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日経の「スクランブル」に、「『6月波乱』の足音」「追加緩和巡り探り合い」が書かれている。
 
「日銀の3月の全国企業短期経済観測調査(短観)を受けた1日の東京株式市場は大きな反応を見せなかった。だがよく目を凝らすと、株式市場の追加緩和期待をくっきりと価格に反映しているマーケットがある。日経平均オプション市場だ。投資家の動向をつぶさに観察すると、株式市場で消えかかっていた追加金融緩和への期待が再び高まり始めていることが分かる。
 
『全体として市場の予想より悪かった点は否定できない。株式市場は今後、日銀の追加緩和を期待する動きになっていくだろう』。みずほ投信投資顧問の柏原延行氏はこう指摘する。
 
株式市場参加者が今回の日銀短観で注目していたのは、4月1日からの8%への消費増税を受けて、企業の景況感がどこまで悪化するのかの一点に尽きる。
 
足元の大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス17と2007年12月以来の高水準だったが、3カ月後の先行き見通しはプラス8と9ポイント低下。市場予想の中心値(プラス13)を5ポイント下回っており、企業が消費増税後の景気動向を予想以上に警戒している現状が浮き彫りになったといえる。
 
振り返れば、3月11日の金融政策決定会合後の記者会見で日銀の黒田東彦総裁が『現時点では何か金融政策を調整する必要があるとは思っていない』と景気の現状に対する自信を表明。この発言を受けて、追加金融緩和に対する株式市場参加者の期待が大きく後退したという経緯がある。そのいったん消えかかった期待を再燃させたのが、今回の短観だったというわけだ。
 
野村証券の尾畑秀一氏は『日銀はもともと市場予想より高かった成長率見通しを引き下げざるを得ないだろう。今回の短観は直ちに4月に日銀が追加緩和を検討するまでの材料にはならないだろうが、様子をみて7月には動く』と読む。こうした動きを見据えているのが、日経平均オプション市場だ。
 
オプション価格から逆算した相場の予想変動率を5月物から順番に並べると、先週の3月27日の数値と比べ、1日時点ではすべての限月で予想変動率が上昇している。この数字は、オプションの投資家がその満期時点で日経平均がどの程度変動すると見込んでいるのかを示す。注目すべきは、6月物と7月物の予想変動率が他の限月に比べ高くなっている点。通常、満期が遠くなるほど予想変動率が高まるはずだが、オプション市場は『6~7月に相場が最も大きく変動する』と予想しているわけだ。
 
ゴールドマン・サックス証券の宇根尚秀氏は『ここ数日、満期6~7月では権利行使価格1万5500~1万6000円の日経平均のコールオプション(買う権利)の買いが目立ち始めた』と説明。『海外勢の一角が6~7月の追加緩和のサプライズに備えようと動き始めている』と指摘する。
 
日経平均が行使価格を大きく上回って上げた場合、このオプションがあれば行使価格で買って現値で売ることで利益を得られる。それだけ大幅高を見込む投資家が多いわけだ。こうした動きが、同時期の予想変動率の上昇につながった。
 
首尾良く市場の期待通りに日銀が動けばいいが、必ずしもそうとは言えないだろう。『日銀幹部と話す際には緩和の話題を極力持ち出さないことにしている』。ある大手証券の幹部はこう明かす。なぜか。『黒田総裁は市場に催促されて動くのを嫌うと思う。本当に動いてもらうためには、サプライズがあると思ってもらわないと』(同幹部)
 
緩和がなければ、逆にネガティブサプライズを呼び起こす可能性もある。いずれにしても、オプション市場が見据えるのは『6月の相場混乱』だ。オプションの価格が示すように、市場は将来を先読みしてどんどん動いていく。追加緩和という最大の材料を巡り、株式市場と日銀の『腹の探り合い』が始まった」。
 
日経平均オプション市場で、「6~7月に相場が最も大きく変動する」と予想している。「海外勢の一角が6~7月の追加緩和のサプライズに備えようと動き始めている」。日銀の追加緩和は、サプライズで前倒しの4月の可能性もあるが。
 
編集 持田哲也

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