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理解得られる先送り

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朝日の社説に「衆院選挙制度」「理解得られぬ先送り」が書かれている。
「自民党が、衆院の選挙制度改革の案をまとめた。最高裁が国会に求めた一票の格差是正と、2大政党の党首が約束した定数削減。この2つを主な論点に政党間協議が再開されるが、自民党案は定数配分の見直しと削減を2020年の大規模国勢調査以降に先送りする内容だ。他の政党や有権者の理解を得られるとは思えない。
格差是正と定数削減は、政党間での協議がまとまらずに、有識者による調査会に検討が委ねられた経緯がある。

 

調査会は先月、10年ごとの大規模国勢調査をもとに、人口比に基づく『アダムズ方式』で都道府県単位の定数を配分▽大規模調査の中間年の簡易国勢調査で格差2倍以上の選挙区が生じたら、都道府県内の選挙区割りの見直しを行うとの是正策を答申。選挙区6、比例区4の定数削減も求めた。
安倍首相はこれまで『答申を尊重する』と国会などで繰り返してきた。一方、自民党執行部は当初、都道府県内の区割り見直しによって格差を2倍未満に抑えることにとどめる案を持っていた。ただ、それでは自らの答弁との整合性がとれないとの首相からの指示を受け、軌道修正した。

 

党執行部がきのう示した案には、都道府県別の定数については『20年の大規模国勢調査の際に、調査会の答申に沿って、必要な見直し、削減を行う』と書いてある。だが、具体的な数字や中身には触れていない。
定数削減については『10削減を党方針としたい』と口頭で説明。格差是正にアダムズ方式を用いるかどうかは『今後の検討』と言葉を濁している。
民主党政権の野田首相と安倍氏が、消費税率引き上げに伴う『身を切る改革』として定数削減を約束したのは12年11月だ。その後、格差是正の緊急措置として定数を5減らしたとはいえ、公党間の合意の実行をさらに5年あまり先送りすることは誠実な態度ではあるまい。
さらに問題なのは格差是正だ。定数の配分方式をはっきりさせないままの先送りは、最高裁が不平等の原因だとして『速やかな撤廃』を求めた1人別枠方式を実質的に存続させることになりかねない。

 

アダムズ方式が完全かどうかは別にしても、現実的な案として答申された以上、速やかに実施すべきなのは当然のことだ。圧倒的な議席数をもつ自民党の責任は大きい。政党間協議ではこれらの疑問について、国民が納得できる明確な結論を出さねばならない」。
社説の主旨である「理解得られぬ先送り」に、異論がある。
安倍晋三首相は、「最終的に私が決める」「答申が出た以上、尊重する」と国会答弁で繰り返し明言していたが、その安倍首相が、自民党案を「第3者機関の答申を守っていくことが、基本的に決定された」として、了承したからである。最高裁が国会に求めた1票格差是正と2大政党の党首が約束した定数削減を2020年の大規模国勢調査以降に先送りするものである。
問題は、その間に、衆院選が必ず実施されることである。最高裁が3回「違憲状態」の判決を下した選挙制度によってである。最高裁は、その衆院選を「違憲」と判決し得るのか、である。そこで、安倍晋三首相は賭けに出たのである。7月の衆参同日選で、改憲勢力で衆参で3分の2以上の議席を確保し、憲法改正の発議をし、来年国民投票で過半数を得て、憲法改正を為すために、である。その時間的猶予を確保するための先送りだから、「違憲」にはならないとの決断をしたのである。国民が理解し、納得し得る先送りであると。

 

産経の「阿比留瑠比の極言御免」に、「民主の社民化が止まらない」が書かれている。
「『北朝鮮の核・ミサイルに絡む国際共同歩調が模索されている局面で、民主党も、このような政策対応を打ち出すというのか。この論理構成が、どうにも理解できない』
東洋学園大教授(国際政治学)で、本紙正論メンバーでもある櫻田淳氏が、8日付の自身のフェイスブックでこう嘆いていた。民主党が維新、共産、社民、生活各党の計5党で、安全保障関連法の廃止法案を来週中にも共同提出する方針であることへのコメントだ。
折しも、北朝鮮の自称・水爆実験成功と、それに続く長距離弾道ミサイル発射によって国民の生命・自由・財産など基本的権利が脅かされていることが誰の目にも明らかになったタイミングである。
まさに日米韓3カ国が安保協力を強化すべき時に、わざわざ日米連携にひびを入れるような話を持ち出すとは、民主党はどういう政治センス、国際認識をしているのかとあきれた。
 
