日刊労働通信社 | 改憲勢力44%の思想武装が急務

改憲勢力44%の思想武装が急務

政治

朝日に「本社世論調査」「首相の改憲姿勢『評価』41%、『評価しない』は42%」が書かれている。

「朝日新聞社20、21両日に実施した全国世論調査(電話)によると、安倍晋三首相が年頭の記者会見で『今年こそ憲法のあるべき姿を国民に提示する』と改憲への強い意欲を示したことについて、『評価する』は41%、『評価しない』は42%と評価がほぼ二分した。内閣支持率は45%(昨年12月16、17日調査では41%)とやや上がり、不支持率は33%(同38%)とやや下がった。

憲法改正は優先的に取り組むべき課題だと思うか聞くと、『そうは思わない』54%に対し、『優先的に取り組むべき課題』は32%。自民支持層では『優先的に取り組むべき課題』49%が『そうは思わない』38%を上回ったが、無党派層では逆転し、『そうは思わない』60%が『優先的に……』の22%を上回った。

安倍政権のもとで憲法9条を改正し、自衛隊の存在を憲法に明記する改憲には、『賛成』34%が『反対』46%を下回った。

慰安婦問題について、韓国の文在寅大統領が今月、日本に再交渉は求めないものの、日本による被害者への『心を尽くした謝罪』などが必要だと表明したことには、『納得できない』が79%に達した。韓国の平昌冬季五輪の開会式に安倍首相が『出席した方がよ』は53%、『そうは思わない』は30%。

安倍首相が22日の施政方針演説で強調した『働き方改革』に『期待する』は46%、『期待しな』」は44%と拮抗した。

<「次の自民総裁」安倍氏最多31%>

朝日新聞社が実施した20、21日の世論調査では、今秋の自民党総裁選を前に、その候補と目される4氏のうち、次の自民党総裁にふさわしいのは誰だと思うか尋ねた。最多は安倍晋三首相で31%。次いで『この中にはいない』29%、石破茂・元幹事長20%、野田聖子総務相8%、岸田文雄政調会長6%だった。他方、安倍首相に今秋以降も党総裁を『続けてほしい』は40%、『続けてほしくない』は43%と割れた」。

以上の調査結果から次のことが読み解ける。

内閣支持率は前回調査(12月16,17日)より4ポイント増の45%、不支持率は5ポイント減の33%、自民党支持率は3ポイント増の39%。安倍晋三首相3選支持40%、改憲姿勢評価41%が内閣支持率を下支えしている。反対は43%、42%と拮抗している。改憲勢力支持率は自民39%+公明4%+維新1%=44%に対して護憲勢力支持率は、立憲9%+共産3%+民進1%+希望1%=14%に過ぎない。3分の1以下である。支持政党なしの34%の8割が護憲勢力支持に回っているとの計算になる。

問題は、9条に自衛隊明記をに賛成が34%、反対が46%もあることだ。この状況では国民投票で間違いなく否決される。改憲勢力44%の思想武装が急務となるが。

朝日の「時時刻刻」に「首相、淡々と改憲狙う」が書かれている。

「安倍晋三首相(自民党総裁)が国会召集日に悲願の憲法改正で踏み込んだ。党所属国会議員が集まる両院議員総会で『いよいよ実現する時』と表明した。年内発議が念頭にあり、今年最大の政治テーマとなる可能性がある。野党が身構える中、通常国会が始まった。

≪演説は表現抑制、党内で決意語る≫

22日午前、首相は詰めかけた自民党議員を前に力を込めた。『我が党は結党以来、憲法改正を党是として掲げてきた。いよいよ実現する時を迎えている』

2時間後にあった首相の施政方針演説は対照的だった。『各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待しています』。淡々とした言いぶりで、すぐに手元の原稿のページをめくった。

『総裁』としてアクセルを踏みつつ、『首相』としては抑制的な表現を使う。昨年5月に、自衛隊明記案などを自ら打ち上げて以来続ける使い分けだが、もちろん本音は前者にある。

今年後半の国会発議。自民党がめざす改憲への最速シナリオだ。2019年夏には参院選があり、改憲に積極的な勢力が国会の発議に必要な3分の2を割り込めば、発議自体が困難になる。さらに19年4月末の天皇陛下の退位と5月の皇太子さまの即位が控える。同時期に国論を二分する発議は難しく、今年は『勝負の年』といえる。年明けのBS番組で『1年もあればいい』と年内発議を目標に据えた二階俊博幹事長はこの日の記者会見で『総理の姿勢を確認したので、さらなる前進を図るよう努力していきたい』と意気込んだ。

