日刊労働通信社 | 「改憲の国民投票に賛成52%、反対33%」

「改憲の国民投票に賛成52%、反対33%」

政治

朝日の「多事奏論」に国分高史・編集委員が「れいわ旋風 心からの言葉 だから刺さった」を書いている。

「選挙の街頭演説を聞いて涙を流す人を見るのは珍しい。参院選投開票前日の20日夕、東京郊外の多摩センター駅前であったれいわ新選組の演説でのことだ。

比例区特定枠で立候補した木村英子さんは、生後間もなくの事故が原因で首から下を自由に動かせなくなった。この日の演説では、養護学校を出てから受けた差別を語り、議員になったら障害者と健常者が共に学びあえる教育を実現したいと訴えた。

『障害があるというだけで子供を分けていいはずがありません。もう私のような子供たちを増やしたくないんです』。静かな語り口に、涙ながらに拍手する人がいた。

山本太郎代表が結成したれいわ新選組は、木村さんら重い障害のある2人を当選させた。消費税廃止などの先鋭的な主張が注目されたが、街頭演説を何度か聞いて驚かされたのは、山本代表以外のほぼ無名の候補者たちが発する言葉の強さだった。

元コンビニオーナーは、『強い者が弱い者をいじめる。コンビニはそういう世界。もういい加減、強い者が人間を部品のように扱うのはやめてくれ』。元派遣労働者のシングルマザーは、『若者が政治に無関心なんて絶対にウソ。政治が若者を、貧乏人を排除している。だったら、こっちは手作りの政治をつくるしかない』。

れいわの候補者はみな、自分の生活に根ざした『言いたいこと』を持っていた。それが聴衆の心に刺さった。演説後に何人もが寄付の受け付けに列をなし、財布から千円札を取り出した光景がそれを物語る。

安倍晋三首相は、この選挙でこれまでになく憲法改正を前面に打ち出した。一方、自民党の候補者らはどうだったか。

首相が駆けつけた20日夜の東京・秋葉原。たくさんの日の丸が揺れる中、東京選挙区の候補者は『私たちの国は私たちの手で守る。憲法改正に向けての議論を深め、その思いを貫きたい』と絶叫した。だが、安倍自民の聖地と化した秋葉原の熱気は例外だったと思う。私が見た限りこの候補はそれまでの演説で憲法には触れていないし、選挙序盤に聞いた菅義偉官房長官も憲法のことは話さなかった。別の自民候補は『憲法は票にならないし、一生懸命応援してくれる公明党が嫌がることをわざわざ言うのもはばかれる』と明かす。

れいわ旋風を除けば、全体として冷めた選挙だったことは否めない。48・80%の低投票率の中、自民は単独過半数を失い、改憲勢力も3分の2を割った。それでも首相は、自公で改選議席の過半数という低いハードルを越えたことをもって、『少なくとも議論をすべきだとの国民の審判は下った』と自賛する。

予想された言い方だが、結果を素直に受けとめれば牽強付会に過ぎる。選挙後の朝日新聞の世論調査では、首相に一番力を入れてほしい政策として『憲法改正』を選んだ人はわずかに3%。改憲の訴えが有権者に浸透したとはとても言えない。

とんとん拍子に進むかは別として、自民は国会の憲法審査会で議論を始めようとするだろう。問題はそのやり方だ。

首相は選挙中のNHK番組で、立憲民主党などが求める国民投票の際のテレビCM規制について、『議論していいと思いますよ』と前向きにもとれる発言をした。

その通りに実践し、立憲などを含めた議論の道を模索するのか、それとも国民民主党から賛同者を得て立憲抜きで進めようとするのか。公明の出方も焦点だ。

首相が手元に残した衆院解散カードもにらみつつ、しばらくは各党間で神経戦が続くだろう。ただし、改憲は国会の中の数合わせだけでは実現しない。何のためか、だれのためなのか。多くの人の心に刺さり、納得させるメッセージが発せられない限りは」。