<自ら野党化志向>
『(共産、社民、生活の)3党から(共同提出を)強く要請を受けているので調整をしている』
民主党の枝野幸男幹事長は8日、国会内で記者団にこう語った。共産党の山下芳生書記局長も同日の記者会見で、野党共闘への影響について『一歩前進になるのではないか』と期待感を示していたが、安全保障問題を政局の道具に使われては国民はたまらない。
『民主党はどんどん社民党化している。(一応原則のある)共産党以下だ』
政府高官がこう突き放す通り、民主党は政権再奪取を目指すどころか万年野党化を自ら志向しているとしか思えない。
何せ平成27年版防衛白書によると、北朝鮮はただでさえ短・中・長距離弾道ミサイルを合わせて700基から千基を保有しているとみられるのである。中国も短距離弾道ミサイルだけで1200基を持ち、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む南西諸島の一部も射程に入れている。
にもかかわらず、これらの野党は、北朝鮮の脅威そのものよりも、政府・与党が脅威を安保関連法の必要性と結びつけることばかり警戒し、牽制しているようにみえる。8日付毎日新聞朝刊によると、枝野氏は7日、仙台市での会合でこう訴えたのだという。
『近くにおかしな国があるからこそ個別的自衛権をしっかりやるべきだ。首相周辺は悪用して集団的自衛権や憲法改正が必要という話にしかねない。だまされてはいけない』
日米同盟を毀損するようなことをやって、どうやって『おかしな国』から国民の安全を守るというのか。喜ぶのは北朝鮮や中国だけだろう。その北朝鮮をめぐっては、社民党も又市征治幹事長名で7日に『ロケットの発射』と題する談話を発表し、こう主張した。
『いたずらに<北朝鮮の脅威>をあおり、ミサイル防衛システムの整備・強化や<南西諸島防衛>名目の自衛隊の沖縄展開に利用することは、北東アジアの緊張関係をかえって増幅しかねない』
 

<「ダチョウの平和」>
だが、北朝鮮の脅威は別に『あおる』までもなく今そこに厳然としてある。社民党が、砂に頭を突っ込んで身に迫る危機を見ないようにして安心する『ダチョウの平和』に安住するのは勝手だが、国民を道連れにしようとしないでほしい。民主党の保守系議員は、ここで執行部の社民党化路線に歯止めをかけられないようでは、存在価値が疑われても仕方あるまい」。
「民主党はどんどん社民党化している。(一応原則のある}共産党以下だ」は、正鵠を突いている。左傾化している民主党と共産党との共闘は必然である。共産党主導の「国共合作」を加速するために、安倍晋三首相は、憲法9条2項改正の是非を衆参同日選の争点にすべきである。
 
産経に「民主『言論弾圧』レッテル貼り」「総務相の電波停止発言で論戦」が
書かれている。
「衆院予算委員会は10日、政治的公平性を求めた放送法違反を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性に触れた高市早苗総務相の発言をめぐり、民主党と安倍晋三首相が論戦を繰り広げた。民主党は首相が報道への圧力を強めているとのイメージづくりを展開したが、首相は『一般論だ』とかわした。
民主党の大串博志氏は『電波停止を否定しないのか』と首相に迫った。首相は『高市氏は法令として(電波停止が)存在することも含めて答えた』『従来通りの一般論を答えた』と述べ、高市氏を擁護した。
さらに、放送局の政治的公平性を判断する根拠をめぐって議論は白熱した。大串氏は、高市氏が平成27年12月に視聴者団体に提出した回答で、極端な場合は1つの番組でも政治的公平性が判断されるとの考えを示したとして、『行き過ぎだ』と追求した。
首相は『放送局の番組全体を見て判断する』と繰り返し答弁。高市氏の見解との食い違いを指摘されたが、『議論を深めたいなら高市氏を予算委に呼べばいい』と述べるにとどめた。
大串氏は『安倍政権になって1つの番組に口をはさもうとする態度が非常に多い』とも訴えた。これには首相も『一般論として答えたことに、恣意的に気にくわない番組に適用するとのイメージを広げるのは、(安全保障関連法に関する)<徴兵制が始まる><戦争法案>と同じ手法だ』と反論した。
首相は『政府や自民党が強圧的に言論を弾圧しようとしているイメージを付けようとしているが、間違っている。与党こそ言論の自由を大切にしている』とも強調し、民主党のレッテル貼りを批判した。
 

