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コラム 経済

 
読売の社説に「日本経済再生」「効果的な成長戦略に練り直せ」「TPP交渉で国益の最大化を」が書かれている。
 
「安倍政権の進める経済政策『アベノミクス』を追い風に、景気は明るさを増してきた。これから問われるのは成長の持続力である。20年近く続いた悪性デフレの病を、完治させることが肝心だ。
政府は、民間主導の自律的な成長を目指し、実効性のある成長戦略を加速させねばならない。東京市場の平均株価は、ここ1年で約60%上昇し、1万6000円前後で推移している。日本経済を苦しめた円高も大幅に修正され、円安傾向が続く。
 
<カンフル剤は効いたが>
安倍政権が打ち出した大胆な金融緩和と財政出動に加え、米国の景気回復も好材料となった。大切なのは、改善の動きを『偽りの夜明け』に終わらせないことだ。
最大のハードルは、4月の消費税率の引き上げである。消費税率が5%から8%に上がると、家計全体の税負担は年6兆円も増える。国内総生産(GDP)の6割を占める消費が冷え込み、景気が失速する懸念がある。
景気テコ入れ策として財政出動に頼るだけでは、財政悪化に拍車がかかる。経済再生と財政再建を同時に達成するには、大胆な成長戦略で民間経済を活性化させることが欠かせない。
政府は昨年末に成立した産業競争力強化法をはじめ成長戦略の関連施策について、近く実行計画を策定し、実施時期や担当閣僚を明示する。各施策の着実な遂行と、効果の検証が求められよう。だが問題は、成長戦略の中身が物足りないことだ。
 
<規制緩和が物足りない>
『世界一ビジネスがしやすい環境を作る』とした国家戦略特区の規制緩和メニューは、雇用や医療、農業などの強固な『岩盤規制』を十分に突き崩せなかった。経済界が強く求める労働時間の規制緩和や、自由診療と保険診療を併用する混合診療の大幅拡充なども見送られた。
首相は年頭の記者会見で、今年半ばに成長戦略を見直す方針を表明した。既得権を守ろうとする各府省や関係団体の抵抗を、首相の指導力で封じ込め、規制緩和を前進させてもらいたい。欧州やアジアの主要国よりも高い法人税実効税率の引き下げも、成長戦略の課題である。
早期に実現して、日本企業の競争力強化を図るとともに、外資の参入促進による日本市場の活性化を目指すべきだ。安価で安定した電力供給の回復は、経済成長の基盤といえる。安全性の確認できた原発を着実に再稼働することも不可欠である。
せっかくの成長戦略も、主役の企業が『笛吹けど踊らず』では成果は乏しい。デフレや円高で業績不振が長引いたこともあり、多くの企業が守りの姿勢から抜け出せていないことが気がかりである。
日本企業は総額200兆円を超える現金と預金を保有している。万一に備えて手元資金を残しておこうと、設備や人材への投資を控えてきた証しといえる。超円高の苦境は脱したものの、製造業各社は海外市場で、新興国企業などと激しい競争を展開している。国内は、人口減少による市場の縮小が見込まれる。知恵を絞り、勇気をもって『攻めの経営』に転じないと、厳しい経営環境の中で企業が生き残るのは難しいだろう。
 
<「攻めの経営」が必要だ>
製造業は、グローバル競争を勝ち抜くため、モノ作りの力を鍛え直さねばならない。非製造業は、長年にわたり課題とされている低生産性の克服が急務である。
各企業が積極的な経営戦略で利益を伸ばし、それに見合う賃上げに踏み切れば、消費が増え、さらに企業業績は上向く。成長の『好循環』に貢献してほしい。日本が経済的な発展を続けるには、自由貿易を一層推進し、アジアなど成長市場の需要を取り込む必要がある。
大きなカギを握るのが、日米はじめ12か国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉だ。コメや麦など重要5項目の関税撤廃を巡る日米の対立が深まり、昨年末の大筋合意は見送られた。決着の遅れに関し、交渉を主導する日米両国の責任は重い。
TPPで合意できれば、日本と欧州連合(EU)、日中韓など他の経済連携にも弾みをつける効果が期待できよう。日本の国益を最大化するため、何を守り、どこまで譲るか。政府はしたたかに交渉を進め、難局の打開を図るべきだ」。
社説に書いている「『世界一ビジネスがしやすい環境を作る』とした国家戦略特区の規制緩和メニューは、雇用や医療、農業などの強固な『岩盤規制』を十分に突き崩せなかった」は、正鵠を突いている。
 
アベノミクスの成功の可否が、ここにかかっている。国家戦略特区としての東京を「世界一ビジネスしやすい東京」に、2020年の東京オリンピックまでに、できるか、である。アベノリンピクスの結実体として、である。2月9日、投開票の都知事選の争点は、脱原発の是非ではなく、アベノリンピクスの是非にすべきである。
問題は、アベノミクス・アベノリンピクスは、小泉構造改革路線の継承であるのに、その元祖である小泉元首相が、「脱原発」を持って頓挫させようとしていることである。変節と言わざるを得ない。
 
編集 持田哲也

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