≪自民方針 3月党大会にも≫

節目となるのは、3月25日の党大会だ。柴山昌彦・筆頭副幹事長も『党大会には、党方針をまとめる方向で進めていけたらいい』と明言する。党でまとめた案を掲げ、4月以降に衆参の憲法審査会での議論を加速させる日程を描く。

とはいえ、想定通りに進むかは見通せない。首相が『本丸』と見込む9条改正はハードルが高い。交戦権の否認や戦力不保持をうたう9条2項を維持する首相案には党内に根強い反発がある。2項削除を訴える石破茂・元幹事長は記者団に『交戦権がない自衛権が概念として存在し得るのか。そういう話は地方レベルでしたことは一度もないと思う。そういう状況で、9条の改正を行うことが正しいとは全く思わない』と語る。

連立与党の公明党は、自民党の『改憲4項目』についての党内議論を近く始めるが、慎重姿勢は崩していない。山口那津男代表は首相演説後、『今はまったくの白紙で臨む。憲法審査会の議論をよく見て対応を考えたい』と語った。

憲法審査会での議論もすんなりスタートできるかわからない。首相が協力に期待を抱く希望の党は、民進党との統一会派構想が頓挫。野党側の主導権を持つ野党第1党は立憲民主党が引き続き担う。立憲は首相が牽引する改憲への反発を強めている。

枝野幸男代表は22日、首相が演説で「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法」と触れたことを激しく批判した。『憲法は国民が公権力を縛るためのルール。定義が間違っている方と議論のしようがない』

≪演説 実績PR重点≫
 
野党は今国会、『森友・加計』問題に加え、スーパーコンピューター開発の助成金詐欺事件を追及する姿勢をみせる。展開次第では、内閣支持率が急落した昨年の通常国会の再現となるリスクを政権は抱える。そうした中、首相が選んだのは、野党との対決路線ではなく、抑制的で淡々とした演説だった。

過去の首相演説にみられたような野党への挑発は姿を消した。憲法改正議論への野党の協力を引き出したい首相の側近議員は『野党を刺激せず、丁寧にやっていこうということだ』と解説。首相周辺は演説で取り上げた政策について『あまり新味はないかもしれないが、政権として衆院選挙で約束したことを形にした』と、安全運転を強調する。

15年の施政方針演説では『改革』を36回、16年は『挑戦』、昨年は『未来』をいずれも20回以上使っていたが、今回はそういったキーワードも見当たらない。昨年の衆院選で繰り返した『国難』が登場するのも2回のみだ。

新しい施策の打ち出しが少ない一方、実績のPRには分量を割いたのも今回の演説の特徴だ。『日本を訪れた外国人観光客は5年連続で過去最高を更新』『平和安保法制(安全保障法制)を成立させ、自衛隊は初めて米艦艇と航空機の防護の任務に当たった』などと列挙。秋に控える自民党総裁選を見据え、実績をアピールする狙いも透ける。

外交では、関係改善の兆しが見える中国について、『あらゆるレベルで両国民の交流を飛躍的に強化する』と強調。首脳レベルの相互訪問に意欲を示した。首相官邸幹部『華々しいチャレンジをするのではなく、淡々と着実に政策を実行していくというのを明確に示すという意味合いが強い』と解説する」。

安倍晋三首相の改憲シナリオは、3月の党大会で党の方針案を決め、通常国会での衆参憲法審査会で審議、秋の臨時国会で改憲発議、来年2月の国民投票が最短であるが。ずれ込めば、改憲発議は来年の通常国会での2月中、国民投票は7月の参院選とのダブルとなるが。

産経の「正論」に百地章・日本大学名誉教授が「自衛隊明記で法的安定確保を」書いている。

「安倍晋三首相(自民党総裁)が一石を投じた憲法への『自衛隊明記』には批判もあるが、誤解によるものが少なくないようだ。

<憲法9条に矛盾はきたさない>

第1に、憲法9条2項が『戦力の不保持』を定めているにもかかわらず、『9条3項』ないし『9条の2』で『自衛隊の保持』を明記するのは矛盾であって許されないとの批判だが、これは当たっていない。