安倍政権の姿勢を追及した民主党だが、報道への圧力は民主党政権でこそ顕在化していた。23年7月、松本龍復興相は村井嘉浩宮城県知事との面会時のやり取りについて『書いた社は終わりだ』とマスコミを恫喝。同年9月には鉢呂吉雄経済産業相の辞任に関する報道について輿石東幹事長が民放関係者を聴取し、党代議士会で『マスコミ対応を含め情報管理に徹底していきたい』と宣言した。
菅直人首相は就任記者会見で『ややもすれば取材を受けることによって政権が行き詰まる』と取材を忌避する姿勢をみせていた。こうした過去を持つ民主党の追及がどこまで支持されるかは不透明だ」。
民主党が高市総務相の発言を巡り、「言論弾圧」のレッテル貼りに躍起となっているが、またもや「ブーメラン」となる。民主党政権3年間の「言論弾圧」の事実がむし返されるからである。「言論弾圧」の元祖は民主党政権であるからだ。

 

編集 持田哲也

憲法9条改正を

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産経の「年のはじめに」に、石井聡・論説委員長が「再生に向かう力の結集を」書いている。
「国の建て直しを加速する年を迎えた。牽引役である安倍晋三首相はすでに長期政権への道を踏み出し、夏の衆参同日選も視野に入る。
日本の底力を発揮できる環境を整え、懸案解決にあたってほしい。意を用いてもらいたいのは、希望を持って未来を見つめられるような方向へ、国民の気持ちを大きくまとめ上げる
ことだ。

 

もとより、首相一人に難題を押しつけて事足れり、とはならない。今年は『18歳選挙権』の導入に伴い、有権者が約240万人増えることに注目したい。
<主権者の責任より重く>

