日刊労働通信社 | 東京オリンピックに向けて

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日経に、谷隆徳・編集委員が「原発より都政問われた」を書いている。
 
「『東京を世界一の都市にしたい』。都知事に当選した舛添要一氏が街頭演説で繰り返した言葉である。これは森記念財団の都市戦略研究所が実施している『世界の都市総合力ランキング』を念頭に置いた発言だ。世界の都市のなかで、2013年の東京の順位はロンドン、ニューヨーク、パリに次ぐ4位だった。ロンドンは五輪をバネに12年にトップに躍り出たから、東京も世界一にというわけだろう。
 
確かに、20年の五輪開催は東京の都市力を高める好機だ。羽田空港の機能強化や老朽化したインフラの更新、都市景観の向上などに着実に取り組む必要がある。
今回の選挙では原発の再稼働の是非を最大の争点に据える動きが注目を集めた。しかし、選挙期間中に実施した本紙の世論調査をみると、新知事に望む政策では『医療・福祉』と『景気・雇用』という身近な問題を上げる人が多かった。
再稼働に反対する有権者の間でも、『慎重に政府が結論を出すべきだ』と主張した舛添氏に一定の支持が集まった。
選挙結果も同じだった。東京はエネルギーの最大の消費地とはいえ、都知事選は原発の是非を問うのにふさわしい場ではない。有権者はそんな冷静な判断を下したといえるのではないか。
 
実際、都政はいろいろな課題を抱えている。20年には東京の人口は減少に転じる見通しだ。その一方で、高齢者は約320万人と10年比で60万人近く増える。なかでも、一人暮らしの高齢者が約84万人と山梨県や佐賀県の総人口に匹敵する規模になる。現状では介護施設や人材は圧倒的に足りない。
保育所の待機児童も現在8000人を超す。全国で最も出生率が低い東京が子育てに優しい街にならないと、日本の人口減少は止まらない。
東京には日本経済をけん引する『経済都市』と、住民の暮らしを守る『生活都市』という2つの頭がある。歴代の都知事の政策はその時代の要請を受けて、2つの間で振れてきた。
高齢者医療を無料化した美濃部都政は生活都市としての東京に力点を置いた。臨海副都心開発を進めた鈴木都政は経済都市としての東京改造を優先した。青島都政は生活重視、石原・猪瀬都政は経済重視だったとおおむねいえるだろう。
 
こうしてみると、舛添新知事の大事な役割は生活都市としての東京を再整備し、住民の安心・安全を高めることだ。そのためには企業による保育所や介護施設の運営を後押しするなど、民間の力を最大限に引き出すことがカギになる。五輪に向けた準備を進めながら、五輪の後までにらんで新たな東京を作り上げる。舛添都政に課せられた責務である」。
「東京を世界一の都市にする」には、経済都市と生活都市の両立が不可欠であり、国家瀬略特区の活用が必須となる。アベノリンピクスの結実体として、である
 
編集 持田哲也

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