日刊労働通信社 | 期待のわな

期待のわな

コラム 経済

 

日経の「景気指標」に小平龍四郎・編集委員が「『期待のわな』を避けよ」を書いている。

 

 

 

「米住宅バブルの崩壊を活写した『世紀の空売り』で知られる人気作家マイケル・ルイス氏。

近著の『フラッシュ・ボーイズ』では、1秒間に数千回の株式売買をくり返す超高速取引(HFT)を取りあげている。

まばたきよりも速い発注で一般投資家の機先を制し、細かな値ざやを稼ぐ取引手法だ。
ルイス氏の視線はもっぱら米国の株式市場に向けられているが、日本市場でもHFTの存在感は高まっている。

 

 

最近では東京証券取引所の1日の総売買代金の5割弱がHFTのものだとされる。1年前は3~4割だった。
先週はアベノミクス相場のもとで初めて、1年前比の日経平均株価が安くなった。

ここから『改革期待の後退』や『デフレ脱却の難しさ』といったメッセージを読み取ることも可能だ。

株価は経済や企業活動の先行きを占う指標でもあるから、そうした解釈は決して不自然ではない。
しかし株価形成の背後にいるのは、景気や企業業績の先行きをじっくり分析する長期投資家ばかりではない。

海外市場の値動きなどちょっとしたきっかけで、洪水のように売買注文をくり出す無機質な投資家も数多くいる。
株式市場の期待や反応を気にかける安倍政権は、短期の株価形成の主役がいったい誰なのかを、もっと分析すべきだ。
株式市場という鏡が常に真っ平らで、磨きあげられているとは限らない。

 

一時的には歪み、曇ることもある。そこに映った姿に振り回され、効果のほどが疑わしい政策を乱発する『期待のわな』にはまることは避けたい。
株式市場に指標を求めるとすれば、株価だけではなく、市場に流れ込むお金の量、売買代金にも目を向けた方がいい。

売買代金の増減は中長期の景気に先行することが多いからだ。

東証1部の1日売買代金は目下、2兆円前後で推移している。2013年5月は4兆円を超える日も珍しくなかった。

この1年前比の落差が埋まるような政策を、長期投資に徹する年金基金や投資信託は求めているのだ」。

 

 

現在の東証1部の1日売買代金2兆円前後を、1年前の5月の4兆円超に戻すことが肝心となる、法人実効税率引き下げの時期と幅の提示が急務となる。

 

外国人投資家の買いが始まるからである。

 

 

編集 持田哲也

 

« »