日刊労働通信社 | 「危ういのは中国の覇権主義」

「危ういのは中国の覇権主義」

政治

朝日の社説に「米の安保戦略」「『力の平和』の危うさ」が書かれている。

「ひたすら武力にものを言わせて米国最優先をうたい、経済的な損得に執拗にこだわる-―。トランプ大統領のそんな考え方をくっきり映している。

米政府が発表した『国家安全保障戦略』である。政権発足から1年近くを経てまとめた基本指針だが、きわだつのはオバマ前政権からの転換だ。

戦略4本柱のうち、前政権で『価値観』と題された章は『力による平和の維持』へ、『世界秩序』は『米国の影響力強化』へと、置き換えられた。

『核兵器のない世界』という目標は消えた。代わりに、核兵器を『平和と安定を守るための戦略の基礎』と高く位置づけ、近代化をうたっている。

米国をおびやかす中国とロシアとの『競合』に勝つための、現実主義だという。その文面からぬぐえないのは、相も変わらぬ思慮不足と独善である。

確かに近年の中ロには、既存の秩序に挑むような行動がめだつ。しかしだからといって、両国を国際的な協調枠組みに引き込む努力が『ほとんど誤りという結果に終わった』と切り捨てるのは短絡に過ぎる。

北朝鮮とイラン問題も含め、この20年間に歴代米政権が積み上げた外交には、失敗もあれば継続すべき点もある。最大の過ちであるイラク戦争の教訓は、国際社会の足並みからはずれた単独行動は米国と世界に甚大な禍根を残すということだ。

ところが今回は、核なき世界とともに、地球温暖化対策も消えた。古典的な大国間の争いに腐心し、人類が新たに認識した脅威には背を向ける。そんな思考は、時代感覚が疑われる。

もはや米国の一人勝ちを実現できる世界ではない。温暖化問題やテロの拡散を含め、各国が一致して取りくまねば解決できない問題が山積している。

トランプ氏は『米国第一』と国際連携は両立できると語る。だが実際にはこの1年弱、自由貿易枠組みからの離脱や、イラン合意への一方的な批判など、多国間の熟議にもとづく約束や合意の軽視を続けてきた。

米国の影響力をそぎ、安保環境を損ねるのはまさに、そんな振るまいだ。米国であれ中ロであれ、どの国の繁栄も、世界の安定と発展の上にしかあり得ない。それが21世紀の現実だ。

米国が力を結集する闘いに、同盟国は貢献せよと、安保戦略は求めている。しかし日本の役割は、『力の平和』に加担し、軍拡になびくことではない。軍事偏重が招く過ちの重大さと、国際協調の今日的な意義をしっかりと強く説くことである」。

社説の主旨である「『力の平和』の危うさ」に異論がある。中国の覇権主義ありきである。米国主導の国際秩序への挑戦である。世界の警察官として「力による平和の維持」へのオバマ前政権からの転換は正論であるからだ。

問題は、中国の覇権主義ありきが、どこに拠っているか、である。中国共産党の祖である毛沢東の「銃口より政権を」に拠っていることである。中国こそが軍国主義そのものであり、戦争勢力なのである。最も危うい国は中国なのである。にもかかわらず朝日はトランプ米政権が危いという。朝日は中国共産党主導の「平和と言う名の戦争」の走狗であると言わざるを得ない。

日経に「中ロ 米に出方見極め」「安保戦略警戒・対立は望まず」「中国『協力が選択肢』」が書かれている。

「トランプ米大統領が発表した『国家安全保障戦略』で中国やロシアを競合国に位置づけたことを受け、両国からは警戒や批判が相次いだ。中国政府は19日、『協力こそが米中の唯一の選択肢だ』と反論。トランプ政権の対中姿勢の硬化にクギを刺した。ただ、中ロ当局は米国との決定的な関係悪化望んでおらず、米の出方を慎重に見極めようとする意向もにじんでいる。

中国外務省の華春瑩副報道局長は同日の記者会見で『中国の意図を故意にねじ曲げるのをやめるよう、米国に求める』と強調した。米国が中国について、米国の価値観に反する世界の構築を目指す『修正主義勢力』と表現したことを批判し、中国は現行の国際秩序の維持に貢献していると主張。『中米両国は世界の平和安定維持やグローバルな経済成長に広範な共通利益がある』と訴えた。