国民一人一人が日本の未来像を描き、ふさわしい社会や政治の針路を見定める。民主主義の中で主権者が担う責任は重みを増すだろう。
権利を行使する先に再生の看板も掲げよう。それを阻む要因を取り除くには強い力が必要だからだ。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効に向けて、規制緩和や保護政策の転換が欠かせない。壁は分厚く簡単には崩れない。
選挙を経て、自民党の『1強多弱』が固定化、強化されればよいといった話ではない。与党の改革意欲がしぼめば、勢力拡大はかえって停滞や後退につながりかねない。
真に日本の繁栄と平和を守る政治を実現する体制、政治風土をどう作り上げていくか。再編成を迫られる野党も含めた大きな課題である。
安全保障関連法の審議で反対に回った野党は、『安保法廃止』の一点での共闘を模索している。
軍事力を背景に東シナ海や南シナ海での行動を活発化させる中国の台頭など、日本の周辺環境の悪化にどう対処するかは国家的課題だ。にもかかわらず、共通の土俵に立ち、真っ向から論じ合えない。それが昨年の国会の姿だった。
慰安婦問題をめぐる日韓合意は、歴史の歪曲に粘り強く事実で反論していく政権の方針が揺らいだ印象を与えた。日本の名誉を守ることがいかに大事かを忘れてはならない。歴史戦への戦略を再構築すべきだ。
『力の信奉者』の本性をむき出しにする中国、ロシアは、軍事以外の分野でも影響力の拡大を急いでいる。国際金融や中東問題をめぐる欧米分断の懸念は小さくない。
伊勢志摩サミットの議長を務める安倍首相の最大の使命は、国際秩序の漂流を食い止めることにあるともいえよう。自由と民主主義の価値観を共有する国々との協力を強める立場を改めて鮮明に示してほしい。
そのためにも、基軸となる日米同盟をより深化させることが重要だ。集団的自衛権の限定行使容認や日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定によって、抑止力強化の枠組みは整った。これにどう魂を吹き込むかの段階を迎えている。
昨年、就任したジョン・ドーラン在日米軍司令官は、自らの人生で日米の絆を体現している。
三沢基地(青森県)勤務だった24年前、F16戦闘機を操縦して米国に向かう途中、他の輸送機との衝突で太平洋上に転落した。5時間漂流し、意識が薄れかかったところで1000キロ以上離れた厚木航空基地(神奈川県)から飛来した海上自衛隊の救難飛行艇US-1Aに救われた。波高く、燃料切れの恐れもある命がけの救出だった。
<日米に空白をつくるな>
横田基地での就任式には飛行艇のクルーも招かれた。『強固な日米同盟は困難を絶好の機会に変える』という新司令官の言葉に期待したい。問題はその具体化である。
米国の『航行の自由』作戦に日本はどう関与すべきかという課題がある。横須賀生まれのハリス米太平洋軍司令官と河野克俊統合幕僚長は緊密な関係にある。この問題を話し合う最良のパートナーだろう。
むろん、絆を強化する上で日米首脳の役割は大きい。大統領選の年だからこそ、同盟に空白を生じさせてはならない。リオ五輪を控え、2020年の東京開催準備にも拍車がかかる。被災地復興とともに、国や国民の力を再結集する試金石としたい」。
「再生に向かう力の結集を」は、正論である。
今年5月、伊勢志摩サミットの議長を務める安倍首相に最大の使命は、国際秩序の漂流を食い止めることであり、そのためにも基軸となる日米同盟を深化させることが重要となる。日米安保法制による抑止力強化に、どう魂を吹き込むか、である。憲法9条改正が必須となる。安倍晋三首相は、7月の衆参同日選で、日本の再生と同義である憲法9条改正に国民の力を再結集し、衆参で9条改憲勢力で3分の2以上の議席を獲得する歴史的責務がある。
問題は、自民党の党是である憲法改正の核心が9条改正であるのに、自民党は、緊急事態条項の創設から始めようとしていることである。昨年の安保法制成立の際の「憲法違反」キャンペーンに懲りたからであり、公明党も9条改正には反対だからである。日本国を再生するには、国民を9条改正で再結集するのがベストであり、安倍晋三首相が、衆参で9条改憲勢力で3分の2以上を確保するラストチャンスであるから、9条改正と17年4月からの消費再増税凍結の是非を争点にして、衆参同日選を断行すべきとなる。公明党抜きで衆参で3分の2以上を確保できるかが、焦点となる。
日経に「今年の展望、経団連会長に聞く」「名目3%成長、必ず達成」「政権と連携『当然』」が載っている。
「経団連の榊原定征会長(72)は日本経済新聞などとの新春インタビューで、2017年4月の消費税率10%への引き上げを控え、名目3%の経済成長を『是が非でも達成しなければいけない』と述べた。経済界と政権との連携は欠かせないと強調。賃上げや設備投資を積極的に促していく考えも示した。
――今年の日本経済の見通しをどう見るか。『15年のキーワードは干支の羊にちなんで<翔>とした。日本経済がとび立つ年にと願いを込めたが、羊に羽がはえてもあまり高くは飛べなかった。16年は『実』。重要課題を着実に実行し、経済再生を確実に実現する年にしたい』
――16年秋までに政府は消費税率10%上げを最終判断する見通しだ。『消費増税も絶対に実行しなければいけない。安倍晋三首相もその考えだと思う。8%に引き上げた時、駆け込み需要と反動減という苦い経験をした。住宅、自動車、家電などでとありとあらゆる消費喚起が必要で、万全の準備が欠かせない』『増税を乗り越えられる経済の地力をつける必要がある。政府は実質1・7%、名目3・1%という成長率目標を掲げる。高い低いの論評でなく、是が非でも達成しなければいけない。十分に達成可能だ。懸念が強い中国経済も6・5%以上の安定成長を維持するはずで、大きなリスク要因になると思っていない』
――安倍政権3年間の評価は。『民主党政権での経験をよく思い出してほしい。当時、日本経済は停滞し、自信も将来への見通しもない世界だった。安倍政権3年で株価は2万円近くまで上昇し、雇用も改善した。環太平洋経済連携協定(TPP)も大筋合意に導いた。11兆円の経済効果が見込まれるTPPは日本にとって究極の成長戦略だ』
――政権と「近すぎる」との指摘もある。『極めて不本意だ。国内総生産(GDP)が1円も増えない時代が20年続き、墜落しようとする飛行機(のような日本経済)を安倍機長が立て直そうとしている。それを批評している場合か。政府から賃上げや設備投資の要請があった場合、無責任にできない、できるはずないと伝えることが、本当に国のためになるのか。榊原は首相に文句を言ったと褒めるのか。今は平時ではなく戦時だ。当然、政治と経済が一緒になって危機から立ち直る時期だ』
――春季労使交渉の行方は。『15年はベースアップを意識した交渉の指針に仕立てたが、今年の指針はあえてしていない。過去2年、悠々とベアができた企業とそうでない企業がある。あくまでベアや定期昇給、賞与、各種手当を含めた年収ベースで、15年を上回る賃上げを期待したい』」。
「名目3%成長、実質1・7%」の目標を達成するには、17年4月らの消費再増税凍結が必須となる。15年度が実質1・2%の成長にとどまったのは、14年4月からの消費増税故だからである。16年7月衆参同日選必至となる。
日経の「政治新潮流2016」に、「18歳選挙権」「民主主義、変化の風」
「『若者VS高齢者』超え改革へ」が書かれている。
「2016年は夏の参院選から選挙権が18歳に広がり、政治に新しい潮流が生まれそうだ。アベノミクスで芽生えた政官業の新たな動きや日本外交の行方などを含め、4年目を迎えた安倍政権の課題を展望する。
15年12月21日、都内の明治学院大学。自民党で若者対策を担当する牧原秀樹青年局長は法学部の川上和久教授のゼミで3、4年生と向き合った。