コラムの主旨である「心からの言葉 だから刺さった」に異論がある。

れいわ新選組の比例区得票数は228万票となったが、その45%が党代表の山本太郎氏の個人票99万票である。個人票の2位が蓮池透氏の2万票、3位が大西常樹氏の1万9000票である。政党名で100万票である。立憲民主党が比例区で300万減、共産党が150万減となっており、各々半分がれいわに流れたとの分析となる。氏が言う「令和の候補者の心からの言葉がささったからではない」。

問題は、自公維の改憲勢力が3分の2に必須の85議席に4議席差に迫ったことである。その4議席も無所属などからの参加で充当される見通しであることだ。つまり、今回の参院選は48・80%という史上2番目の低投票率であったが、安倍晋三首相は悲願である改憲勢力3分の2維持を果たし、改憲発議に王手をかけたことになる。事実、日経の26~28日の調査では、改憲の国民投票に賛成が52%と反対33%を大きく上回っている。選挙後の朝日調査で、首相に一番力を入れて欲しい政策として、憲法改正はわずか3%しかないが。16年以降、衆参3分2を改憲勢力で維持し続けているというファクトは重たい。改憲の国民投票に賛成52%がファクトとなり、秋の臨時国会での国民投票法改正成立は必至となるが。

日経に「日韓、安保でも相互不信」「輸出規制・レーダー照射が波及」『協定更新の期限迫る」が書かれている。

「日韓両政府の経済分野での対立が安全保障協力に影響を及ぼし始めている。北朝鮮のミサイル発射など有事に備えて連携する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新期限が8月末に迫るが、韓国側は継続の見直しを示唆している。韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題も尾を引いており、日韓の防衛交流も滞っている。

日本と韓国は地理的な近さから安全保障政策で利害を共有する国同士だ。周囲には核実験や弾道ミサイル発射の脅威がある北朝鮮、軍事力を拡大する中国がある。情報共有を密にするため2016年11月にGSOMIAに署名し1年ごとに更新してきた。いずれかが破棄を事前に申告しない限り、自動延長される。今年の申請期限は8月24日だ。

防衛省幹部は『通常は破棄は考えられない』と指摘するが、雲行きは怪しい。

元徴用工訴訟に端を発した日本による対韓輸出規制の強化で両政府の対立は深まるばかりだ。韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は18日、GSOMIAを巡り『今は維持する立場だが、状況に応じて再検討もあり得る』と語った。

菅義偉官房長官は29日の記者会見で『日韓関係は厳しい状況にあるものの、連携すべき課題はしっかり連携することが重要だ。適切に対応する』と述べ、協定を維持すべきだとの認識を示した。岩屋毅防衛相も『わが方から破棄する考えは全くない。安全保障ではしっかり連携していく』と強調した。

北朝鮮は日韓の関係悪化に便乗し、対南宣伝サイト『わが民族同士』でGSOMIAの破棄を韓国に求めた。対北朝鮮政策で融和路線を取る文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の要求にどう対応するか不透明だ。

日韓の国防当局間には、18年12月に起きたレーダー照射問題も横たわる。韓国海軍の駆逐艦が自衛隊機に、攻撃前の威嚇にあたる火器管制レーダーの照射をした。

日本は現場の音声や映像を公開して抗議したが、韓国はレーダー照射の事実を認めていない。それどころか自衛隊機に過失があると主張している。

岩屋氏と韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は6月、シンガポールで非公式の会談を開いた。約8カ月ぶりの会談で局面打開が期待されたが主張は平行線に終わった。レーダー照射問題が起こってから日韓の防衛交流は中止が相次いでいる。

23日に起きた島根県の竹島(韓国名・独島)でのロシア軍機による領空侵犯も日韓の関係悪化につけ込む狙いが指摘されている。韓国は竹島上空でロシア軍機に警告射撃した。韓国の『領空』に侵入したことを理由に挙げた。日本は竹島を『わが国固有の領土』と主張しており、韓国に抗議した。ロシア軍機には中国軍機も同行しており、中ロで日米韓の防衛体制を試す意図を共有していたとみられる。

