日刊労働通信社 | 民主党代表選は3人の争いか

民主党代表選は3人の争いか

政治

20141222日経に「細野氏、自主再建派に配慮」「民主代表選」「『野党再編』姿勢薄める」「
連合意識 支持拡大狙う」が書かれている。
「民主党代表選に立候補を表明した細野豪志元幹事長は19日、国会内で記者会見し、
意欲を示す野党再編について『争点にならない。党の自主再建を実現したい』と表明
した。野党再編と距離を置く『自主再建派』に配慮したもので、再編に慎重な連合と
の対話を重視する考えも示した。幅広い支持を確保するねらいで、他の有力者の動向
にも影響を与えそうだ。

『民主党の立て直しに私自身が全力で当たりたい』。細野氏は記者会見で代表選への
意欲をこう強調した。安倍晋三首相の『1強体制』に危機感を示したうえで『強い野
党をつくらなければならない。民主党の再生なくして政権交代の枠組みはない』と述
べた。
野党再編に関しては『民主党としての旗を掲げ、賛同してくれるメンバーを結集して
いく』と述べ、民主党を解党して新党をつくる構想とは距離を置く姿勢を示した。先
の衆院選前に旧みんなの党や生活の党からの合流があった経緯に触れ、民主党が存続
した上で他党議員の吸収をめざす考えを示した。支持団体の連合との関係についても
『円滑にやる自信はある。お互いの対話をさぼらないことが重要だ』と語った。

民主党は衆院選で、次に単独で政権交代を狙う目安とされた100議席に及ばない7
3議席に終わり、政権を狙うには41議席を確保した維新の党などとの連携が不可欠
になる。党再建に絡む他の野党との連携の形が、代表選の焦点になっている。

野党再編論は大まかに3つに分かれる。民主党の名前にこだわらない新党結成論民
主党が存続して他党を糾合する再編論民主党が自主再建したうえで他党と連携する
自主再建論――だ。

代表選出馬を促す声がある前原誠司元代表は、野党結集のためには党名は民主党にこ
だわらない考えを示したことがある。仮に民主党が保守系と労組系に分裂すれば保守
系とは連携できると話す維新の橋下徹共同代表ともかねて交流がある。細野氏も維新
の江田憲司共同代表や松野頼久代表代行らと勉強会をつくり、新党も視野に入れた再
編論を唱えてきた。11月には細野氏は前原氏らとともに衆院選で野党の統一比例名
簿を作る新党構想を海江田万里代表に提案した経緯もある。

しかし民主党内では『野党再編を推進すれば党分裂につながりかねない』(中堅議員)
との懸念が根強い。維新の橋下氏は自治労や日教組など公務員の労働組合を敵視し、
連合は民主、維新の合流に否定的だ。細野氏が再編への積極姿勢を抑える構えを見せ
るのは、再編に慎重な自主再建派を取り込む狙いがうかがえる。
自主再建論は労組の全面支援で当選した議員が多い参院を中心に広がりをみせる。大
畠章宏前幹事長を支援するグループも党分裂の回避をめざすことを確認している。
岡田克也代表代行は、野党間連携の必要性を説くが、再編論には距離を置いており、
自主再建派を中心に出馬への期待がある。自主再建派への配慮を示した細野氏の姿勢
は、岡田、前原両氏ら出馬が取り沙汰される有力者の動向に影響する可能性がある」。
民主党の代表選は、3人の争いとなる。自主再建派の岡田氏、新党結成再編派の前原
氏、民主党中心の再編派の細野氏との、である。

問題は、民主党の最大の支持母体である「連合」が、誰を推すかである。「連合」は
維新との合流に否定的であり、自主再建派の岡田氏を推す。「連合」は、民主党の地
方組織を握っており、地方票への影響力も強く、議員票、地方票でも多数を占める。
岡田氏の勝ちとなるが。「連合」によって代表となった岡田氏に、野党再編はできず、
民主党の再生は不可となり、安倍首相にとって追い風となる。1強多弱が続くからで
ある。

日経に「迫真」「巨大与党、再び4」に「かすむ再起への道」が書かれている。
「衆院選から一夜明けた15日、自らの落選を未明に知った民主党代表の海江田万里
(65)は国会近くのホテルの一室にいた。『後はすべて任せます』。代表代行の岡
田克也(61)や幹事長の枝野幸男(50)らと会って代表を退く意思を伝え、自力
で党の立て直しを進める路線を堅持するよう託した。
直後の辞任会見では『どこかの政党と一緒になることで民主党が割れるのは悲しい。
そういうことがないようにしてほしい』と涙目で訴えた。あえて言及したのは分裂劇
を予感する心当たりがあったからだ。
衆院解散が確定的となった11月19日、議員会館の海江田の部屋を保守系議員が訪
ねた。元代表の前原誠司(52)、元幹事長の細野豪志(43)、元外相の松本剛明
(55)と元防衛副大臣の長島昭久(52)の4人。『解党してでも野党連合をつく
るべきだ』『あなたは新党を決断できる立場にある。やりましょう』。維新の党など
との駆け込み再編を説く主張を、海江田は『私の使命は民主党を再建することだ』と
退けた。