中国国営の新華社通信が配信した論評記事は『他国に<競合国>のレッテルを貼るのは事実に反するだけでなく、各国の安全が密接に関わるグローバル化時代の趨勢に逆行する』と指摘。トランプ政権によるエルサレムのイスラエル首都認定やイラン核合意の不履行宣言に触れて、『多くの行為が世界各地の情勢の緊迫化をもたらし、国際社会の疑念と批判を招いている』とした。

習近平(シー・ジンピン)指導部は対米関係について、お互いの立場の違いを尊重し、対抗せずに協力すべきだと主張してきた。2017年に実現した両国首脳の相互訪問によって関係を安定させたと位置づけているだけに、トランプ大統領の対中政策の転換への警戒感が強い。『米国第一』主義に批判の矛先を向けたのは、中国の主張の正当性を訴えつつ、対中姿勢を硬化させないようクギを刺したと言える。

華氏は『中国は自国の正当な権益を決して放棄することはない』とも述べた。米国が求める南シナ海での軍事拠点化の中止には応じないとの意思表明だ。

北朝鮮の核・ミサイル問題を巡っても、中国は原油供給停止など米国が求める強硬措置には応じていない。協力関係を訴える一方、安全保障面では明確な溝があるのも確かだ。米国の国家安保戦略は、隠しきれない立場の違いが表面化しただけとも言え、米中間は今後も摩擦を抱えながら共存を探ることになる。

一方、ロシアのぺスコフ大統領報道官は19日、米国の『国家安全保障戦略』について『帝国主義的な性格がある。米国は一国支配にこだわっている』と警戒感を示した。ロシア下院のスルツキー外交委員長も『米国の覇権の復活と、(米国による)一極支配の世界の構築を目指したものだ』と批判。『ロシアは西側諸国に内政干渉したと、再び証拠なしに非難されている』と訴えた。

ただ、ぺスコフ氏は『米国民にとって有益な分野ではロシアと連携する準備があると積極的な言及もあった』と評価。『これはプーチン大統領と全く同じ意見だ』と述べ、米国との協議の可能性を示唆した。インタファクス通信によるとロシア外務省のウリヤノフ不拡散・軍縮局長も『オバマ政権路線を継続した』と述べ、トランプ政権下で核戦略などに大きな変化は予想しないとの見方を示した。

ロシア政府内では、トランプ氏との協力を探る考えがなお強い。プーチン氏は14日の年次記者会見でロシアを口実にした米国の軍事力拡大に懸念を示したが、『軍拡競争には加わらない』と明言した。

今回の安保戦略と、トランプ氏のこれまでの発言には相違点もあり、中ロには今後の米国の出方を見極めようとの冷静な姿勢も目立っている。

≪日本「応分の負担」に懸念≫

日本政府は強い米国のアジア関与を歓迎する一方、同盟国に求められる『応分の負担』には懸念がある。

小野寺五典防衛相は19日の記者会見で『米国の安保戦略と、日本政府の認識はある程度一致している』と指摘した。核・ミサイルの開発を続ける北朝鮮に加え、南シナ海や東シナ海で海洋進出を探る中国を『競争勢力』と位置づけた点が念頭にある。河野太郎外相も会見で『国際秩序を守っていくため、米国がリーダーシップを発揮するものだ』と評価した。

安保戦略は同盟国に安心を与える一方で、役割増を求められる可能性もある。日本は集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法を成立させ、自衛隊と米軍の運用一本化が進む。米軍の戦闘行動の支援拡大を強いられるリスクは否めない。装備面の負担拡大も必至だ。トランプ米大統領は日本に米国製の防衛装備品の購入拡大を促している。

≪専門家の見方≫

<対中経済対策を強化へ>メレディス・サンプター米ユーラシア・グループ・ディレクター(アジア担当)

国家安全保障戦略の発表を受け、今後数週間から数か月の間に米国経済の競争力を守るための中国を対象にした政策が打ち出されるだろう。米通商法301条に基づく調査や、更なる行動も含まれる。

中国は緊張関係を和らげようとし、習近平国家主席とトランプ大統領のつながりを通じて米国の行動を制御しようとするだろう。だが最終的な中国の反応は米国の挑戦に応じて調整され、米国が交渉の席に着くように仕向けるとみられる。

<前政権からの転換明確>ダニエル・デービス米ディフェンス・プライオリティーズ上級研究員

国家安全保障戦略を発表したこと自体は評価できる。オバマ前政権は公表しない年が多かった。『力による平和』を掲げ、軍事力の増強を前面に押し出しており、ブッシュ(子)政権の戦略と共通点がある。外交や対話を重視した前政権からの路線転換は明確だ。

