日刊労働通信社 | 「国政選挙5連勝の結果としての数の力」

「国政選挙5連勝の結果としての数の力」

政治

朝日の社説に「国会最終盤」「自民よまた『数の力』か」が書かれている。

「国会が最終盤にさしかかり、いよいよ自民党が『数の力』をむき出しにしてきた。安倍政権下でさんざん繰り返されてきた会期末の横暴を、これ以上許してはいけない。

与党はきのう、さまざまな疑問や矛盾が指摘されている『カジノ法案』の採決を衆院内閣委員会で強行した。刑法が禁じる賭博を解禁する全251条からなる新規立法で、約20年前に成立した介護保険法(215条)以来の大型法案だ。にもかかわらず、与党は慎重審議を求める野党の反対を押し切った。

さきの新潟県知事選での与党の勝利が、強気の国会運営に拍車をかけた。会期延長を視野に、次々に採決を強行する可能性が高まっている。

なかでも目を疑うのは、与党の党利党略があらわな参院の選挙制度改革の強引さだ。野党との協議を打ち切って法案を国会に提出し、今国会での成立をめざす姿勢を鮮明にした。

憲法改正での合区解消を唱え続けてきた自民党は今月になって、唐突に比例区4、選挙区2の定数6増案をまとめた。個人名得票の多い順に当選する比例区に、各党が優先的に当選させられる特定枠を設けたのは、合区された『島根と鳥取』『徳島と高知』の現職議員を比例区で救済する意図が明白だ。

民主主義の土俵をつくる選挙制度改革では、党派を超えた幅広い合意が求められる。こんなお手盛りの法案が成立すれば、その下で選ばれる参院議員の正統性にも傷がつく。

思い返されるのは、昨年の通常国会での『共謀罪』法の採決強行だ。委員会採決を省略できる『中間報告』という奇策で一方的に委員会審議を打ち切り、本会議で採決した。

安倍政権と自民、公明の与党には、異論に耳を傾け、納得ずくで物事を進める姿勢が決定的に欠落している。

参院の選挙制度改革では、自民党出身の伊達忠一議長の対応も信じがたい。野党に求められた『議長あっせん案』の提示を拒み、自民党の姿勢に同調した。中立的な立場から、熟議と幅広い合意形成を主導すべき議長の重い責任を放棄したも同然だ。

この先、政権が今国会の目玉と位置づける働き方改革法案など、いくつもの法案がヤマ場を迎える。数の力におごらず、討論と熟慮を尽くす。その過程があってこその議会だ。自民党の『採決ありき』の姿勢は、国会の権威を失墜させ続けるだけだ」。

社説の主旨である「自民よまた『数の力』か」に、異論がある。議会制民主主義の要諦は多数決の原理である。与党が衆参で3分の2以上の議席を有しているのだから、全ての法案は、最後は、与党の数の力で押し切ることになる。野党が最後まで抵抗するからである。

問題は、与党が衆参で3分の2以上の議席=数の力を持ったのは、安倍晋三首相が国政選挙で5連勝した結果である。民意が安倍晋三首相に、数の力を与えたのである。民意の支持を受けた与党が、最後は数の力で押し切るのは、議会制民主主義の原則に沿ったものである。野党が何故、民意の支持=数の力を得られないのかを、猛省することが最優先課題となるが。

朝日の「時時刻刻」に「強行国会 カジノでも」「審議18時間のみ、課題山積のまま」が書かれている。           

「怒号が飛び交う中で、カジノ実施法案の採決が15日、衆院内閣委委員会で強行された。ギャンブル依存症が増える懸念もあり、世論の反対も根強い。だが、わずか18時間10分の審議で、指摘された問題点は解消されないままだった。『数の力』を背景に、与党が最終盤国会を突き進め始めた。

『審議続行動機!』『動議!動議!』。衆院内閣委で山際大志郎委員長(自民党)が開会を宣言すると、立憲民主党の森山浩行氏がマイクを通して連呼した。

野党議員が委員長席を取り囲み、動議の提出を訴える中、山際氏は無視してカジノ実施法案の採決を強行。与党理事が手を上げて合図を送ると、与党の委員らが一斉に起立し、法案は可決された。わき起こる拍手――。委員会は、わずか1分で散会した。

2016年12月にも同じ光景があった。衆院内閣委で6時間20分の審議後、今回の法案の前提となるカジノ解禁法の採決が強行された。審議入りから2日という強引な運営だった。