トランプ米大統領は一時期、日韓の関係を仲裁する姿勢を見せたが、具体的な行動には至っていない。米政府は過度な介入を避ける意向を示しており、修復の糸口は見通せない。防衛省内では『経済と安保はこれまで別問題として扱ってきた』との声がある。一方『今回は国防当局の関係断絶にまで至る恐れがある』との懸念の声も広がっている」。

期限が8月24日の日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の継続が危ぶまれている。韓国側が継続の見直しを示唆しているからである。北朝鮮・中国の軍事情報を共有するもので準同盟国として必須なものであるのに、である。その継続を拒否することは準同盟国ではないと同義となるが。北朝鮮が執拗にGSOMIAの破棄を文政権に迫っており、日韓・米韓分断との目論見となるが。

東京の「日本の岐路」「7月をつづる」に、金井辰樹・編集局次長が「10・27埼玉秋の陣」を書いている。

「『<一障害者を利用するつもりか>。この言葉に対して、私は言います。上等です。障害者を利用して障害者施策を変えようじゃないか』

参院選の政見放送で、れいわ新選組の山本太郎代表が語った、このセリフが頭から離れない。比例代表の特定枠に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の船後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏を擁立したことに対する批判に、開き直るような口調で反論したのだった。

21日の参院選の結果、船後氏と木村氏の二人は当選した。その後、国会では、二人を受け入れるために急ピッチでバリアフリー化が進む。山本氏による政見放送での約束は、早くも成果を見せつつある。

消費税の廃止、『奨学金チャラ』など山本氏の訴えは、とにかく分かりやすかった。徹底して弱者に光をあてる政策を訴える姿に共感を持った人も多い。もちろん実現性には疑問を投げかける声も根強いが、選挙後の国会の動きを見ていると『実現不可能と決めつけてはいけない』とも思えてくる。

れいわに投票した人は、自分の一票によって二人が当選し、それがきっかけで国会が変わったと実感を持っていることだろう。『安倍一強』と言われ、数の力がものをいう政治が続く中、久しぶりに少数の声が国を動かした。

参院選の結果をあらためて振り返ってみたい。自民、公明の与党は、安定的な政権運営を続けるに十分な議席を得た。しかし、両党に日本維新の会などを加えた改憲勢力は、国会発議に必要な『3分の2』を、4議席下回った。

野党側は32の1人区で統一候補を擁立し、10勝22敗だった。3年前の参院選は11勝21敗だったので前回並みだ。野党が一本化すれば、今回ぐらいの結果は期待できることが証明された形だが、今のままの共闘では、それ以上は見込めないという限界も露呈した。現状では政権交代への道筋は見えてこないかもしれない。

注目の選挙が10月に行われることになりそうだ。大野元裕参院議員が埼玉県知事選に出馬するのに伴う参院埼玉県補選。10月27日に投開票となる見通しだ。自民党は、改憲勢力の議席数を一つ回復すべく総力を挙げて勝ちを目指すだろう。

一方の野党側は、参院選での『限界』を超える新しい野党連携の形を見せることができるだろうか。新しい形とは、れいわを含めた『野党大連合』だ。埼玉県は立憲民主党・枝野幸男代表の地元。れいわは、首都圏で支持が多い。参院選の比例代表では埼玉で13万を超える票を得ている。枝野、山本の両氏を中心とした野党党首たちがそろって街頭に立ち支持を訴えれば、インパクトは大きい。衆院選も視野に入れた新しい野党協力の可能性が見えてくるだろう。

れいわの二人も含む新しい顔触れで構成する国会は、8月1日に召集される。そこから『埼玉秋の陣』に向けた与野党の動きが本格化する」。

10月27日に参院埼玉補選が行われるが、れいわを含めた野党大連合と自公の一騎打ちとなる。先の参院選で32の1人区で野党共闘は10勝22敗となり、3年前の11勝22敗より1議席減となり野党共闘の限界を露呈した。その中にあってれいわは比例全体で220万票をとり、埼玉では13万票を超えている。れいわを含めた野党大連合と自公とは基礎票で拮抗する。次期衆院選の前哨戦となるが。

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