日刊労働通信社 | 登録は正の歴史で

登録は正の歴史で

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東京の社説に「世界遺産と日韓」「登録は負の歴史含めて」が書かれている。

世界文化遺産の有力候補になった『明治日本の産業革命遺産』に、韓国が反対している。
近代日本の発展を支えた施設が並ぶが、負の歴史も各国に丁寧に説明し、世界遺産の登録を目指したい。

 

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関『イコモス』は日本が提出した
23件から構成される『産業革命遺産』について、ユネスコに対し世界遺産に登録するよう勧告した。

 

政府は推薦理由を『日本が非西欧地域で最初の産業国家となり、半世紀ほどで製鉄や造船技術を確立した』と説明した。
確かに明治以降の発展はアジア諸国のモデルとなり、当時に中国や韓国からも多くの留学生が訪れた。

 

しかし、韓国政府は登録に異議を唱えている。炭鉱や製鉄所、造船所など7件の施設で、植民地時代に朝鮮人が強制的に動員され死傷者が出たと指摘し、
『人権の面からも世界遺産には不適当だ』と主張する。日韓外務省の実務協議が22日に行われたが、歩み寄りはなかった。
中国も過去に自国民の徴用があったとして、反対を表明した。

 

政府は『遺産としての対象期間は(明治時代末の)1910年までで、戦時中の朝鮮人徴用と時期が異なる』と主張するが、この区切り方が説得力を欠く。
炭鉱や製鉄所はその後も存続した。明治以降の日本は『富国強兵』を掲げたが、重工業が戦争遂行を支え、
戦時には隣国の労働者の強制徴用があったことは否定できない。戦前は日本人労働者も含めて過酷な労働環境に置かれた。
戦後の経済成長期を迎えても、炭鉱では大事故が続いた。

 

登録を審議する世界遺産委員会は6月末に始まる。日韓を含む21カ国で構成され、投票国の3分の2以上の賛成で決まる。
政府はいま副大臣らを委員国に派遣しているが、疑問が示された施設について、負の歴史も含めて説明する必要がある。
各施設の展示や説明資料の記述を充実させ、海外からの見学者の共感も得るよう努力すると伝えることも、登録への理解を助けるだろう。

 

英国リバプールは2004年世界文化遺産に選定された。18,19世紀の産業革命と7つの海をまたぐ交易で『海商都市』として評価された。
一方でアフリカからの奴隷貿易の中継港だったため、現地には奴隷に関する資料も展示されている、歴史の光と影をともに表現してこそ、世界遺産の名に値するのではないか」。
社説の主旨である「登録は負の歴史含めて」に異論がある。

 

世界文化遺産の有力候補となった「明治日本の産業革命遺産」は、正の歴史として登録されるべきだからである。
韓国と中国が7件の施設で、植民地時代、及ぶ戦時中に朝鮮人、中国人が強制徴用されたとして「人権の面から世界遺産には不適当」だと反対しているのは、言いがかりだからである。

 

ユネスコの諮問機関「イコモス」が、日本が提出した23件から構成される「産業革命遺産」について、ユネスコに対して世界遺産に登録するように勧告したのは、
1987年から1910年までが対象期間であり、日韓併合、第2次大戦前であり、強制徴用以前である。「日本が非西洋地域で最初の産業国家となる、
半世紀ほどで製鉄や造船技術を確立した」ことを評価したものであり、まぎれもなく正の歴史であり、歴史の光である。社説が言う「登録は負の歴史含めて」は、
中国共産党主導の「歴史戦」の罠にはまった言葉である。そもそも、「負の歴史含めて」では,趣旨が違うのだから、登録自体ができないが。(5月23日記)

 

毎日に「背景に中国脅威論」「米『次は12カイリ内進入』」(南シナ海人工島、領有主張を批判)が書かれている。
「米国防総省のウォレン報道部長は21日、中国が南シナ海で造成した人工島の『領海』と主張する12カイリ(約22キロ)内に米軍を侵入させるのが『次の目標』だと明言した。
南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺で続く中国の埋め立て作業をけん制するのが狙いとみられる。
これに対し、中国外務省の洪磊副報道局長は22日、『他国の領空と領海に好き勝手に乗り入れることのできる国などない』と、強く反発した。

 

会見でウォレン氏は、人口島の12カイリ以内への米軍の侵入時期は決まっていないと述べ、当面はこの範囲外で米軍艦船・航空機による哨戒活動を続ける意向を示した。
オバマ米政権が哨戒活動の継続や強化を打ち出した背景には、米国内で高まる中国脅威論がある。
米軍や国防総省幹部が埋め立て急拡大に警鐘を鳴らし、政策決定に影響力を持つ有力シンクタンクや主要メディアが大きく取り上げた。
議会でも政府による強硬な対応を求める声が出ていた。
米国は、岩礁埋め立てで造成した人工島を拠点に中国が『領土』『領海』を主張し、周辺への接近を妨げる手法を、
航行・飛行の自由や商業の自由といった国際的な原則に反するものとして強く懸念。ケリー国務長官が17日、北京で中国の習近平国家主席と会談した際も懸念を伝達した。

 

だが、その後も動きは止まらず、米CNNは20日、南沙諸島の永暑(英語名ファイアリクロス)礁に接近した米国の哨戒機に対し、中国海軍が立ち去るよう警告する様子を報道。
ラッセル米国務次官補は21日の記者会見で『世界中の砂で埋め立てても主権を作ることはできない』と厳しく批判した。

 

また、シアー国防次官補(アジア・太平洋担当)は今月の議会公聴会で、埋め立て地に中国の領有権は発生しないとの見解を示し、周辺海域への米軍艦船派遣も辞さない姿勢を示していた。
国連海洋法条約によると、満潮時に水没する岩礁などは島に該当せず、領海・領空の主権を構成しない。
排他的経済水域(EEZ)のような海洋の管轄権を主張することもできない。埋め立てで人工島化しても島という法的地位は得られない。

