日刊労働通信社 | 「PKO参加5原則に抵触する戦闘はなかった」

「PKO参加5原則に抵触する戦闘はなかった」

政治

朝日の社説に「PKO日報」「国民に隠された『戦闘』」が書かれている。

「これまでの政府の説明は何だったのか。現場とのあまりの落差にあぜんとする。

昨年7月の南スーダンの状況を記録した、国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報などの文書を防衛省が公表した。

この当時、政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が起きた。文書には、部隊が派遣された首都ジュバの、生々しい状況が記録されている。

『宿営地5、6時方向で激しい銃撃戦』『戦車や追撃砲を使用した激しい戦闘』。事態が悪化すれば、PKOが継続不能になる可能性にも言及している。

こうした状況について、政府はどう説明していたか。

昨年7月12日、当時の中谷元防衛相は『散発的に発砲事案が生じている』と述べた。安倍首相は10月に『戦闘行為ではなかった。衝突、いわば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている』と国会答弁した。

ジュバの状況を、政府はなぜ『戦闘』と認めないのか。

稲田防衛相はきのうの衆院予算委員会でこう説明した。

『事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている』

政府は『戦闘行為』について『国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し、または物を破壊する行為』と定義する。こうした『戦闘』が起きていると認めれば、憲法やPKO参加5原則に抵触し、自衛隊はPKOからの撤退を迫られる。

稲田氏は『国際的な武力紛争の一環とは評価できない』とするが、派遣継続ありきで『戦闘』と認めないとも取れる。

『戦闘』が記された文書は、昨年9月に情報公開請求され、防衛省は文書を『廃棄した』として不開示とした。ところが、自民党の河野太郎衆院議員に再調査を求められ、範囲を広げて調べ直すと別の部署で見つかったとして一転、公開された。

この間、政府は10月に南スーダンPKOの派遣を延長し、11月以降、安全保障関連法に基づく『駆けつけ警護』が初めて付与された部隊が出発した。

こうした政府の決定は結果として、国民にも、国会にも重要な判断材料を隠したままで行われた。駆けつけ警護の付与、さらにはPKO派遣継続自体の正当性が疑われる事態だ。

そもそも、このような重要な記録を『廃棄した』で済ませていいはずがない。不都合
な文書を恣意的に隠したと疑われても仕方がない。安倍政権は厳しく襟を正すべきだ」。

社説の主旨である「国民に隠された『戦闘』」に、異論がある。

「PKO参加5原則に抵触する『戦闘』はなかった」が正論だからである。昨年7月の南スーダンの状況を記録した国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報に「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」が明記されているが、その文書を昨年9月に情報公開請求されたが防衛省は「破棄した」と不開示としたが、今年に入って一転公開された。この間、政府は10月に南スーダンPKOの派遣を延長し、11月以降、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」が初めて付与された部隊が出発した。「戦闘」の文言を隠蔽し、国民と国会に重要な判断材料を隠した上でのPKO派遣継続の政府の決定は、正当性がないとの批判である。

問題は、昨年7月の南スーダンでPKO参加5原則に抵触する「戦闘」が事実あったのか否かである。日本を含め現地の多国籍PKO派遣部隊はその後どの国も撤退していない。PKO参加5原則に抵触する「戦闘」はなかったとの証左となるが。

毎日に「法相文書・陸自日報・天下り」「『3点セット』野党攻勢」が書かれている。

「民進党など野党4党は8日、政権への攻勢を強めた。金田勝年法相の『共謀罪』関連法案を巡る文書の撤回問題や、『戦闘』の語句があった南スーダン国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊の日報、文部科学省の天下り問題を合わせ、『説明責任を果たさない隠蔽3点セット』(民進党・山井和則国対委員長)と命名した。

民進、共産、自由、社民4党は8日の国対委員長会談で政府・与党への要求を確認。①法相辞任②陸自の日報に関する衆院予算委員会の集中審議③全省庁の天下り調査結果を、衆院での来年度予算案の採決前に提出すること、の3点だ。山井氏は記者団に『国民が知るべきことを知らされない国会審議に強く抗議したい』と強調した。『3点セット』について野党側は、政府の国会軽視の姿勢が鮮明だと位置付ける。