民主は衆院選で勢力をやや伸ばしたものの73議席。政権交代の足がかりとなる10
0議席に遠く及ばなかった。ある閣僚経験者は『2年前の衆院選、昨年の参院選、今
回と3連敗した。国民からアウトだと見られていることに気づかないといけない』と
危機感を口にする。

1月の代表選には民主を軸にした再編を唱える細野が手を挙げた。自力再建派と目さ
れる岡田は情勢を見極めている。中堅議員は『参院選で投票しなかった約半分の有権
者をひき付ける方策を聞きたい』と語る。
維新は公示前の勢力から微減の41議席となった。党内では選挙序盤の劣勢を巻き返
したとの評価が多い。共同代表の江田憲司(58)は周囲に『30議席を割ったら辞
任を考えていた。希望が持てる結果だ』と語る。

もう一人の共同代表の橋下徹(45)は14日、江田に電話で『大阪都構想に専念し
たい。国政は任せます』と伝えた。江田は民主の動きを注視し、こんな戦略を描く。
来春の統一地方選までは維新の体制強化、2016年の参院選までに野党再編――。
だが野党に厳しい評価を突きつけた衆院選のショックは大きく、各党は敗戦処理に追
われている。反転攻勢への道筋はまだ見えていない」。

民主党は1月の代表選で自力再建派と野党再編派との争いになるが、無党派層が回帰
してくるのは、いずれかである。維新が党勢回復するのも、無党派層の回帰がカギと
なる。4月の統一地方選の帰趨は、無党派層の動向いかんとなるが。

日経の「アベノミクス4つの課題」に、「3本目の矢 成長戦略」「規制改革
再加速カギ」が書かれている。

「68本。今秋、衆院選のための解散で廃案になった法案の数だ。企業に女性登用の
目標を義務付ける女性の活躍推進法案、保育士不足の解消へ試験回数を増やす規制緩
和を盛り込んだ国家戦略特区の改正法案――。6月に政府が成長戦略で掲げた目玉政
策の多くも仕切り直し。実行が遅れる。

<意気込み後退>
デフレ脱却を目指すアベノミクスは金融政策、財政出動、成長戦略の3本の矢からな
る。最初の2本の矢で景気を支えている間に3本目の規制・税改革を断行し、長期的
な成長力を高めるシナリオだ。成長戦略は3本の矢の要だが、これまでの成績は芳し
くない。

昨年6月5日、安倍晋三首相が成長戦略を発表すると、株式市場では『踏み込み不足』
と失望が広がり、日経平均株価は500円超も急落した。「なんで下がるんだ」。安
倍首相は焦った。

今年6月16日、雪辱を期す安倍首相は成長戦略の素案を公表した。昨年は入れなかっ
た衣料や雇用、農業など関係者の反対が強い分野にも踏み込んだ。その一つが労働時
間ではなく成果に応じ賃金を払うホワイトカラー・エグゼンプションの導入だ。
1人当たり労働生産性を高める狙いで、働き手が減る日本経済の沈没のカギを握る。

『乗り越えられなかった壁を突き抜ける政策を盛り込めた』。安倍首相は胸を張った。
だが、その後、厚生労働省の審議会に移った議論はスピードダウン。『長時間労働で
過労死が増えかねない』(古賀伸明連合会長)と反対する労働組合に対し、経営者は
対象者の拡大を求め平行線が続く。衆院選もあり、当初は年内を目指した取りまとめ
は越年が確実だ。

政権の関心も消費増税後に足踏みする景気への対策に移り、成長戦略にかける意気込
みは6月当時と比べ後退している。産業競争力会議によると、成長戦略で実施時期を
示した雇用関連の37施策のうち11月時点で実施が決まっていたのは約半数だけだっ
た。注目を集めた大胆な数値目標は早くも道筋がかすみつつある。

<3割水準届かず>
9月、競争力会議は成長戦略が掲げた52の長期目標のうち17個、約3割は足元で
『到達すべき水準に届いていない』と指摘した。男性の育児休業取得率は2020年
の目標13%に向け4・93%に高まるはずが、現実は2・03%。20年に35兆
円が目標の海外からの直接投資残高は、円安の追い風が吹いても18兆円と計画を2
兆円下回った。

どうすれば成長戦略を再び加速し、迅速に政策を実行できるのか。三菱総合研究所の
武田洋子チーフエコノミストは『取り組み状況を開示し、世の中に伝えることが大事』
と指摘する。日本の将来のための改革が利害関係者の損得勘定で棚上げとなるのを防
ぐには、国民が改革に目を光らせる仕組みも必要になる」

 

編集 持田哲也

 

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