 

一方、中国は『南沙諸島で近海には争いようのない主権を有しており、自分の島の上での建設は完全に主権の範囲内だ』と繰り返している。
中国海軍の呉勝利司令官は4月、米海軍制服組トップのグリナート作戦部長とテレビ会談。埋め立てや施設の建設について『航行や飛行の自由を脅かすものではなく、
気象予報や海難救助など公共サービスの能力を高めるためだ。将来、米国を含む関係国や国際組織が施設を利用することを歓迎する』と述べた。
CNNによると、この言葉とは正反対に今回、中国海軍は米軍哨戒機に『我々の軍事警戒圏(Military Alert Zone)に近づいている』という言葉を使って警告した。
米軍機に警告という強制力を行使したことは、中国が国際空域に独自に「権限」を設定したとの見方が出ている。

 

複数の安全保障専門家は『軍事警戒圏という言葉は、領空や防空識別圏(ADIZ)とは違う概念として中国が独自に作り出した可能性もある」と指摘。
中国が事実上の防空識別圏を南シナ海に設定したか、設定に向けて動いていると警戒を強めている』。
中国海軍は米軍哨戒機に「我々の軍事警戒圏に近づいている」と警告した。
中国が事実上の防空識別圏を南シナ海に設定しようとしている証左である。日本のシ-レンが危うい。これこそ「中国の脅威」の現実である。

 

産経の「水平垂直」に「NPT最終文書案」「『広島・長崎訪問』は削除」
「中国、歴史で押し切る」が書かれている。
「国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議のフェルキ議長は閉幕日の22日、採集文書案を各国に提示した。
被爆地の広島、長崎への訪問を世界の指導者に促す文言は削除された。
また、核兵器の非人道性をめぐる記述が目立つ一方、核軍縮の促進手段となる『核兵器禁止条約』の記述が削除された。
内容には核保有国、非核保有国がそれぞれ不満を表明し、文書採択は困難な情勢となった。
『被爆地訪問』は日本が実現を目指したが、中国の反対で素案から削除されていた。日本は中国と折衝を重ねて文言復活を要請したが、
中国は妥協せず、『核兵器の影響を受けた人々や共同体の経験を直接共有するよう促す』との表現で決着が付いた。

 

文書案はまた、『核兵器禁止条約』の記述を削除する一方、法規制を含む核軍縮の『効果的措置』を検討する作業部会を国連総会に設置するよう勧告。
核保有国に対しては、核弾頭の数や具体的種類などを明示することの重要性を考慮しつつ、核軍縮の状況を定期的に報告することを求めた。
また、中東地域の非核化を目指す国際会議を2016年3月までに実施するよう国連事務総長に託した。

 

5年ごとに開かれる再検討会議で、05年は文書採択に失敗したものの、10年はオバマ米大統領が『核兵器のない世界』を
提唱した翌年だっただけに追い風となり、行動計画を盛り込んだ文書が採択された。
NPT再検討会議の最終文書案で、被爆地の広島、長崎への訪問を世界の指導者に促す文言は復活しなかった。
日本は巻き返しを図ったものの、『歴史認識』をからめて攻勢に出た中国に押し切られた格好だ。
一方、最終文書案は、主要争点をめぐって核保有国と非核保有国との“溝”が埋まらないまま議長裁量で各国に提示され、決裂やむなしとの悲観論が大勢を占めた。

 

『歴史の歪曲だ』『日本は戦争の被害者の立場を強調している』――。核兵器の惨禍を世界に訴えようと、『被爆地訪問』実現を求めた日本側に対し、
中国のセン聡軍縮大使が、今月中旬、『過去』を持ち出して日本を批判したことは、議場の各国代表団を驚かせた。
今年は中国にとり、『抗日戦争と反ファシズム戦争勝利70周年』。
今夏に安倍晋三首相が戦後70年談話を出すことも念頭に置いた牽制だったとはいえ、日本には予期せぬ冷や水となった。

 

最終文書採択は全会一致が原則だ。『被爆地訪問』への支持は着実に広がり、日本は20日、
中国と少なくとも2回交渉を行ったが『立ちはだかる壁』(外交筋)を前に、対処のしようがなかったという。
一方、最終文書案の内容をめぐっては、核保有国と非核保有国との対立が浮かび上がった。『核兵器禁止条約』の文言が
最終文書案で削除されたのは、文言の追及に慎重姿勢を見せる米英両国に加え、強く反対するフランスに配慮した結果だ。
しかし、オーストリアなど非核保有国側からは批判が出た。核兵器がもたらす『非人道性』をめぐる記述についても異論は多かった。
『核兵器は使用されてはならない』と記述したことや、核軍縮教育の重要性を盛り込んだことが
非人道性の認識を高めることにつながり、『前回会議より前進した』と考える国が多い半面、核保有国側は懸念を強めた。

 

事実上の核保有国であるイスラエルを念頭に置いた中東地域の『非核化』問題では、アラブ諸国が今年11月末までの『国際会議』開催を目指していた。
これに対し、イスラエルの友好国の米国などは『早期開催』にとどまっていた。
最終文書案では開催時期について、折衷案の「2016年3月まで」となったが、双方ともに不満が残った」。
NPT最終文書案に、「広島・長崎訪問」を世界の指導者に促す文言は削除された。
「歴史認識」からめ手の中国に押し切られたからである。中国共産党主導の「歴史戦」の横車である。
「被爆地訪問」を「歴史の歪曲だ」「日本は戦争の被害者の立場を強調している」と反対したことが、である。

編集 持田哲也

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