日刊労働通信社 | 「北の融和姿勢の狙いは米韓合同軍事演習の中止」

「北の融和姿勢の狙いは米韓合同軍事演習の中止」

政治

読売の社説に「米副大統領来日」「北の融和姿勢に惑わされまい」が書かれている。

「核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮の現状に何ら変化はない。五輪の友好ムードに流されて、国際社会は北朝鮮への圧力を緩めてはならない。

安倍首相が、来日したペンス米副大統領と会談した。北朝鮮の核放棄に向け、『最大限の圧力』をかける方針を堅持し、韓国に対して、日米との連携の継続を働きかけることで合意した。

会談後、首相は共同記者発表で『北朝鮮の挑発的行動は続いている。ほほ笑み外交に目を奪われてはならない』と強調した。

ペンス氏は、北朝鮮の金正恩政権を『独裁的で残酷』と表現した。

『全ての選択肢がテーブルの上にある』とも語り、軍事行動を排除しない考えを示唆した。

北朝鮮は平昌冬季五輪を利用し、南北融和の機運を高めている。韓国と日米両国を離間させ、包囲網を切り崩す狙いは明白だ。

五輪開幕前に、日米が高いレベルで圧力路線を明確化し、北朝鮮に懐柔されないよう韓国にくぎを刺すことは、時宜に適う。

ペンス氏は8日、首相は9日に韓国の文在寅大統領と会談する。北朝鮮の脅威を直視し、経済制裁と軍事的な圧力をかけ続ける方針を再確認せねばならない。

韓国は、五輪に関する北朝鮮との協力と、安全保障問題を峻別する必要がある。

首相とペンス氏は、国連安全保障理事会の制裁決議を厳格に履行する重要性でも一致した。

北朝鮮は、石油精製品などを公海上で積み替える密輸を繰り返しているとされる。制裁逃れを防ぐには、各国が密輸情報を共有し、連携して監視と取り締まりに当たることが不可欠だ。

朝鮮半島危機を想定した抑止力の強化も課題である。

ペンス氏は会談に先だって、防衛省で、弾道ミサイルに備えて展開中の地対空誘導弾『PAC3』を視察した。外務省と米国務省、自衛隊と米軍など、様々なレベルで重層的に関係を強化し、日米同盟の実効性を高めたい。

韓国を交えた3か国の安保協力の深化も欠かせない。経済分野は、ペンス氏と麻生副総理兼財務相をトップとする日米経済対話で話し合いを続ける。ペンス氏は『自由で公正な貿易』の必要性を強調した。『米国第一』を標榜するトランプ政権は、対日貿易赤字の縮小を日本政府に求めている。貿易を巡る立場の違いが日米関係全体を損なわないよう、建設的に協議を進めたい」。

社説の主旨である「北の融和姿勢に惑わされまい」は、正論である。北朝鮮は平昌冬季五輪を利用し、南北融和の機運を高め、韓国と日米両国を離間させ、対北朝鮮包囲網を切り崩すのが狙いである。具体的には、3月18日パラリンピック閉幕直後の米韓合同演習の延期もしくは中止が狙いである。安倍晋三首相とペンス副大統領の7日会談の狙いも、文政権への米韓合同軍事演習実施にクギを刺すことである、

問題は、文在寅政権が、米韓合同軍事演習実施に慎重姿勢であることだ。北朝鮮の融和姿勢に付け込まれる隙があることだ。北朝鮮の高位高官使節団による金正恩委員長との訪朝によるトップ会談を提示されたらどうするのか。文在寅大統領がその誘いに応じたなら、米韓合同軍事演習は中止となり、韓国と日米は分断されるが。要注意である。

産経の「石平のChina Watch」に「世界の救世主のつもりの習主席」が書かれている。

「1月11日掲載の本欄は、中国国内における習近平国家主席の『神格化』の動きを取り上げたが、実は、それから2週間後、習氏の『神格化』はさらにエスカレートして驚愕の新段階に入った。人民日報などの共産党宣伝機関は何と、習主席のことを『中国人民の領袖』だけでなく、人類全体の指導者として持ち上げ始めたのである。

