日刊労働通信社 | 中国共産党主導の『歴史戦』に勝つ

中国共産党主導の『歴史戦』に勝つ

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日経に「首相、試練の歴史認識」「戦後70年」「持論と外交配慮のぞくジレンマ」が書かれている。
「2015年は戦後70年の節目を迎え、安倍晋三首相の外交が試練にさらされている。首相は夏に出す談話で先の大戦への『反省』を表明するとみられるが、過去の侵略への謝罪には重点を置かない構えだ。中国や韓国は歴史認識の修正と警戒する。首相談話の表現が焦点で、歴史認識が外交の火種になっている。

 

4月29日、ワシントンの米議会。日本の首相として初めて上下両院合同会議で演説した首相は先の大戦への『痛切な反省』を表明した。アジアの国民に『苦しみを与えた事実』も認めた。米国にくすぶる『首相は歴史修正主義者ではないか』との疑念を薄めようとした。議員が何度も起立して拍手を送り、米政府・議会から一定の評価を得た。
1週間前の4月22日、首相はインドネシア・ジャカルタで開いたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議の演説でも『深い反省』を示した。2回の演説は、1995年の村山富市首相談話に盛りこんだ『植民地支配と侵略』や『心からのおわび』に触れなかった点で共通する。戦後70年談話は『反省』と『アジアへの苦しみ』の2つが中核のキーワードになる可能性がある。

 

首相は4月20日のBS番組で、村山談話の『侵略』や『おわび』に関して『(歴代内閣の)基本的な考え方を引き継ぐ以上、もう一度書く必要はない』と語った。70年談話への明記には否定的だ。先の大戦を『侵略』の一言で総括し、安易に謝罪する姿勢とは一線を画したい思いがにじむ。
首相に就く前の安倍氏から『日本は謝罪をしすぎだ』と聞いた関係者は多い。侵略については『国際的な定義として確立してない』というのが持論だ。側近議員は『歴史問題で謝罪を繰り返すのは日本くらいだ。おわびは日本の地位をおとしめる』と説明する。
中国や韓国は歴史観の修正に身構える。村山談話に盛った『植民地支配と侵略』や謝罪の表現の踏襲に期待する。

 

首相は12年末に再登板すると、戦後70年談話をつくる考えを早々と示した。当初のそもそもの発想は『歴史の節目で侵略史観をリセットしたかった』(周辺)とされる。持論の歴史観を優先すべきか、それとも中国や韓国などに配慮すべきか。理念と現実のはざまでジレンマに悩んでいるようにもみえる。
首相は戦後70年談話に関する有識者懇談会(座長・西室泰三日本郵政社長)を2月に立ち上げた。3月の会合では、先の大戦を『侵略』と定義するかどうかをめぐって議論し、談話に盛り込むことに賛否両論が出た。国内世論や外国の反応を瀬踏みしながら、首相は最終的な表現を慎重に探ろうとしている」。

 

安倍首相は、70年談話に1995年の村山談話の「植民地支配と侵略」「心からのおわび」を明記せず、替わりに「反省」「アジアへの苦しみ」を明記することを決めたと思われる。正解である。
村山談話の「植民地支配と侵略」「こころからのおわび」を「70年談話」にも踏襲させることが、中国共産党主導の「歴史戦」の狙いだからである。安倍首相は、4月22日のバンドン会議と、4月29日の米上下両院会議での演説で「反省」と「アジアへの苦しみ」の言葉を使い、アジア諸国と米国から一定の評価を得ることに成功したのである。「70年談話」への布石である。中国共産党主導の「歴史戦」による「安倍首相は歴史修正主義者」との世界的包囲網を打破したのである。包囲網を作った中国・韓国が一転して孤立したのである。安倍外交の勝利であり、戦後70年談話を巡る中国共産党主導の「歴史戦」に勝利したことになるが。

 

日経に「参院選へ連休明け始動」「与野党、来夏向け準備加速」「自民、現職差し替えも」「民主、労組票固め急ぐ」が書かれている。
「与野党は連休明けから来夏の参院選に向けた準備を本格化する。7月に第1次公認を発表する予定の自民党は、議席の上積みを狙い、現職の差し替えも視野に勝てる態勢づくりを急ぐ。安倍晋三首相にとっては、憲法改正への環境整備をにらんだ選挙でもある。党勢低迷に悩む民主党は労働組合の票固めを進めるが、他党との選挙協力が課題となりそうだ。
参院選は定数の半数(121)が3年に一度改選され選挙区で73、比例代表で48の議席を各党が争う。現在、1票の格差是正へ選挙制度改革を議論しており、来夏は変更がある見込みだ。

 

『現職が衆院にくら替えして空席になっている選挙区はどうするのか』。首相は4月中旬以降、自民党の谷垣禎一幹事長や茂木敏充選挙対策委員長を相次ぎ首相官邸に呼び、参院選への状況を聴取した。統一地方選が終わっていない段階から準備を急がせた格好だ。
自民党が重視するのは、選挙結果を左右する1人区だ。執行部は現行31のうち約半数の選挙区で自民優勢だと分析。残りの選挙区では『現職であっても勝てる見込みがなければ差し替えも辞さない』(党幹部)。党の独自調査や県連の意見なども参考に調整する。