<なぜ自分たちが>

『自分たちがなぜ大きな負担をしなければならないのか。シルバー民主主義に不満がある』。学生からは高齢者に偏りがちな国の予算配分に不満が漏れた。牧原氏は『財政で高齢者の社会保障が圧倒的な状況を是正しなければならない。そのためい若い人の声が必要だ』と力を込めた。
その朝、牧原氏は選挙区があるさいたま市のJR北与野駅前で街頭に立っていた。通勤通学客へのあいさつの最中、70歳代の高齢者から声がかかった。『お年寄りは困ってるの。3万円早くちょうだい。そしたら応援するから』
『3万円』とは15年度補正予算案に盛り込んだ低所得の高齢者への給付金のこと。『ばらまき』との批判が与党にもあり、17日の党会合では小泉進次郎氏が『若い有権者がどんどん入ってくる。高齢者に耳に痛いことも言わなければいけない』とやり玉に挙げた。
若者に期待する牧原氏だが、14年衆院選でさいたま市の投票率は、20代は36%にとどまり、70歳以上は63%。給付金を求める高齢者にも『お年寄りのことは大事に思っています』と応じた。安倍政権は一億総活躍社会を掲げるものの、高齢者から若者への予算シフトの壁は厚い。
16年度予算案をみると政策に使う一般歳出57兆円の内訳は年金、医療がそれぞれ11兆円、介護が3兆円でこれらで4割を占める。若者向けといえる少子化対策は2%ほど増えたが2兆円。文教費は4兆円台で少子化で減少傾向にある。
<選挙がトラウマ>
政治が高齢者に弱い一例が医療費の窓口負担だ。小泉政権は70~74歳の窓口負担を08年から1割を2割に引き上げると決めた。だが07年参院選で安倍政権が『消えた年金問題』で大敗。高齢者の反乱は与野党にトラウマとなり、民主党政権も手をつけられなかった。
引き上げは第2次安倍政権が衆参『ねじれ』を解消した後の14年。この間、1割に据え置くため毎年2000億円が投じられた。70~74歳は780万人で20~24歳の600万人より3割多い。施策一つにも高齢者向けは予算が膨らみがちで、1人3万円の給付金は3600億円かかる。
子供の貧困対策を重視する民主党も支持者の意識とのギャップに悩む。12日、次の内閣で子ども政策を担当する阿部知子氏が地元の神奈川県藤沢市で開いた支援者会合。集まった30人は50代以上が大半で20代はゼロ。質問も介護、医療が多く、子供の貧困に触れても反応は『かわいそうね』。『政策論まで話が進まない』と阿部氏はこぼす。
世代間対立は避けられないのか。高齢者福祉を重視する政党と、若者教育を唱える政党のどちらを支持するか――。14日、こんな授業をした新潟県の六日町高校では『若者に介護の専門教育をすれば高齢者も助かる』『高齢者の雇用は技術の伝承につながる』といった意見が出た。指導した関雅夫弁護士は『若者と高齢者は対立構造でなく、補完関係にあると生徒は意識している』と話す。
冷めた若者を振り向かせるのも課題だ。『年金に頼る高齢者に政治が配慮するのは当然だ。今の若者はあまりお金がなくても結構幸せなのに、なぜ政治に関心を持たせようとするのか』。23日、民主党が東京・渋谷で10代向けに開いたイベントでこんな声が挙がった。枝野幸男幹事長は『政治は明日を決める。消費税30%になったら今の幸せを守るのは大変だ』としたうえでこう訴えた。『年配の方でも自分の年金よりも孫のことを考えて投票する方は相当いる。年金制度は現役世代のためでもある。世代間対立にしてはいけない』子や孫への教育資金贈与の非課税制度は、利用が十数万件、一兆円を超え定着しつつある。こうした思いを社会全体に広げ、世代間の対話を促して社会保障改革を進めるきっ賭けにできるのか。70年ぶりの選挙権拡大を新しい政治につなげる知恵が求められている」。
7月の衆参同日選から、18~19歳の約240万人が新たに参加するが、投票率が問題となる。14年の衆院選でさいたま市の20代の投票率は36%にとどまり、70歳以上は63%もあったからだ。今回も同じく投票率40%以下であれば、100万人未満となり、大勢に影響なしとなる。若年層の投票率の底上げが喫緊の課題となる。