特に批判するのが、法務省の文書。法案の議論を『国会提出後にすべきだ』と記し、法案審議の段取りを指図して国会議員の『質問封じ』を主張するかのような内容だったためだ。8日の予算委では3人の民進議員が追求し、今後も法相を『狙い撃ち』する方針だ。

陸自の日報について政府は当初、『廃棄した』と説明しており、山井氏は『戦闘があったことを隠していた』と批判。共産党の穀田恵二国対委員長は、天下り問題での政府の情報開示不足を挙げ、「国民の知りたい真実にふたをする隠蔽体質だ」と指摘した。

政権側は、特に法相の問題を注視している。自民党の二階俊博幹事長は8日、菅義偉官房長官に電話で『緊張感を持ってやってもらいたい』と伝えた。公明党は7月の東京都議選への悪影響を懸念し、石田祝稔政調会長は記者会見で『長く国会に身を置く者として信じられない』と批判。山口那津男代表は安倍晋三首相との会談で『政府の動きや国会運営に関わることは与党としっかり相談しながら進めてもらいたい』とクギを刺し、首相も『しっかり臨む』と応じた」。

野党4党は3点セットで攻勢を強め、金田法相、稲田防衛相の辞任要求をもって政局にしようとしているが、無理筋である。内閣支持率60%,「テロ等準備罪法案」賛成70%の民意に背反するからである。

毎日の「日米首脳10日会談」「経済識者の見方」で、渡辺博史・国際通貨研究所理事長が「為替批判 当たらぬ」を述べている。

――トランプ大統領の為替政策をどのように見ますか?

?トランプ氏は貿易の観点から為替を考えている。米国製品が外国に売れない、外国製品が大量に輸入されて雇用に影響があるという観点からドル高を嫌っているようだ。だが、米国には伝統的に『強いドルが必要』という考え方があり、ドルへの安心感を背景に世界中から集めたお金を投資に回して繁栄してきた。ドル安を志向するとそのお金の流れが止まり、米国の利益を逆に損なう恐れがある。トランプ氏がそれを考慮しているかは疑問で明確な方針が定まっているとは思えない。

――円安誘導批判をどう思いますか?

?円安になっているのは日本の責任ではない。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに動く中でドルが買われ、ドルは全ての通貨に対して高くなっている。米経済が好調なことが背景にあり、それをひっくり返して円高にするのは無理だ。通貨安につながる大規模金融緩和は、日銀だけでなくFRBも行ってきた。日本では依然、物価も低迷しており現状では動く必要はない。

――トランプ氏は2国間の貿易協定で為替条項の導入もちらつかせています。

?どのような為替条項をイメージしているか不明だが、貿易赤字を為替で調整しようとすると、競争力がなく市場から退場すべき企業を(輸出に有利な通貨安で)保護することになる。米国製品が売れない理由は為替のせいではなく、質が悪く価格も高いからかもしれない。為替条項はそのような企業を温存させることにつながる。市場原理に反すると反対し続けるべきだ。

――首脳会談にはどう臨むべきですか。

日本は為替介入はしばらく行っていない。また、トランプ氏が嫌う雪崩のような輸出もしていない。米国にとって悪いことはしていないということをきちんと伝えるべきだ。日米関係は重要だが、下手に妥協して一番最初に米国に膝を屈した形になると、他国から信頼を失いかねない。意見が合わなくても構わないという姿勢で臨んでほしい」。

氏が指摘している「円安になっているのは日本の責任ではない。米連邦制度理事会(FRB)が利上げに動く中でドルが買われ、ドルは全ての通貨に対して高くなっている。米経済が好調なことが背景にあり、それをひっくり返して円高のするのは無理だ」は、正論である。米国第一には、強いドルが必須となり、ドル高・円安は必然となる。

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