 

<自民回帰進む>
比例は業界団体の組織内候補の擁立を進める。『自民1強のなか、各団体の自民回帰が進んでいる』(党幹部)。一度、自民党から離れた全国郵便局長会も、すでに自民党から女性候補を出す方針を内定した。農協改革で対立した農業団体も擁立準備を進めている。
2014年衆院選や統一地方選では取りこぼした地域もあった。党幹部は『まずは着実にとれるところを固めていく』と話すが、非改選をあわせて改憲に必要な3分の2(162)を与党だけで得るのは難しいとの見方もある。公明党は統一地方選の総括を終えたうえで本格的な準備に入る。

 

野党第1党の民主党も連休明けに現職を中心に第1次公認を出す。比例代表では、連合傘下の産別労組ごとの組織内候補として、01年の非拘束名簿式の導入以降で最多となる12人をたてる方針を早々に固めた。
<「ダブル選」警戒>
選挙区では順次、擁立を進めたい考えだが、維新の党などとの選挙協力の道筋がまだ見えない。前回は日本維新の会(当時)などとのすみ分けができず共倒れしたケースもあった。14年衆院選でも調整が完全にはできずに終わり、不安を残す。

 

一方、次期衆院選をにらんだ動きも始めている。15日までに現職を中心に衆院選の公認申請を募る。例年より早い動きには擁立が遅れた14年の反省がある。来夏の衆参ダブル選への警戒も潜む。
維新は候補者の公募を18日から開始。17日には、大阪市を5つの特別区に分割する『大阪都構想』の是非を問う住民投票があるが、結果は他党との選挙協力に影響が出る可能性もある」。
来年7月の参院選に向けて自民党は比例区での業界団体の組織内候補の擁立を強めている。古い自民党への回帰であり、無党派層の自民党離れを加速することになるが。

 

読売に「維新『首相寄り』進む」「統一選『大阪独り勝ち』反映」「東西の温
度差際立つ」が書かれている。
「野党第2党である維新の党と安倍政権が、じわりと間合いを詰めている。統一地方選の『大阪独り勝ち』で、野党共闘を目指す江田代表らの存在感が低下し、安倍首相と近い橋下徹最高顧問(大阪市長)の発言権が増したためだ。橋下氏が進める『大阪都構想』の住民投票(17日投開票)で賛成多数が得られれば、維新と政権が急接近する可能性もある。

 

<「憲法改正」積極姿勢>
『我々としては、統治機構改革を前面に立てて、憲法改正を訴えていく』
先月28日開かれた維新の党憲法調査会の終了後、会長の小沢鋭仁・元環境相は記者団にこう語り、首相が目指す憲法改正への積極姿勢を強調した。
維新幹部は『とにかく具体的な議論に入りたい』と述べる。自民が提案した『緊急事態条項』など3テーマを優先して議論することにも前向きだ。
一方の自民党は同じ28日、カジノなど統合型リゾート(IR)を推進する『カジノ解禁法案』を維新、次世代と3党共同で国会に提出した。維新がカジノの大阪誘致に熱心であることを受け、首相官邸が法案提出を後押ししたとされる。
連休明けの後半国会では、最大の与野党対決法案である安全保障関連法案の審議が控える。安倍首相にとって維新に接近すれば野党を分断できるうえ、法案に及び腰の公明党もけん制できる。『一石二鳥』というわけだ。

 

<政府も期待>
安倍政権をめぐる維新の党内の温度差は、目に見える形でも表れている。大阪系の馬場伸幸国会対策委員長は22日の記者会見で、安保関連法案の審議について、『長く議論をすればいいというものでもない』と述べた。野党は法案審議を長引かせるのが通例で、馬場氏の発言は異例だ。
これに対し、江田代表は翌23日の記者会見で『極めて重要で国の根幹に関わる法案だ。期限を切って審議するなんてあり得ない。前例にとらわれず、十二分に議論を尽くしていくことが必要だ』と述べ、馬場氏の発言を即座に打ち消した。
首相は外遊先の米国で、法案の今国会成立を“公約”した。政府・自民党は、維新が法案の修正協議や早期裁決に応じる余地があるとみて、期待している。

 

<江田氏地元で苦戦>
維新の立ち位置が政権寄りに変化したのは、統一地方選がきっかけだ。橋下氏が代表を務める維新の地方組織『大阪維新の会』は、大阪府議選(定数88)で42議席、大阪市議選(定数86)で36議席を得て、共に第1党を獲得した。一方、江田氏の地元、神奈川県議選(定数105)は、公認候補19人中、当選は5人にとどまった。4年前の前回、江田氏が身を置いた『みんなの党』が得た15議席を大きく下回り、『大阪以外は負け』(若手議員)との受け止めが維新内に広がっている」。
統一地方選での「大阪独り勝ち」によって、野党共闘を目指す江田代表の存在感が低下し,橋下最高顧問の発言権が増した。維新は首相との共闘路線に大きく舵を切ることになる。

 

編集 持田哲也

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