そのために人民日報などが使ったネタは、1年前に習主席がスイスで行った2つの演説だ。昨年1月17日、習氏は中国主席としてスイスで開催のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に参加して基調演説を行った。翌18日、習主席はジュネーブの国連欧州本部でも演説した。

この2つの演説において、習主席は『開放型の世界経済』を唱え、米トランプ政権の保護主義を暗に牽制し、一定の注目を集めたが『開放型の世界経済』をいかにして構築するかについて主席から具体的な提案や措置の発表もなく、会議参加者と各国からの反応は今ひとつであった。

しかし、中国共産党の宣伝機関の手にかかると、習主席の2つの演説はあたかも、この地球上の人々に光と喜びを与える『福音』となったかのように粉飾された。

今年1月25日、人民日報は1面トップで、習主席の2つの演説が発表されて1周年となるのを記念し『思想の光で世界の進路を導こう』と題する長文の論説を掲載した。翌26日、人民日報は再び1面トップで習主席の演説を絶賛する論評を掲載したが、今度のタイトルは『人類の進歩と変革を導く力』であった。

つまり人民日報からすれば、習主席の2つの演説はいつの間にか、『人類』と『世界』を導く『光』と『力』となっているらしい。タイトルを見ただけでも、自国の主席に対する人民日報の過剰賛美が既に厚顔無恥の境地に達していることがよく分かった。

人民日報論評の中身となると、それはまた、読む人の失笑を誘うほど自家賛美のオンパレードであった。

曰く、『2つの基調講演は世界人民の心の声を代弁し、世界全体に大きな影響を与えた。〝世界がどうなるのか″〝われわれはどうすべきなのか″の迷いが広がっている中で、中国の理念の光は人類発展の方向性を示した』。

曰く、『2つの歴史的演説は哲学の高いレベルから人類の運命を説き明かした。それは大海原の灯台のように船舶の進路を導き、時間と空間をこえた思想的魅力を放った』。

この行を原文で読んだとき、私はさすがに虫酸が走るような思いをしたが、29日に配信された新華社通信記事の『習近平賛美』はそれ以上のものであった。

曰く、『人類の進路を示した習主席の2つの講演は、知恵の声を大地に広げ、真理の光をもって暗闇を照らした』。つまり新華社通信の表現に従えば、習主席が例の2つの演説を行う前に、われわれ人類一同は『暗闇』の中にいたというのだ。

自画自賛がここまできたら、普通の神経を持つわれわれはもはや唖然とするしかない。しかし人民日報と新華社通信はどうやら本気で、習主席のことを人類の救世主に祭り上げようとしている。そして習主席自身もそれを黙認しているはずだ。それは単なる妄想だと笑って済ませられるものではない。

『習主席が人類全体の方向性を示さなければならない』という、この一見荒唐無稽の妄想の背後には中華帝国の皇帝が天下の主=世界の支配者であるという中華思想の亡霊と、21世紀における中国の世界制覇という大いなる野望が見え隠れしているからだ。

妄想に近い野望を胸に抱いて世界支配へと動きだす『新中華帝国』と『新皇帝習近平』に、どう対処していくのか、それこそがわれわれにとっての大問題だ」。中国共産党一党独裁のトップ習主席が、神格化から人類の救世主へ祭り上げられている。毛沢東、スターリンを超えた絶頂である。共産主義思想の最大の矛盾である。神否定、宗教否定の唯物論なのに、である。後は下落するのみである。

朝日に「自民党が、憲法9条改正に向けた条文案づくり」が書かれている。

「自民党が憲法9条改正に向けた条文案づくりに着手した。党内で広く案を募る形をとるが、目指すは9条1項、2項を維持して自衛隊を明記する首相案に沿った意見集約だ。改憲に慎重姿勢を見せる公明党も、自民党が検討する改憲4項目を議論の俎上に載せた。

