日刊労働通信社 | 「9条に自衛隊を明記必要が56・0%、必要ない34・1%」

「9条に自衛隊を明記必要が56・0%、必要ない34・1%」

政治

東京に「共同世論調査」「共謀罪説明不十分77%、反対41%、賛成39%」が書かれている。

「共同通信社が20、21両日に実施した全国電話世論調査によると、『共謀罪』の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案に関し、政府の説明が十分だと思わないとの回答が77・2%に達した。安倍晋三首相(自民党総裁)が提起した憲法改正を巡り、戦争放棄を定めた憲法9条に自衛隊の存在を明記する必要があるとしたのは56・0%で、『必要ではない』の34・1%を上回った。安倍政権下での改憲に賛成は44・5%で、反対の43・4%と拮抗した。

安倍内閣の支持率は55・4%。4月の前回調査から3・3ポイント下落した。不支持率は34・3%で2・8ポイント増。共謀罪法案に賛成は39・9%、反対は41・4%。廃案を求める野党が抗議する中、与党が19日の衆院法務委員会で改正案を採決したことに『よくなかった』としたのは54・4%に上った。

今国会中に『成立させる必要はない』が56・1%となり、『成立させるべきだ』の31・0%を上回った。与党は今国会の成立を目指し、今月23日の衆院通過を図る方針だ。

首相の友人が理事長を務める学校法人『加計学園』の獣医学部新設に関し、記録文書の存在が確認できないとしている政府の説明については77・0%が『納得できない』とした。

政党支持率は自民党が前回比2・9ポイント増の42・8%、民進党が0・6ポイント減の6・1%。公明党4・4%、共産党4・1%、日本維新の会4・6%、自由党0・4%、社民党1・2%、日本のこころ0・2%。『支持する政党はない』とした無党派層は35・7%だった」。

以上の調査結果から次のことが読み解ける。

内閣支持率は前回調査(4月22,23日)より、3・3ポイント減の55・4%、不支持率は2・8ポイント増の34・3%、自民党支持率は2・9ポイント増の42・8%となったが、9条に自衛隊を明記する必要がある56・0%が下支えしたからである。共謀罪説明不十分77%、共謀罪法案を今国会で成立させる必要ない56・1%、「総理のご意向」についての政府の説明に納得できない77・0%があってもである。国民の信が厚い証左となる。

問題は、安倍晋三首相の9条に自衛隊をとの曲球を、国民の56%が支持したことである。憲法改正の本丸である9条改正賛成は、30%前後であったのに、一挙に過半数を超えたのである。安倍晋三首相の政局改憲の狙い通りである。

9条に自衛隊をで、公明党を取り込み、教育無償化で日本維新を取り込み、自公維の改憲勢力で衆院の3分の2,19年の国民投票で過半数をとのシナリオである。9条改正阻止を旗印にする野党共闘は相手にせず、である。次期衆院選も19年参院選も争点は憲法改正の是非となる。

9条に自衛隊を明記する必要56%がある限り、衆参で改憲勢力3分の2以上は必至となるが。9条改正阻止の野党共闘は少数派に転落となる。事実、護憲勢力は、民進党6・1%+共産党4・1%+社民党1・2%+自由党0・4%=11・6%。改憲勢力は、自民党42・8%+公明党4・4%+日本維新4・6%=51・8%。勝負あったとなるが。

②毎日に「本社世論調査」「20年改憲『不要』59%」「内閣支持46%に下落」が書かれている。

「毎日新聞は20、21両日、全国世論調査を実施した。憲法9条の1項、2項をそのままにして、自衛隊の存在を明記するという安倍晋三首相の憲法改正案については、『反対』31%、『賛成』28%と回答が分かれた。『わからない』も32%あった。首相は改正憲法の2020年施行を目指す考えを表明したが、それに向けて改憲の議論を『急ぐ必要はない』は59%に上り、『急ぐべきだ』の26%を大きく上回った。内閣支持率は4月の前回調査から5ポイント減の46%、不支持率は5ポイント増の35%だった。支持率が5割を切ったのは昨年11月調査以来。

9条を改正すべきだと『思わない』は49%で、4月調査から3ポイント増えた。『思う』も3ポイント増で33%。5月3日の首相の改憲提案前後で大きな変化はない。

9条改正派には、戦力不保持を定めた2項を見直すべきだという主張もある。ただ、今回の調査では、改正すべきだと思う層の69%が自衛隊明記に賛成した。首相は国会の憲法審査会に議論を委ねる姿勢を示してきたが、その途中で、自民党総裁として具体案に言及した。こうした首相の議論の進め方が『問題だ』は48%で、『問題はない』の31%より多かった。内閣支持層は『問題はない』が51%、不支持層は『問題だ』が84%となった。

≪「共謀罪」慎重に52%、「女性宮家」容認41%≫

毎日新聞が20、21両日に実施した全国世論調査で、『共謀罪』の構成要件を改め『テロ等準備罪』を新設する組織犯罪処罰法改正案について『今国会成立にこだわらず議論を続けるべきだ』という回答が52%と過半数を占めた。同改正案は23日にも衆院を通過する。