カジノ実施法案は19日にも衆院本会議で可決され、論戦の舞台は衆院に移る。ただ、衆院の審議では問題点が次々と浮上した。

5月31日の参考人質疑。多重債務問題に詳しい新里宏二弁護士がこう訴えた。

『現場で(賭け金を)貸し出すことはあってはならない。ギャンブル依存症に直結する』

法案には、カジノ事業者が利用者に賭け金を貸す制度が盛り込まれている。既存のパチンコや公営ギャンブルに同様の制度はない。

政府は、借金できる対象が訪日外国人や資金力のある日本人に限定される点を強調する。特に日本人の場合は事前に多額の金をカジノ事業者に預けることが条件で、事業者が返済能力を調べて限度額を定める仕組みだ。

政府の有識者会議の委員を務めた美原融・大阪商業大教授は、富裕層ならカジノに現金を持参しないことを指摘し、『制度を認めないとVIPは1人も来られない』と主張する。

とはいえ、富裕層にもギャンブル依存症になるリスクはある。106億円を失った大王製紙の元会長は自著で、カジノで借りた金によって『自転車操業の資金繰りが続き、破滅への一本道はおそろしく加速度を増した』とつづった。

カジノでの借金は、借り入れを年収の3分の1までに制限する貸金業法の『総量規制』も適用されない。政府は『カジノ事業者は貸金業法の事業者ではない』ことを理由としているが、利用者の借入金がかさむことを黙認する仕組みになっており、多重債務を助長させる恐れがある。

野党が15日に開いた合同ヒアリングでは、監督機関である『カジノ管理委員会』の公正性に関する議論が再燃した。

石井啓一国土交通相は8日の審議で、カジノ事業者から事務局職員を採用する可能性に言及。15日のヒアリングでは、中川真内閣審議官が『カジノの電子プログラムなどについて知見を持つ人間がいないといけない』と述べた。

野党は、原子力規制庁の全職員について原子力推進に関わる組織や企業への異動を禁じる『ノーリターンルール』があると指摘。しかし、中川氏はカジノ管理委でこうしたルールを設ける必要性を否定した。

≪働き方・参院選改革も攻防、終盤へ急ぐ与党 野党抗戦≫
今国会で重要法案の採決強行は、働き方改革関連法案に続く2回目。参院の採決でも強行を辞さない構えだ。さらに参院選の『一票の格差』是正や合区対策として定数を6増する公職選挙法改正案は野党との協議を打ち切り、今国会成立に向けて提出に踏み切った。

転機は、与野党対決となった10日投開票の新潟県知事選だ。政府・与党は『負けたらIR(カジノ実施法案)もあきらめて国会を閉じるところだった』(政権幹部)と危機感を募らせていた。知事選の勝利は、強気の国会運営を支える。

ただ、会期を延長しなければ残る重要法案は成立できない。政府・与党は7月10日ごろまで延長する方針だが、野党側が委員長の解任決議案などで抵抗すれば、成立が見通せない法案もある。参院自民党からは『7月いっぱいは必要』との声も出た。

一方、国会を開いている限り、野党から森友・加計問題などの追及が続く。安倍晋三首相は7月中旬から訪欧を予定しており、自民党国会対策委員会幹部は『外遊前に閉じてほしいのが官邸の本音』と明かす。通常国会は会期の延長が1回しかできず、会期末ぎりぎりまで延長幅を見極めることになるという。

これに対し、立憲民主党の辻元清美国対委員長は15日、記者団に『あらゆる手段を使って日本をギャンブルから守る。1日でも1秒でも採決をさせないことの積み重ねだ』と訴えた。

野党各党は参院でも委員長の解任決議案や閣僚に対する問責決議案を次々と出す方針。その都度、法案審議をストップさせるのが狙いだ。野党国対委員長の一人は『世論も盛り上げ、最後には内閣不信任決議案を出す』と語った。

だが、野党内にも温度差がある。衆院内閣委での採決強行の際、野党議員が委員長席に詰め寄る中で国民民主党の議員は自分の席に座ったまま。『野党の典型だった乱闘国会をもうやめにしたい』(泉健太国対委員長)という『野党像』の違いが表れた」。

カジノ実施法案が15日、審議18時間のみで衆院内閣委員会で強行採決されたとしているが、野党が反対ありきだから止むを得ない。カジノは世界120カ国以上で合法化されており、世界で2000件以上が存在し、観光資源の一つとして競争が行われている。そもそも野党の言う「日本をギャンブルから守る」「500万のギャンブル依存症の拡大を許すな」との反対理由に,事実誤認がある。500万人はパチンコ依存症であり、入場制限のあるカジノでは、拡大の余地がないが。

読売の「補助線」に小田尚・調査研究本部客員研究員が「『モリカケ』が終わらない」が書かれている。

国会で森友・加計問題が取り上げられて、1年4か月も経つ。

野党はどう追及してきたか。森友学園への国有地払い下げでの大幅な値引きに安倍首相の口利きはなかったか。新設計画があった小学校の名誉校長を引き受けていた安倍昭恵首相夫人への忖度が財務省になかったのか。

