日刊労働通信社 | アベノミクス『3本の矢』

アベノミクス『3本の矢』

コラム 政治

 
産経の「環球異見」に「アべノミクス」が載っている。
 
「安倍晋三政権が発足してから2度目の正月を迎えた。2012年12月の首相就任からの1年余りで政権の経済政策『アベノミクス』は功を奏し、13年末には日経平均株価が6年ぶりに1万6千円台を回復した。
金融緩和や財政刺激といった政策が市場に好感されているかたちだが、果たしてこの勢いは今年も維持されるのだろうか。アベノミクスの『3本の矢』のうち成長戦略の実行に疑問を呈する論調が目立った」。
 
1、「第3の矢失速,抵抗恐れず改革を」(ワシントン・ポスト)
「安倍晋三政権の滑り出しの頃は『経済再生へ野心的に行動している』(米紙ウォールストリート・ジャーナル)など、アベノミクスにおおむね好意的だった米メディアだが、最近は辛口の論調も目立ち始めた。例えば、2013年11月9日付のワシントン・ポスト紙は『日本の経済改革はあまりに小規模で遅い』と題した社説を掲載。アベノミクスの『三本の矢』のうち第1の矢の金融緩和と第2の矢の財政刺激については、『軌道に乗っている』と評価しながらも、それらは特定利益団体の抵抗がないため『政治的にも実行に移すのは容易だった』と指摘した。
一方、社説は『第3の矢である成長戦略こそ困難』であり、実際に失速しかけていると懸念を示した。その例として一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売規制を一部残すとした政府の方針を取り上げ、安倍政権は特定利益団体の圧力に屈して当初の改革案を『骨抜きにした』と批判。農業の競争力強化でも踏み込みが不十分で、『安倍首相の改革の意欲が本物かどうかはっきりしない』と不満を見せる。
ニューヨーク・タイムズ紙傘下の国際紙『インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ』も12月17日付で、『アベノミクスはうたい文句通りには機能していない』とのロイター通信の解説記事を掲載した。
 
記事は、やはり金融緩和と財政刺激についてはひとまず成果を収めて『賞賛を勝ち取った』とする一方、企業の技術革新と成長を促す政策には時間がかかり、再び不景気に逆戻りしかねないリスクや、さらには『かつてない公的債務を抱え込む』恐れがあると危ぶむ。アベノミクスに期待したが、『恩恵を受けている実感がない』とこぼす大阪の中小企業経営者のため息も紹介している。
ワシントン・ポスト紙は『首相の改革は国内の(既得権益からの)強い抵抗に直面しているが、思い切ってやることを恐れていては改革は成し遂げられない。首相はそれを肝に銘じるべきだ』と注文を付けている」。
「第3の矢失速」は、正論である。抵抗を恐れず、改革を断行する安倍首相の改革意欲の真贋が、今,問われている。
 
2、「完全には成功しない理由」(フィナンシャル・タイムズ)
「英紙フィナンシャル・タイムズの著名経済コラムニスト、マーティン・ウルフ氏は12月18日付紙面で、『なぜ、アベノミクスが失望に終わるのか』と題する論文を発表し、アベノミクスの“弱点”を指摘した。『デフレを退治する可能性は十分あるが、経済成長率を大幅に引き上げることはできそうにない』とした上で、『部分的な成功』にとどまると予測した。
ウルフ氏はまず、アベノミクスがデフレ終結を目指した金融政策、柔軟な財政政策、構造改革――の『三本の矢』からなることを解説。『このうちで的に当たる可能性が最も高いのは第1の矢だ』と主張した。
日銀が消費者物価の2%上昇という目標を提示し、新総裁の黒田東彦氏の下、日本国債の保有額を2年間で2倍にする『量的・質的金融緩和』を始めたことを『米国による1933年の金本位制離脱に匹敵する転換だ』と称賛する専門家の声などを紹介し、デフレ脱却と経済再生の楽観論にも一定の根拠があることを認めた。
しかし、『金融政策では、構造的な不均衡を解消することも、経済成長率の上昇にもつながらない』と強調し、日本政府が掲げる実質年率2%の経済成長達成は『かなり野心的な目標だ』とみる。
 
その理由として、日本の生産年齢(15~64歳)人口が減っており、女性の労働参加率が高くなったとしても経済成長の要因とはならないとクギを刺した。また、①企業に莫大な余剰資産が積み上がっても投資に回らず公的債務も急増し巨額財政赤字も増える②個人所得や個人消費の国内総生産(GDP)比が低いことを無視している--などと現在の政策の問題点を指摘した。その上で、今年4月に消費税率が引き上げられることから、『企業から家計に所得を移行させなければ、消費は増えない。それがなければ、経済の活力を財政再建に結びつけることもできない』と断言。『アベノミクスは完全な成功にはほど遠い』と結論づけた」。
「完全には成功しない理由」として、実質年率2%の経済成長達成ができないことををあげている。その主因は、企業から家計への所得の移行、つまり、賃上げがスムーズになされないからだとしている。4月の賃上げ次第である。
  
編集 持田哲也

« »