 

編集 持田哲也

テロに屈するな

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朝日の社説に「パリ同時テロ」「冷静で着実な対処こそ」が書かれている。
「同時多発テロがおきたフランスのパリは、いまも緊張状態にある。関係先とされる現場では当局による銃撃戦もおきている。平穏な市民生活が一日も早く戻るよう望みたい。
オランド大統領には、当面の治安を回復し、国民の動揺をやわらげる責任がある。同時に、大局的にみてテロの土壌をなくすには何が必要か、冷静で着実な施策を考えてほしい。
オランド氏は、自国が『戦争状態にある』と宣言した。呼応して、米国とロシアはシリア空爆での連携を確認した。欧州連合では、相互防衛条項を発動することになった。
テロに怒り、高ぶる世論があるのは仕方あるまい。だが一方で、暴力の連鎖を抑えるうえで有用なのは、力に傾斜した言動ではなく、落ち着いた分析と対応である。
『対テロ戦』をかかげて軍事偏重の戦略にひた走った米国のあと追いになってはならない。イラク戦争が、今回の事件を企てたとされる過激派『イスラム国』(IS)の台頭をまねいた教訓を思い起こすべきだ。
テロ対策は、組織網を割り出し、資金源や武器ルートを断つ警察、諜報、金融などの地道な総合力を注ぐ取り組みだ。病根をなくすには、不平等や差別、貧困など、社会のひずみに目を向ける必要がある。軍事力で破壊思想は撲滅できない。
とりわけ今回のテロで直視すべき事実は、容疑者の大半は、地元のフランス人とベルギー人だったことだ。欧州の足元の社会のどこに、彼らを突き動かす要素があったのか、見つめ直す営みが必要だろう。
オランド政権は、治安対策を強める憲法改正や、危険思想をもつイスラム礼拝所の閉鎖、外国人の国外追放手続きの簡素化などを提案している。
それらは本当に自由主義社会を守ることにつながるのか、深い思慮を要する。異分子を排除するのではなく、疎外感を抱く国民を包含するにはどうすべきか。人権大国として、移民社会の現状や国民の同化政策をめぐり、開かれた議論を進めることも肝要だろう。
冷静な対処はむろん、フランスだけでなく、米国、ロシアを含む国際社会にも求められる。事件の背後にいるISに対し、有志連合を主導する米国は空爆を拡大し、ロシアもISの拠点都市などを爆撃した。巻き添えになる人びとの被害は、改めて憎悪の連鎖を広げる。
テロを機に国際社会が最も連携すべき目標は、シリアの停戦を含む中東和平づくりにある」。
社説の主旨である「冷静で着実な対処こそ」に異論がある。
「国際社会の総力あげて対テロ戦争を」が、正論だからである。テロ国家「イスラム国」には対話は通じないのであり、憎悪による問答無用の暴力あるのみである。対テロ戦争に勝つには。テロ国家「イスラム国」壊滅しかないのである。国際社会の総力をあげてである。空爆のみでは限界であり、地上軍派遣が必須となる。世界の警察官であるべき米国のオバマ大統領の決断如何である。
問題は、米国民が「テロに屈するな」として「イラク戦争の二の舞になるな」を超克して、地上軍派遣を支持するか、である。対テロ戦争の核心は、心理戦なのである。社説の主旨である「冷静で着実な対処こそ」はまさに「テロに屈している」が。

