日刊労働通信社 | 国債暴落論は暴論

国債暴落論は暴論

コラム 経済

毎日の社説に「円安の進行」「負の側面を警戒しよう」が書かれている。

「最も警戒すべきは、円安が日本の長期金利の高騰(国債価格の下落)につながる可能性だろう。
一段の円安は、貿易赤字をさらに増やし、慢性的な経常赤字を招く恐れがある。巨額の財政赤字
を抱えた日本が経常赤字も増やすことに市場が注目した時どうなるのか。国の借金(国債)の返
済能力が不安視されれば金利が急騰し、日本経済に大打撃を与える」は、暴論である。

 

そもそも、日本の財政赤字は「借金1100兆円」と言われているが、政府のバランスシート(
貸借対照表)の「右側(負債の部)」だけの数字で、「左側(資産の部)」には650兆円程度
の資産がある。国の借金は、正しくは450兆円程度と半減以下となる。資産負債差額のGDP
比は米国と同程度の水準である。

 

日本は、市場から財政破綻する国とは全く思われていないのである。債券の安心度を示すCDS
(クレジット・デフォルト・スワップ)レートが、日本の国債は世界で10位の低さに位置して
いるからである。日本の国債は超安全であり、国債暴落論は暴論となる。再増税先送りはリスク
が高すぎるとの論理と同じである。出どころは、いずれも財務省発である。

 

日経の「日曜に考える」「市場アウトルック」「為替」に、「107~110円で揺れ大きく」
が書かれている。

 

「今週の円相場は1ドル=107~110円程度の範囲内で、振れの大きい展開となりそうだ。
先週は米早期利上げ観測を背景に円売り・ドル買いが加速した。ただ、この1カ月で7円近くも
円安が進んでおり、一時的に円を買い戻し利益を確定する動きが強まりやすい。

 

足元の円安を主導しているのは海外のヘッジファンドで、円売りの持ち高は今年最高の水準にま
で膨らんでいる。先週までに米早期利上げは織り込まれ、追加の材料がなければ一段の円安は進
みづらい。為替の先行き予想を反映する通貨オプション市場でも円安よりも円高へ備える動きが
優勢だ。

 

ただ、中期的には日米の金利差が開いていく可能性は高く、年末にかけて円安が続くとの見方は
多い。輸入企業の円売り注文も多く、円の上値も限られそうだ」。
今週の円相場は、1ドル=108円台で一服となりそうだ。1カ月で7円近くも円安が進んだか
らである。年末にかけて、110円まで緩やかに円安が進む動きとなる

 

日経の「永田町インサイド」に、佐藤賢・編集委員が「無党派層膨張のワケ」「第2次安倍政権
で24ポイント上昇」「自民支持低下、野党に流れず」「20~40代に多い傾向」を書いてい
る。

 

「特定の支持を持たない『無党派層』の動きが注目を浴びている。日本経済新聞社の世論調査で
は、7月に全体の47%に達し、調査を始めた1987年9月以降、過去最高を記録した。9月
3日の内閣改造・自民党役員人事が好感され、その直後の調査では38%まで下がったが、なお
高い水準にある。なぜ無党派層が膨らんでいるのか。

 

無党派層に厳密な定義はない。日本経済新聞社は世論調査で、まず『どの政党を支持しています
か』と聞く。『なし』や『言えない・分からない』と答えた人に『強いて言えば、どの政党に好
意を持っていますか』と尋ねる。それでも『なし』と応じた人を『無党派層』と呼んでいる。

無党派層は2013年10月に20%台に乗り、今年7月には47%となり、第2次安倍内閣で
最低だった自民党(35%)を上回った。40%台は調査開始から始めて。内閣改造直後の緊急
調査では、女性閣僚の積極登用などが評価され安倍内閣と自民党の支持率が盛り返し、無党派層
は38%になったが、比率はなお大きい。

 

計量政治学(選挙分析・世論研究)が専門の明治大の井田正道教授は『自民党の支持率が低下す
ると、無党派層が増える現象は以前からあった』とした上で、最近は大きな特徴が見られると指
摘する。『従来は自民党が下がれば野党は少し増えるか横ばいだったが、自民党の支持率低下に
野党離れも加わり、無党派層が急激に増加している』。

 

数字に端的に表れている。13年3月から今年9月まで1年半の変化を比べてみよう。無党派層
は14%から38%に24ポイント上昇した。一方で自民党の支持率は51%から44%に7ポ
イント下がり、民主党や日本維新の会など野党支持層も25%から13%に12ポイント落ちた。

 

無党派層が増えた分の約5割は、野党支持層から、約3割は自民党支持層から回った計算になる。
自民党が支持率を落としたのは、特定秘密保護法成立や集団的自衛権の行使容認などで、弱い支
持層の一部が離れたためとみられる。意識調査論などを専門とする桜美林大の橋本晃和特任教授
は、利害が絡んだ組織や団体との関係を持たない人が多くなり、『党派性を持たず、主体性を主
張する<個の確立>が進んでいる』との見方を示す。

 

野党も政権批判層の受け皿になっていない。二大政党の一角を目指す民主党は安全保障政策など
でバラバラな印象を与え、自民党との明確な対立軸を示せていない。維新は憲法観の違いから分
裂。みんなの党は渡辺喜美前代表の政治資金問題で失速した。
『有権者は民主党政権への失望が心に残り、なかなか民主党に行かない』『民主や維新、みんな
は政党としての歴史が浅いため政党支持が強くなりにくく、支持層がすぐに離れやすい』。井田
教授はこう分析する。

 

無党派層は年代別では20~40代に多い傾向がある。早稲田大の田中愛冶教授によると、一般
的に人の政治意識は8歳から24歳までに形成されていく。『40代前半から若い層は、政党に
頼れば日本がうまくいくという経験がなく、無党派になりやすい』と言う。93年に自民党が分
裂し、政党の離合集散が相次いだ。政権を奪還した自民党は、09年に再び下野。民主党政権も
3年3カ月しか続かなかった。

田中教授は無党派層を3つに分類する。第1は、政治への関心が低いため支持政党を持たない政
治的無関心層。第2は政党拒否層で、有権者になった時から『その政党も支持したくない』と考
える。第3は、それまでの政党支持を捨てて無党派になった脱政党層だ。

 

第1の層は選挙でほとんど投票に行かないが、第2の層と第3の層は経済や国際問題に関心が高
く、その時々で投票行動を決める。こうした無党派層が動き出せば『風』が吹く。『1強』の構
図に見える自民党の基盤は盤石なわけではない。

 

日経の9月調査で、自民党支持率は前回調査(8月)より7ポイント増の44%となり、無党派
層が8ポイント減の38%となったが、無党派層から7ポイント自民党支持に回帰したことにな
るが、まだ7ポイントが自民党支持に戻っていない。13年3月には自民党支持率は51%もあっ
たからだ。それが、今年の8月までに14ポイントも減らし、37%に落ち込んだからである、
14ポイントは、野党に向かわず、無党派層に流れたのである。

 

問題は、14ポイントも自民党から離反した理由である。特定秘密保護法や集団的自衛権行使容
認を嫌ってのものである。無党派層から回帰した7ポイントを定着化させ、残りの7ポイントも
回帰させるには、自民党支持層の思想武装が必須となる。「平和と言う名の戦争」に打ち勝つた
めである。
編集 持田哲也

« »