現在でも、自衛隊は9条2項の下で、『戦力』に至らざる『自衛のための必要最小限度の実力』として保持が認められている(政府見解)。その自衛隊の存在を憲法に書き込むだけなのに、なぜ9条2項と矛盾するのだろうか。

有力なのは、新たに『9条の2』という独立した条文を起こし、そこに自衛隊保持の『目的』や『文民統』なども書き加える案である。その場合、『9条』と『9条の2』が矛盾しないことをより明確にするためには、『9条の2』の冒頭に『前条の下に』とか『前条の範囲内で』といった接続文を加えることが望ましい。

そうすれば、自衛隊が『9条の下に』あるいは『9条の範囲内で』存在することが一層明白になり、両者が矛盾するといった批判はなくなるだろう。

この点、『後法優位の原則』を持ち出して、もし『9条3項』なり『9条の2』で『自衛隊の保持が明記された場合には、『前法』である『9条2項』が否定されてしまわないか、といった疑問が一部にある。

しかし、『後法は前法を廃す』というのは、『同じ形式的効力をもつ2つの法形式相互間で、その内容が矛盾するときは、時間的に後に成立したものが優先する』(『新版新法律学辞典』有斐閣)というだけである。

つまり『ある法律と別の法律の間で相互に矛盾したり抵触する場合には、後で制定された法律の方が先に制定された法律に優先される』というだけだから、同じ憲法の条文である『9条』と『9条の2』との間では『前法』と『後法』といった関係は成立しない。

しかも『9条』と『9条の2』は矛盾していないのだから、『9条の2』を書き加えることによって『戦力の不保持』を定めた9条2項が空文化してしまうなどといったことはない。

<平和安全法制とは別次元だ>

次に、憲法への自衛隊明記は、先年成立した『“憲法違反”の平和安全法制を追認するもの』であって認められないとの批判だが、これも筋違いである。平和安全法制と自衛隊の憲法明記とは別次元のものであり、憲法明記によって平和安全法制の合憲性そのものが左右されることなどありえない。

自衛隊の憲法明記は、あくまで自衛隊の『地位』に関わるものである。つまり、法律上の存在にとどまる自衛隊を憲法に格上げしようとするだけである。これに対して、平和安全法制は自衛隊の『権限行』」や『行動』について定めたものだから、自衛隊の憲法明記だけで自衛隊の『権限』が拡大したり、行動範囲が広がったりすることはない。

ちなみに以前、本欄で述べたように(「集団的自衛権の行使に問題なし」平成27年6月16日)、集団的自衛権は国連憲章51条によってすべての加盟国に認められた主権国家に固有の権利であり、しかも平和安全法制はその限定的行使を認めただけだから、憲法違反でないことは明らかである。

<最高裁が合憲判断下せるように>

第3に、自衛隊は国民の大多数が認めており、今更憲法に書き込む必要などないといった反対がある。しかし、国民が自衛隊を認めているということと、その『合憲性』は別である。

確かに政府見解は、社会党の村山富市政権時代を含めて自衛隊合憲説を採り、ほとんどの政党も同じく自衛隊を合憲としてきた。しかし裁判所の判断は曖昧であり、高裁判決を含め多くは『統治行為論』(国家の基本にかかわる高度に政治的な問題については、国会や内閣の判断に委ねるという理論)を採用し、正面からの判断を避けてきた。それどころか下級審判決の中には、自衛隊を違憲としたものさえある(長沼事件1審判決)。

従って、最終的な憲法判断を行う最高裁が正面から合憲判断が下せるよう、自衛隊を憲法に明記し、その法的地位を確立しておく必要がある。

それとともに、自衛隊は現在、法律によって認められているだけだから、もし自衛隊違憲論に立つ政党が国会で多数を占めるようになれば、過半数の賛成だけで自衛隊は廃止可能となる。現に日本共産党は自衛隊違憲論に立ち、自衛隊の解消を主張しているが、万一このような政党を中心とする連立政権でも成立すれば、自衛隊の地位は極めて危うくなろう。

北朝鮮や中国の脅威が迫る中、わが国の平和と独立を守り国民の安全の確保に努めている自衛隊の存在を憲法に明記することで、その法的安定性を確保することは、まさに急務ではなかろうか」。

最高裁では未だに自衛隊は合憲との判断を下していない。自衛隊は法律によって認められているだけだから、自衛隊の法的位置は危ういとなる。最高裁が、自衛隊を合憲と判断するには、自衛隊の存在を憲法に明記するのが必須となるが

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