産経の「正論」に田久保忠衛・杏林大名誉教授が「国際社会の総力あげ対テロ戦を」書いている。
「狼老年の戯言と笑われても悲観的にならざるを得ない。2001年9月11日の米同時多発テロの際における犯人はアルカーイダで、私には一つの点に見えた。首謀者のウサマ・ビンラーディンは11年に米国に殺害されたが、アルカーイダその他類似のイスラム勢力の犯行は続き、点はさながら線を形成した。その結果、シリアとイラクにまたがるイスラム国(IS)と称する、国家ではないテロリスト集団が、日本とほぼ同じ大きさで面を実効支配するに至った。
<IS「包囲網」の効果>
さらに、この面から正式なビザ(査証)を持って自国とシリアを往復する者、移民や難民に紛れ込む者が、居住国を狙ういわゆるホームグロウン・テロという新しい事態を生んでいる。大量破壊兵器である核・化学・生物兵器の一つでも彼らの手に渡った場合、世界全体はパニックに陥る。危険は近づいているように思われる。
オランド仏大統領は、パリの惨劇に『これは戦争行為だ』と叫び、ISの本拠地と目されているシリアのラッカにすぐ猛爆撃を加えている。アラブ首長国連邦とヨルダンにある基地から飛び立ったフランスの爆撃機は11月15日だけで指令センター、軍事訓練施設、武器庫に目標を絞って20個の爆弾を投下したとの発表を読んだが、どうもピンと来ない。

パリの憎むべきテロリストはフランスの軍事基地、兵舎、官庁、警察署に攻撃を加えたのではなく、警備の少ない一般庶民のいわゆるソフトターゲットに狙いをつけているのだ。司令塔はラッカにあるにしても、ISの犯行声明は、いったんサポーターが手にしたものをツイッターで流しているようだから、所在は正確につかめていないのではないか。
特段に新しいことではないが、ISの勢力拡大の様子が一目でわかる世界地図が11月16日付ニューヨーク・タイムズ紙国際版に載っている。米民間のシンクタンクや国務省、法務省の資料をもとに戦争研究所が作成したもので、シリア、イラク、サウジアラビア、エジプト、リビア、アルジェリア、アフガニスタン、パキスタンの一部を実効支配地域と見なし、欧州、米国、豪州ではいくつもの箇所のほか、バングラデシュなどの国々が直接、間接的に攻撃されたところとして記されている。
インテリジェンスの世界はわれわれの目の届く範囲外なので断定的な言い方は避けたいが、英国が米仏露に加わってIS『包囲網』を形成しようとしているなどの解説を読んでも、その効果は上がるかどうか。
<「天下大乱」の兆しも>
国際政治に国際テロリストという、国家ではない歴史上初めての主役が加わった場合、国家関係だけの分析では無力だ。好例は、米欧諸国とロシアのシリア・アサド政権をめぐる対立だ。ロシアによるIS攻撃は、アサド政権存続を企図したものだと疑いを深めていた米欧諸国は、今夏のパリ同時多発テロを契機にロシアとの話し合いの場を増やし、仏露関係は『同盟』に早変わりした。
国家ではない『共通の敵』の登場による合従連衡であろうか。事件直後にトルコで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議の議題はもっぱらテロ事件であった。南シナ海もウクライナも影が薄れた。欧州連合域内で自由に人間の通過を求めるシェンゲン協定の見直しを求める声が強まっている。テロ犯人、武器が自由に動く社会でいいのかとの反省だ。

移民に反対するフランスのルベン国民戦線(FN)党首ら欧州右翼の声は高まっても低くなることはない。難民に直接関係のない米国のライアン下院議長まで『難民を受け入れるとの思いやりをテロリストに利用させるわけにはいかぬ』と述べ始めた。まさに『天下大乱』の兆しではないか。
<戦後日本の非力が鮮明に>
世界の安全保障に危険が生じたときにわれわれは自動的に米国の動きに目を向けるが、オバマ大統領に痛棒を加えたのはウォールストリート・ジャーナル紙の社説であった。『目を覚ましなさい。大統領閣下』と題するこの社説は事件の2日前にオバマ大統領がABC放送とのインタビューで、ISを『われわれは封じ込めた』と語ったのを徹底的にとがめた。
さらに『オバマはタイミングを誤ったという人もいるが、実際はもっと悪い。発言は自分でそう信じているのか、あるいは少なくとも米国人にそのように考えさせようとしているのかのいずれかだ』と断じた。オバマ政権の対中東政策失敗の真因を突いている。
いつもながら、テレビの解説を目にしてうんざりした。中東専門家による、パリの惨劇は米仏などのIS空爆が原因との説明だ。テロには妥協の余地は全くない。9・11事件に見られたように北大西洋条約機構(NATO)は集団的自衛権の行使に踏み切り、米国を引きずり込まないと事態はさらに深刻になる。国際社会の総力による対決だ。それにつけても、戦後続いている日本の非力はますます鮮明になってきた」。
氏が言う「国際社会の総力あげて対テロ戦を」は、正論である。問題は、日本が「総力挙げて対テロ戦」をとの覚悟を持っているのか、である。「安保法案は戦争法案だ」との「平和という名の戦争」に国民の過半数が騙されているからである。対テロ戦争に、安保法制と緊急事態条項創設を加える憲法改正が必須なのに、である。

