日刊労働通信社 | 「改憲から国民の目そらす思惑か」

「改憲から国民の目そらす思惑か」

政治

朝日の社説に「首相改憲発言」「国民の目そらす思惑か」が書かれている。

「安倍首相が先週末の講演で、自民党の憲法改正原案について『来たるべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に提出したい』と語った。

2020年の改正憲法施行をめざし、これまで年内に原案をまとめる意向を示していた。臨時国会に言及することで、さらにアクセルを踏み込んだ形だ。

強い疑問が浮かぶ。日本はいま、それほど改憲を急がねばならない状況なのだろうか。

首相の主張の中心は戦争放棄と戦力不保持をうたう9条の1項と2項を維持しつつ、自衛隊を明記するというものだ。

だが自衛隊には幅広い国民の支持がある。明記を急ぐ合理的な理由があるとは思えない。

もう一つ、首相があげているのが高等教育の無償化だ。これは憲法に書くか否かではなく、財源の問題だ。財源を用意し、自らの政策判断で進めれば改憲しなくてもできる。

本紙の主要企業100社アンケートでも、首相のめざす『20年の憲法改正』を『めざすべきだ』と答えたのはわずか2社。39社が『時期にはこだわるべきではない』と答えた。

そんな状況下でなぜ、首相は改憲のアクセルをふかすのか。内閣支持率の急落を招いた、加計学園の問題から国民の目をそらし、局面を変えたい。そんな思惑はないか。

首相は講演で語った。『(獣医学部の新設を)1校だけに限定して特区を認めたが、中途半端な妥協が結果として国民的な疑念を招く一因となった』『速やかに全国展開をめざしたい』

明らかな論点のすり替えだ。問われているのは、規制改革が『中途半端』だったかどうかではない。首相の友人が理事長を務める加計学園が事業主体に選ばれた過程が、公平・公正であったかどうかだ。

首相が今回、講演先に選んだのは、産経新聞の主張に賛同する任意団体『神戸<正論>懇話会』だった。5月には読売新聞のインタビューと、日本会議がかかわる改憲集会に寄せたビデオメッセージで『20年改憲』を打ち出した。

主張の誓い報道機関や団体を通じて改憲を説く一方で、国会で問われると、読売新聞を『ぜひ熟読して』と説明を避ける。まさにご都合主義である。

首相がいまなすべきは、憲法53条に基づく野党の要求に応じて速やかに臨時国会を開き、自らや妻昭恵氏に向けられた疑問に一つひとつ答えることだ。憲法無視の首相が、憲法改正のハンドルを握ることは許されない」。

社説の主旨である「国民の目そらす思惑か」に異論がある。

安倍晋三首相の改憲発言を無視し、加計学園問題に国民の関心を集中させ、安倍1強を崩そうと躍起になっているのは誰か、である。改憲問題から国民の目をそらし、加計学園問題で安倍たたきに狂奔しているのが、朝日と野党である。

問題は、北朝鮮・中国の脅威を国民の9割が感じており、国民の生命と財産を守ることが政権の最優先課題となっていることだ。日米同盟強化と自衛隊強化が必須となり、9条改正が、喫緊の課題となる。2020年に9条改正施行である。そのための安倍1強である。日本はいま改憲を急がねばならない状況なのである。にもかかわらず、朝日と野党はフェイクニュースによって加計学園問題での安倍たたきを為し、安倍1強を崩し改憲論議を封殺しようとの思惑である。内閣支持層、自民支持層の思想武装が急務となる。

産経に「改憲議論 都議選後に加速」「自民、11月にたたき台提示」「『加計隠し』野党は反発」が書かれている。

「安倍晋三首相(自民党総裁)が24日の神戸「正論」懇話会の成立記念特別講演会で、秋の臨時国会で『憲法審査会に自民党の案を提出したい』と表明したことを受け、自民党は7月2日投開票の東京都議選後に議論を加速させる方針だ。民進党など野党は一斉に反発しているが、ここまでは改憲論議を活性化させるため発信を強める首相の狙い通りといえそうだ。

自民党の憲法改正推進本部(保岡興治本部長)の本部長補佐を務める下村博文幹事長代行は26日、記者団に『保岡氏の下、しっかりスピード感を持ってやっていただけるのではないか』と述べ、『年内』としてきた改憲案の取りまとめ時期を前倒しする考えを強調した。25日には『改憲案を11月上旬までにまとめる必要がある』と語っている。

<臨時国会で地ならし>

党執行部は改憲の実現に向け、9月に『たたき台』を作成し、公明党などとの協議を経て11月上旬に改憲案をまとめた上で提示――とのシナリオを描く。秋の臨時国会は通常9~12月に開かれる。衆参両院の憲法審査会に自民党案を示して議論を活発化させ、発議を目指す来年の通常国会への地ならしとする狙いがある。