戦略は国際的な協力についても言及しているが、中国やロシアを米国に挑戦する『修正主義勢力』と名指しするなど、全体に攻撃的なトーンが強い。国際社会に向け、より外交を重視する現実的な姿勢を示すべきだ。

<同盟国・日本強く意識>前嶋和弘・上智大学教授(米国現代政治)

トランプ氏が従来から主張していたことを分かりやすくまとめており、大きな驚きはなかった。切迫感を感じている北朝鮮やイランに対してはかなり厳しい言葉を用いていた。演説は短く、プロンプターを見ながら落ち着いて話していた印象を受けた。

オバマ前大統領2015年2月に発表した前回の戦略を意識的に否定していた点も目立った。トランプ氏は『米国第一』で、経済面の成果を誇る自画自賛が盛り込まれた。日本は確実に計算できる同盟国の中心的な存在であると位置づけられていた」。

トランプ政権が18日、「国家安全保障戦略」を発表したが、具体策として、数週間の間に、対中国への米通商法301条に基づく経済制裁が打ち出されることになる。対米貿易黒字4300億ドルの削減を、である。米中通商戦争の始まりである。

毎日の「点検安倍政治5年②」に「官邸支配 沈む霞が関」が書かれている。

<無視できぬ意向>

今月4日、財務省幹部が首相官邸を訪れ、年収800万円超の会社員を『高所得者』として所得増税する税制改革案を、安倍晋三首相や菅義偉官房長官に説明した。同省は与党に根回しを済ませ、2018年度与党税制改正大綱に反映される手はずになっていた。

しかし、それを聞きつけた今井尚哉首相秘書官が財務省に異論を唱えた。『高所得というのは1000万円超だろう』。過度の増税を渋る菅氏らの意向も踏まえた発言だった。

同省は無視できず、増税の線引きは『年収850万円超』へ上方修正された。官邸支配と霞が関の地盤沈下を象徴する一幕だった。

12年末の第2次安倍内閣発足以降、首相は官邸機能の強化を図ってきた。縦割り行政と省庁対立を排し、政策決定権を官邸に集中して迅速に実現させる狙いがあった。

その代表例の一つが14年に発足した国家安全保障局だ。外務・防衛・警察など各省庁からエース級を集めた外交政策の司令塔。『省庁間の連略調整が各段にスムーズになった』と同局幹部らは口をそろえる。集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制の策定も、同局が主導した。

官邸の権限が増せば霞が関の存在感は当然低下する。首相は今年5月、中国での国際会議に側近の今井氏を派遣し、現代版シルクロード経済圏構想『一帯一路』に協力する考えを中国側に伝達。外務省内の慎重論を押し切り、6月にこの方針を表明した。

<人事権におびえ>

もう一つ、安倍政権の打った官僚支配の手段が、14年に設置された内閣人事局だ。官邸が省庁幹部人事を管理し、霞が関の慣行を次々に破った。今夏も、菅氏の秘書官だった財務官僚が事務次官コースの財務省官房長に、今井氏付きの内閣副参事官が首相秘書官に抜てきされている。

同局の設置はもともと、08年の福田政権下で成立した国家公務員制度改革基本法に明記されたものだ。官邸が人事ににらみを利かせて『省益優先』の官僚を抑え、政権の方針を円滑に進めるのが本来の趣旨だった。

ところが、かつて省庁を後押しした族議員が5年に及ぶ『安倍1強』下で沈黙。さらに人事による生殺与奪も限られた霞が関には、『官邸に嫌われたら出世できない』というおびえとそんたくがはびこった。そのひずみが今年、いわゆる『もり・かけ』問題として噴き出した。

森友学園への国有地値引き問題で、『資料は破棄した』『価格を(事前に)提示していない』と国会で強弁した財務省の佐川宣寿・前理財局長が、7月に国税庁長官に就任。公の場を避けるようになった佐川氏を、首相は『適材』と断言した。

加計学園の獣医学部新設を巡っては、文部科学省の内部文書が次々発見されたが、官邸や内閣府は『記憶』を根拠に文書を否定。その不自然さが批判を浴びた。ある省庁幹部は『官邸にモノが言えない組織に成り下がった』と嘆く。ただ、過度に忠誠を示す官僚の努力はかえって政権不信を招き、首相の足元を落ち着かなくさせている」。

森友学園問題は、財務省のチョンボであり、加計学園問題は、前文部事務次官の造反である、いずれも首相の関与はゼロのフェイクニュースである。安倍1強による官邸支配は続くが。

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