加計学園に獣医学部新設が1校だけ認可されたのは、安倍首相が友人の加計孝太郎理事長に便宜を図ったためではないのか。

この間、首相は全面否定し続けた。事実、首相夫妻が直接かかわった証拠や証言は出てこない。

5月30日の1年半ぶりの党首討論で、立憲民主党の枝野代表が初めに持ち出したのは森友問題だった。質問通告に『国家の基本政策について』としながらである。

『森友学園から<優遇を受けられないか>という打診を受けた安倍昭恵夫人が、夫人付職員の谷査恵子氏を通じて関与し、財務省に問い合わせしている。働きかけにほかならないではないか』

枝野氏は、首相が昨年2月17日の衆院予算委員会で『(森友問題に)私や妻が関係したなら、首相も国会議員も辞める』と答弁したことの脇の甘さを突くが、夫人の地位悪用とまでは言えまい。

首相は『問題の本質は、なぜあの値段で国有地が籠池泰典理事長(当時)側に引き渡されたのか、なぜ小学校として認可されるのかだったはずだ』と反論した。

現に、その『なぜ』は、財務省や検察当局などの調査で解明されつつある。昨年11月、会計検査院は、8億円の値引きの根拠としたゴミの地中混入量が過大計算だった、との見解を示している。

財務省がゴミ撤去費用をあいまいにし、籠池氏側がこわもてで付け入ったために、小学校開設の遅れという訴訟リスクを恐れ、値引きをのまざるを得なかった。これが問題の本質ではないか。

3月に財務省の森友関連の決裁文書の改竄問題が発覚し、廃棄したはずの森友との交渉記録も出てきた。うかがえるのは、組織防衛の論理である。焦点は、首相夫妻の関与の有無から離れていく。

加計問題の本質は、国家戦略特区諮問会議、それに続く文部科学省の大学設置・学校法人審議会で不正があったかどうかだろう。

諮問会議は昨年1月、愛媛県今治市に加計学園の獣医学部設置を認め、民間議員は、『政策判断、既成改革のプロセスには一点の曇りもない』と説明した。昨年11月には林文科相が設置審の答申を尊重し、認可している。

諮問会議に向け、日本獣医師会は当時、『加計排除』のため、与野党へ政治工作を強めていた。加計が首相官邸に働きかけたことが一方的に問題視されている。

そもそも、十数年も門前払いされてきた加計側に対し、『首相案件』の国家戦略特区がある、と首相秘書官らが誘導することが、ひた隠しにするような罪なのか。

なぜ『モリカケ政局』は、なかなか収束しないのだろう。

森友問題は、財務省の公文書改竄・廃棄問題に拡大し、国会に対して財務省が虚偽の方向をしていたことで、麻生副総理兼財務相が批判の矢面に立ったためだ。

改竄・廃棄を主導した佐川宣寿前国税庁長官が5月31日、大阪地検の捜査で不起訴となり、かえって財務省の説明責任を問う声が与野党から上がる。今月4日の財務省の調査報告書では、改竄の動機は解明されなかった。

自民党総裁選絡みの政争に、麻生氏の責任問題も利用される。自民党の竹下総務会長は5日の総務会後、財務省の調査に不十分だとの異論が出たことを踏まえ、岸田政調会長の下で党独自に検証する考えを表明している。

加計問題では、愛媛県が5月に国会に提出した文書に、首相が2015年2月に加計理事長の説明を受け、『新しい獣医大学はいいね』と述べたと記載されていた。加計側は誤った情報を県に伝えたと釈明したが、疑念は残る。

小泉進次郎筆頭副幹事長は、6日の党の会合で『県に嘘をつくのはおかしい』と述べ、国会に調査特別委員会の設置を求めた。

野党に戦略目標がないことも影を落とす。首相の総裁3選阻止なのか、来年の参院選での勝利なのか、的が絞りきれていない。国会でモリカケを追及すると、内閣支持率が低下するのに味をしめ、野党は首相夫妻の関与の程度などを繰り返し質問する。それが楽なのだろう。自らの支持率が上向かないことには、少し目をつむるらしい」。

コラムの主旨である「『モリカケ』が終わらない」に異論がある。大阪地検特捜部の佐川氏を初めとする38人の財務省職員の不起訴処分発表で「もり」問題は終わった。8億円の値引きと文書改ざんに違法性はないとなったからである。安倍晋三首相夫妻の関与なしが立証された。一方「かけ」問題は、安倍晋三首相が友人の加計理事長に便宜を図ったのではないか、であるが、抵抗勢力である日本獣医師会からの石破4条件の閣議決定で無実が立証されている。今年4月獣医学部が開校した時点で終わっている。朝日・野党が終わらせないだけである。

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