政府・与党は今国会中に成立させる方針だが、慎重審議を求める意見が強い。『今国会で成立を図るべきだ』は17%、『廃案にすべきだ』は14%だった。『議論を続けるべきだ』は内閣支持層、不支持層とも5割を超えた。

今の皇室制度では、女性皇族が結婚すると皇族の身分を離れることになっている。しかし、皇族の減少対策として、女性皇族が結婚後も皇室に残る『女性宮家』を認めるべきだという意見がある。秋篠宮ご夫妻の長女眞子さまの婚約が決まったことを受けて『女性宮家』について聞いたところ、『認めた方がよい』41%▽『認めなくてもよい』20%▽『わからない』25%――だった。

女性宮家は将来的に、父方が天皇の血を引かない『女系天皇』が即位する可能性があり、安倍晋三首相は慎重だ。ただ、内閣支持層でも『認めた方がよい』が42%で最も多かった。

首相の友人が理事長を務める学校法人『加計学園』が国家戦略特区で獣医学部を新設する計画を巡って、『総理の意向』が働いたとされる文書が見つかった。この問題について国会で『事実関係の解明に乗り出すべきだ』は54%で、『その必要はない』の28%を大きく上回った」。

毎日の20,21日調査は恣意的世論調査である。安倍晋三首相の「9条に自衛隊を」に賛成28%、反対31%、分からない32%もあるからだ。13,14日調査の産経・読売では賛成が55%、53%と過半数を超えており、分からないは10%以下である。

朝日の「政治断簡」に国分高史・編集委員が「『9条の政局化』首相のリスク」を書いている。

安倍晋三首相は、憲法改正論議を『政局化』した。

これが5月3日に首相が出した『9条改正』メッセージの本質である。

政局化とはどういうことか。自民、公明、日本維新の会の3党で憲法改正案の国会発議に持ち込み、あわせて党内に改憲積極派と慎重派がいる民進党の分断を図ろうというものだ。民進幹部は『野党共闘つぶしの意図は明らかだ』と身構える。

憲法論議は政局にはからめず、与野党が合意できる改憲案を練り上げる。これが衆院憲法審査会の主な議員の共通認識だった。政局化が極まれば、3党は改憲案の採決強行すらしかねない。

そのために首相が投げてきたのが、9条の1項、2項は残しつつ、自衛隊の存在を新たに書き加えるという曲球だ。自民幹部は『低めいっぱいの絶妙な変化球だ』と表現する。

自民結党以来の改憲論の核心は、戦力の不保持と交戦権の否認を定めた9条2項の変更または削除だ。2005年と12年に党がまとめた二つの改憲草案はいずれもそれを踏まえている。

2項削除を『ど真ん中の直球』とするならば、首相が投じた球は『ねじ曲がってはいるが、ぎりぎりストライク』というわけだ。

ただ、党内には首相の案に『今までの議論にはなかった』(石破茂・元防衛相)という『直球派』からの批判のほか、『いまさら自衛隊を書くことに意味があるとは思えない』との声もある。

『9条』はどのようにせよ日本人の琴線に触れるだけに、評価は一様ではない。

自衛隊は献身的な災害救助活動などを通じ、高い評価を受けている。それだけに、その存在を明記することに限れば、多くの国民は受け入れると首相は踏んだのだろう。首相に近い改憲派は『共産党以外はだれも反対できないはずだ』という。だが、そんな単純な話ですむはずはない。

昨年施行された安保法制で、自衛隊に集団的自衛権の限定行使が認められた。新たな条文の追加で2項が空文化し、自衛権行使の範囲がさらに拡大するおそれはないか。『1項2項は残す』という首相の言葉の裏側に、細心の注意をめぐらす必要がある。

首相の意思表明を受け、9条改正に向けた党内の歯車は回り始めたが、党改憲本部のベテランは『首相は大きなリスクを背負った』と語る。

『どんな形であれ9条に手をつけるとなれば、安保法案の時を上回る反対運動が起きる。国民投票で否決されたら、首相退陣だけではすまされない。自衛隊が否定されることになるのだから』

朝日新聞の世論調査では、首相が唱える9条改正が必要か必要でないかは41%対44%で拮抗している。

国会内の議席だけをみれば自公維3党は圧倒的な多数派だ。だが、国会の外に目を転じれば、首相の9条改正論に懐疑的な人たちは決して少数派とは侮れない』。9条の政局化の狙いは、野党共闘つぶしにある。野党共闘の錦の御旗は9条改正阻止であるが、まず民進党が分裂し、連合が離反する。民進党は共産党の共闘に突き進むから、保守層が完全離反し、5%前後に落ち込む。共産党3%、社民党1%、自由党1%で10%にしかならない。一方自民党は42%前後、公明党5%、維新3%で50%となる。勝負にならないが。衆参で3分の2以上、国民投票過半数賛成となり、9条改正が現実ものとなるが。安倍晋三首相は「9条に自衛隊を」の曲球で、改憲勢力を絶対多数派に一変させたのである。護憲勢力は少数派にである。

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