『自衛隊の明記』をテーマにした7日の自民党憲法改正推進本部の全体会合で、細田博之本部長は冒頭、条文案づくりに着手することを宣言した。

『最低限、いまの自衛隊の存在を具体的に、国民世論に従って書くことがどのようにできるのか。いよいよ9条について具体案をつくっていく』

細田氏は、会合の途中でも自説を次々に述べる議員たちにこう求めた。

『みなさんに宿題を出します。自分の頭で考えて条文案を出してください』

自民党が昨年末にまとめた論点整理では、9条1項2項を維持したまま自衛隊の存在を明記する安倍晋三首相が提案した案と、石破茂・元防衛相らが推す2項削除案が併記された。

この日の会合で口火を切った衛藤征士郎・元防衛庁長官は『2項を残すといつまでも影を引きずってしまう。2項を削除して明確に修正する』と主張。

ただ、その後は『9条(2項)を残し、国民の大多数が認めている自衛隊を明記するのが正しい方向』(岩屋毅衆院議員)、『自衛隊だけ書き込めば、我々は国民の生命と財産だけは守るという意思表示をしたことになる。それで十分だ』(衛藤晟一・首相補佐官)などと、首相案支持の意見が多く出された。

党執行部は早くから首相案を軸にとりまとめをめざしていた。戦力不保持を定めた2項を削除することには公明党の抵抗が強いうえ、なによりも国民投票で否決される可能性が高まるからだ。

ここにきて細田氏が議院に条文案を募ったのは、2項削除論を降ろそうとしない石破氏らにも案を出させ、その主張も一部取り込んだ形でとりまとめたいと思いが透ける。

全体会合に先だって開いた同推進本部の執行役員会で細田氏は、『具体的にそれぞれの説に従い、実際に(条文を)作ってみたら、意外にたいした違いはない。コアの部分はどこか、だんだんわかってくる』と発言。妥協は可能との認識をにじませた。

推進本部特別顧問の高村正彦副総裁も6日夜のBS番組で、『安倍さんが言っていることは正しい。石破さんが言っていることも間違いではない。この二つは矛盾しない』と2項削除派への配慮を示している。

安倍首相もまた、国会論戦で自身の案ならば安全保障関連法の範囲を超えた集団的自衛権の行使は不可能だと主張。持論に沿ったとりまとめに向けた環境整備に努めている。

<党内論議を開始>

前のめりになる自民党を横目で見ながら、公明党もそろりと論議を始めた。

党憲法調査会の役員会では、北側一雄会長が『自民党は党大会を3月、地方議員向けの研修会を4月に行う。公明党として準備しなければならない』。この日は自衛隊明記案を含む改憲4項目の説明を受け、全議員対象の会合を今月16日に開くことを確認した。月1~2回の頻度で開く方針。

ただ、4項目についての意見交換はなく、結論を出す目標時期も示されなかった。党憲法調査会幹部は『自民党の議論から一歩も前に出ない。離れずについていくだけだ』と漏らす。

公明党や支持母体の創価学会では、集団的自衛権の行使を可能にした安保関連法により9条改正の必要性はなくなったとの声が大勢だ。かつて、憲法に新たな理念などを加える『加憲』論議の対象に自衛隊明記を含めていた経緯があるが、首相案が公明党発であるかのように言われるのを苦々しく思う党幹部もいる。

山口那津男代表は『国会の憲法審査会で議論を深めていく』と再三指摘。首相案に否定的な野党第1党・立憲民主党を巻き込むことを議論の前提条件に挙げ、ブレーキをかける。

公明党が自民党の独走を止める材料にと期待するのが選挙だ。集票力を見せつけ、政権内での発言力を強めることを狙う。自公が推す候補が勝利した今月の沖縄県名護市長選に、公明党と創価学会が総力戦が臨んだのもその一環。秋には政権が必勝を期す沖縄県知事選が控え、公明党中堅は自民党を牽制する。『名護は自民党への巨大な貸しだ。首相が思い描くような日程では進まないだろう』」。

自民党が憲法9条改正に向けた条文案作りに着手したが、9条1項、2項を維持しての自衛隊明記の首相案で決まるのは必至である。問題は、公明党や支持母体の創価学会の大勢が9条改正に慎重姿勢であることだ。世論の9条改正論議の盛り上がりが必須となる。首相案の支持60%が絶対条件となる。

« »