通常国会で発議できれば、首相の『2020(平成32)年を新憲法が施行される年にしたい』との発言よりも早い31年の施行が視野に入る。

衆院憲法審の与党筆頭幹事を務める中谷元前防衛相は26日、『発議するために各党で議論しあえるような案を早期に作ろうというのは、われわれも同じだ。努力する』と賛同した。

衆院憲法審は7月10日から国民投票の経験がある英国やイタリアなどを視察する。与野党の幹事らが参加する予定で、中谷氏は『臨時国会での議論のあり方などを各党とよく話し合っていきたい』とも語った。

<性急な議論 懸念も>

一方、船田元憲法改正推進本部長代行は26日、自身のホームページで『改憲勢力が3分の2を占めているときに、早く発議してしまおうという考えは国民投票でしっぺ返しを食らう可能性が大きい』と指摘し、性急な議論に懸念を示した。

石破茂前地方創生担当相も『<衆参両院議員の3分の2があるうちに>というような進め方は好ましくない』との見解を公表しており、手続きでも首相に異を唱えている。船田、石破両氏は党憲法改正推進本部の執行役員で、9月に『たたき台』を作成したい執行部と対立する可能性がある。

公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は『<急がば回れ>で野党の合意を得ながら進めた方がいい。期限ありきだと実現できるものもできなくなる』と指摘した。

民進党の野田佳彦幹事長は26日の記者会見で、学校法人『加計学園』問題を持ち出し、『すべてが<加計隠し>に見える』と批判。
『自民党と競って案を出すスタンスではない』とも強調した。ただ、そこには改憲派と護憲派が混在する民進党をまとめられるかどうかの苦悩もにじむ。

共産党の小池晃書記局長も記者会見で『憲法に基づき野党が臨時国会の召集を求めても応えない。憲法を守れない首相に憲法を語る資格はない』と批判した。そうした状況を受け、菅義偉官房長官は記者会見で『憲法審査会で各党がそれぞれの案を持ち寄って議論すべきだ。静かな環境で真剣に建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていければいい』と強調した」。

安倍晋三首相は24日、自民党に11月上旬までに改憲案をと前倒しを指示したが、野党の反発を煽るためにである。「加計隠し」と野党は反発するが、逆に野党の「改憲隠し」を国民に明らかにするために、である。

朝日に「真面目な改憲論議ではない」「法学者ら 首相発言を批判」が書かれている。

「自衛隊を憲法9条に明記することなどを内容とする憲法改正原案を臨時国会に提出すると表明した安倍晋三首相の24日の発言について、法学などの専門家で作る『立憲デモクラシーの会』のメンバーが26日、記者会見を開いて『真面目な改憲論議ではない』と批判した。安倍政権の国会運営についても『議会政治の劣化は<国会崩壊>と言わざるを得ないレベルだ』などとする声明を発表した。

自民党の憲法改正草案は、戦力の不保持を定めた憲法9条2項を削除し、『国防軍』の設置を定めており、安倍首相の提案する自衛隊の明記とは全く異なる。同会共同代表の山口二郎・法政大教授(政治学)は、『党の憲法改正草案とどう整合性をつけるのか全くわからず、真面目な改憲論議ではない』と指摘した。

首相の発言の場所は、産経新聞の主張に賛同する任意団体『神戸<正論>懇話会』主催の講演会だったことから、5月3日の読売新聞紙上や日本会議系の集会での安倍首相の改憲発言との類似性に言及。山口氏は、『仲間への改憲メッセージという点で手法は同じ。国会を開き、国民に説明するべきだ』と訴えた。

石川健治・東京大教授(憲法)は『(今でも合憲とされている)自衛隊を合憲化するために改憲するというのは語るに落ちた議論。自衛隊の明記により、9条を根拠とした軍事的コントロールが失われるが、その検討なしに改憲に突っ走ろうとしているのが問題だ』と批判した。

会見で同会は、『安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明』を発表した。

委員会審議を打ち切っての『共謀罪』法案の採決強行。閉会中審査や証人喚問を拒絶するなど、加計学園や森友学園をめぐる野党の追及への不誠実な対応……。声明は『政府与党が、両院での圧倒的な議席数をたのみに説明や説得への努力を放棄したことがもたらした議会政治の劣化は、<国会崩壊>と言わざるを得ないレベルまで進んだ』と批判。『野党が憲法53条に従って臨時国会の召集を求めた以上、内閣は速やかに臨時国会を開き、説明責任を果たさなければならない』とした。西谷修・立教大特任教授(哲学)は『とんでもない事態が社会で起きていることに警鐘をならすために会見を開いた』と語った」。

山口二郎・法政大教授は「真面目な改憲論議ではない」と批判、石川健司・東大教授は「今でも合憲とされている自衛隊を合憲化するために改憲するというのは語るに落ちた議論」と批判しているが、9条加憲論の正面からの批判になっていない。「自衛隊は違憲」が、憲法学者の8割を占めているからであり、護憲勢力の本音だからである。

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