日刊労働通信社 | 米景気回復と市場のねじれの関係  編集 持田哲也

米景気回復と市場のねじれの関係  編集 持田哲也

コラム 経済

 

日経に「ドル高、景気回復織り込む」「株安、マネー流入減に不安」「米緩和縮小、市場なお『ねじれ』」が書かれている。

「米景気の回復とそれに伴う量的金融緩和の縮小をふまえ、国際金融市場でドル高と株安が綱引きを続けている。米景気が回復に向かえばドルが買われ、株価も上がるはずだが、緩和マネーの流入が細る懸念から株式市場で『ねじれ』が起きている。緩和縮小は2008年のリーマン・ショック後の危機対応が正常化に向かう最初の一歩。米景気の足取りの強さが市場安定のカギを握る。
19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は米景気回復と量的緩和の年内縮小を確認する内容となった。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は『(米景気と雇用の)下方リスクが減退した』と強気な姿勢を見せた。
米住宅着工件数は3月に約5年ぶりに100万戸を突破。個人消費を映す米小売売上高は5月に市場予想を上回る堅調さを示している。歳出削減などの不安材料を抱えながらも、米景気は本格的な回復に向かっている。FOMCは現在は7・6%の失業率も14年末には目標とする6・5%に下がると判断した。
米景気や雇用の回復を前提に、FOMCは緩和縮小に着手するシナリオを描いた。金融危機対応から脱却する道筋をあえて明確に示し、緩和縮小を織り込むよう、市場に促す狙いとみられる。
FOMCの終了後、外国為替市場は米景気回復に素直に反応した。ドル買い・円売りが進み、20日の東京外為市場でドル相場は一時1ドル=98円台前半となり、今月11月以来の円安・ドル高水準を付けた。20日のニューヨーク市場では98円を挟んで取引されている。
米長期金利上昇もドル買いを加速させた。米景気回復に加え、緩和縮小でFRBが国債買い入れを減らすとの観測もあって、米10年物国債利回りが約2年10カ月ぶりの水準に上昇。日米金利差が広がったことが、一段のドル買いを誘った。
外為市場と違い、株式市場では世界的に株安が進んだ。米景気の回復は買い材料だが、それに伴う緩和縮小で株式市場に大量のマネーが流入しなくなるとの警戒が強まったためだ。
まず19日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が206ドル(1・3%)下落。この流れを引き継いだ20日の東京株式市場でも日経平均株価が下落し、終値は前日に比べて230円64銭(1・74%)安い1万3014円58銭となった。
アジア市場では中国景況感指数の悪化も響き、上海総合指数と香港ハンセン指数はともに前日比3%下げて、年初来安値を更新。欧州株も3%前後の下落となった。
20日のダウ平均は続落して始まった。下げ幅は一時、前日比で250ドルを超えた。米景気への期待と不安を映す金融市場。株安という『ねじれ』が解消するかどうかは、カネ余りが支える『金融相場』から、企業業績によって選別が進む『業績相場』に円滑に移行できるかどうかがカギを握る。注目されるのは緩和マネーの流入が減っても崩れない米景気の力強さだ。
世界的な株安のなかで日本株は円安・ドル高を支えに、相対的に堅調さを保った。『中長期では米景気の本格的な回復を背景とするドル高・円安が日本株を支える』(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)とみられる」。
19日、バーナンキ議長は、米景気回復、雇用回復を前提に、緩和縮小の年内着手を宣言した。米国為替市場は、素直に反応し、ドル買い、円売りが一挙に進み、21日には、1ドル=97円台後半で取り引きされている。米長期金利上昇によるに日米金利差の拡大が、ドル高・円安を加速させている。
問題は、株式市場である。米景気回復は買い材料なのに、緩和縮小による緩和マネ-の流入が細くなるとの懸念の売り材料が強く、「株安」とねじれているのである。いつ、ねじれが解消するのか、である。そのねじれ解消を先行させたのが、21日の東京株式市場である。日経平均株価が反発し、終値で、前日比215円55銭高の1万3230円13銭となった、「円安・株高」基調に転じたのである。それを受けて、NY市場も、ねじれを解消した「ドル高・株高」に転じるのは時間の問題でなるが。
「FRBのバーナンキ議長が19日に量的緩和策縮小のスケジュールを示したことを受け、外国為替市場で円安が進んだ。株式市場では、株安の流れが米国から日本、アジア、そして米国と世界を一周した。米国の長期金利上昇とそれに伴う米国株の下落によるものだ。市場関係者はバーナンキ氏の発言で米景気回復への道筋が示されたことで、中長期的には日本株にとって追い風になるとみる。
米債券市場では19日、FRBの債券購入が縮小するとの懸念から長期金利が高騰し、約1年3カ月ぶりの高水準となる2・36%をつけた。都内の野村証券のトレーディングフロアには20日午前5時ごろにはトレーダーが集まった。『予想以上に踏み込んだ発言』(外国為替部の大柿敦郎部長)によりドル高が進むとみて、円や新興国通貨を売り、ドルを買う注文を出し続けた。
日米の金利差が拡大するとの観測から円安ドル高の動きが加速し、20日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=98円台と、約1週間ぶりの水準。続くニューヨーク市場でも1ドル=97円台後半で取引された。
一方、20日の東京株式市場で日経平均株価は大幅反落し、終値は前日比230円64銭安の1万3014円58銭。アジア市場でも、上海が2・8%安となるなど軒並み下げた。さらに、19日に大幅下落したニューヨーク市場のダウ工業株30種平均は20日も続落して取引が始まった。
FRBはこれまで、労働市場の見通しが大幅に改善されれば、緩和策を縮小するとしてきた。このため、バーナンキ氏が数カ月以内の縮小を示唆した5月22日以来、市場では不安定な動きが続いた。同23日の平均株価は1143円安と急落し、その後も乱高下が目立っていた。22日の終値から約1カ月間で2600円超も下がった。
みずほコーポレート銀行国際為替部の兼平修一次長は『米緩和縮小をめぐる思惑に振り回される相場が続いていたが、落ち着いてくる可能性がある』と指摘。バーナンキ発言を契機に不安定な動きが変わる潮目になるとの見方が出ている。
20日の国債市場では、長期金利の指標である新発10年度の終値利回りが前日より0・025%高い0・835%。『発言の影響は限定的』(大手証券)との声が大勢だったが、中長期的には米金利高につられ、日本の金利も上昇する可能性が指摘されている」。
市場関係者の言う「中長期的には日本株へ追い風」は、正論である。日米の長期金利差の拡大から、円安・ドル高の動きが加速し、円安・株高基調に転じるからである。事実21日、円相場は、1ドル=97円台後半の円安水準に、日経平均株価の終値は、前日比215円55銭高の1万3230円13銭だった。

 

 

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