年間被曝線量基準変更

コラム 社会

読売に「早期帰還と徐染費減期待」「被曝線量基準20ミリ・シーベルトに」「東電支援に影響も」が書かれている。

「国の原子力規制委員会が福島原発事故で避難している住民の帰還に向け、年間被曝線量は20ミリ・シーベルトで安全だとする指針をとりまとめることで、住民の早期帰還と除染費用の大幅削減が共に進む期待がある。震災復興や東電への政府支援にも影響を与えそうだ。

<慎重な住民も>
指針の最大の狙いは、規制委による客観的な分析を示すことで、住民の不安を払拭することだ。政府は年間被曝線量20ミリ・シーベルト以下の『避難指示解除準備区域』は、2014年春から住民の帰還を認める方針だ。
しかし、住民側には、政府が11年に被曝線量の長期的な目標として設定した『1ミリ・シーベルト以下』を帰還の有力な判断材料とする姿勢が根強い。政府内では『1ミリ』が定着すれば、『除染に膨大な時間と費用がかかり、住民の帰還見通しが立てられなくなる』(政府高官)との危機感も強まっていた。
そこで、規制委は9月に放射線の専門家を集めた検討チームを発足させて、健康への影響や対策を盛り込んだ指針の作成を進めていた。指針により、『1ミリ』の心理的な壁を押し下げて帰還を後押ししたい考えだ。
さらに、帰還者には携帯式の線量計を着けてもらい、実際の被曝線量を正確に測る仕組みを導入する。各市町村には、保健師などが常駐する『帰還支援センター(仮称)』を設置し、住民の不安に手厚く目配りする方針だ。

<測り方も>
除染する範囲や費用が少なくなる可能性もある。現在の被曝線量の測定は、1日のうち、屋外に8時間、屋内(木造建築物)に16時間いると一律に推定している。しかし、現実には屋外に8時間以上いる人は少ない。自治体が携帯式で測定したら従来の5分の1に下がった例もある。指針により、測定される線量が下がれば、除染が必要な地域は大きく絞り込まれる。
除染作業も、表土を掘り起こすような高コストの方法をとらずに、簡単な作業で済む地域が増える。汚染土を保管する中間貯蔵施設の規模も縮小できる。
産業技術総合研究所の試算によると、福島県の除染費用は線量を1ミリ・シーベルトまで下げる場合、最大5・1兆円に達するが、1~5ミリ・シーベルトの範囲を部分的な除染にとどめれば3兆円で済む。
政府は除染費負担に苦しむ東電を支援するために、新たな除染費用や中間貯蔵施設の建設費を国費で負担することを検討中だ。除染費用が圧縮されれば東電の経営負担は和らぎ、国費投入も少なくて済む。

<行方>
ただ、指針で帰還が進むかどうかは、住民の受け止め方に左右される。放射線は目に見えず、影響が出るかどうかわからないだけに、住民が素直に指針を受け入れるかは不透明だ。
政府内では『まず戻ってもらって生活してもらえば、20ミリでも不安はないと世論は変化するだろう』(政府幹部)と期待する。指針を浸透させるためには、規制委や政府の丁寧な説明と、手厚い地域支援策を並行して行う必要がある」。
原子力規制委員会が、住民の帰還に関し、1年間で被曝線量が、20ミリ・シーベルト以下であれば健康上問題ないとの指針を今月中にまとめると言う。ようやくである。民主党前政権が、長期目標の1ミリ・シーベルト以下を、あたかも短期目標として、避難住民に刷り込んだからである。今でも、1ミリ・シーベルト以下でなければ、帰還できないと思い込んでいる。ここが、福島復興の遅れの元凶である。

編集 持田哲也

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