日経に太田康彦・編集委員が「APEC首脳会議閉幕」「『法治』は『人治』
に勝てるか」を書いている。
「今年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地がフィリピンだったのは、稀有な歴史のめぐり合わせかもしれない。東アジア全体の安定を揺るがしかねない最大の震源地がフィリピンだからだ。
南シナ海をめぐる米中対立の最前線はここにある。中国が人工島の建設を進める南沙諸島(スプラトリー諸島)は目と鼻の先。日本経済の生命線であるシーレーンはこの海域を貫いて走る。
フィリピンの海軍力、空軍力は極めて貧弱だ。1992年にスービック基地から米軍が撤退して以来、同国はいわば丸裸の状態にある。韓国から軽戦闘機の購入を決めたが、現時点で実戦配備されているのは1機もない。近代装備の艦船もない。
丸裸のまま放置はできない。オバマ米大統領はマニラ到着後に比海軍の視察に直行し、巡視船の無償供与や約8千万ドル(約98億円)の資金援助を約束。アキノ比大統領も環太平洋経済連携協定(TPP)への『強い関心』を直接オバマ大統領に伝え、軍事、経済の両面で米比の連携を演出した。
交渉決着を受けたTPP首脳会合では、新規加盟を目指すアジア各国の要望を確認した。ベトナム、マレーシアなどに加え、フィリピンが参加すれば、要衝である南シナ海を囲む国々は全てTPP陣営に入る。安倍晋三首相は『経済の相互依存関係が深まれば地域の安定に資する』と、域内の安全保障を高めるTPPの役割を強調した。
だが、東アジアの秩序づくりは、このまま日米の思惑通りに進むだろうか。気になるのは、来年5月に迫るフィリピンの大統領選だ。選挙戦の行方は混沌として予測がつかない。次期政権が米中どちらの陣営に近づくかによって、アジア経済圏の姿は一変するだろう。
日米の盲点がここにある。東南アジアの経済を実質的に支配するのは華人だという現実だ。フィリピンも例外ではない。フィリピン航空、流通大手SMグループを筆頭に有力企業の過半は華人財閥の傘下にある。その多くは中国の習近平国家主席が政治実績を積んだ福建省にルーツがある。
比財界では中国マネーへの期待が強い。中国が設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加や親中外交を求めて、政界に激しく働きかけている。こうした財界の意向は大統領選にも影響するだろう。

透明なTPPのルールを広げて『法治』の秩序を築けるか。それとも中国の裁量や人脈が物を言う『人治』の領域にのみ込まれていくのか。マニラAPEC会合で浮き彫りになったのは、環太平洋経済圏の核である東アジアが、大きな岐路に立っている現実である。
オバマ大統領がマニラ到着直後から目立つ行動で軍事面での協力を誇示し、南シナ海問題で中国批判を公言する間、習近平主席の動きは静かだった。華人経営のホテルに陣取り、フィリピン財界人との会談に時間を割いていたという。
安倍首相は『TPPは発効しなければ絵に描いた餅だ』と語った。その通りだ。参加意欲を示した国々も、発効までなお時間がかかるとみて、決意を伴わずに発言している節もある。日米が考える以上に、東南アジア各国はしたたかである」。
来年5月のフィリピンの大統領選で、親中派か親米派かで、南シナ海を囲むTPP包囲網が完成するか否かが決まる。中国の対フィリピン工作は、華人を通じてのものであり、現段階では優勢である。日米が巻き返せるが、である。

編集 持田哲也

改悪したのは誰か

政治 社会 経済

産経の主張に「郵政3社上場」「完全民営化の将来像示せ」が書かれている。
「小泉純一郎政権下で始まった郵政民営化が大きな節目を迎えた。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の郵政グループ3社が同時に上場を果たした。
政府の関与が段階的に薄まり、3社の経営は市場を通じて厳しい目にさらされる。収益基盤を確立し、企業価値を高める経営に尽力せねばならない。
だが、郵政民営化が道半ばだということを忘れてはなるまい。国の後ろ盾による官業体質を排し、民間との公正な競争を促すのが本筋だ。金融2社の完全民営化への道筋など、具体的な将来像を早急に示すことが肝要である。

3社の初値は、いずれも売り出し価格を上回る人気をみせた。個人株主が中心であり、『貯蓄から投資へ』という市場活性化の流れを確実にする契機としたい。株の売却収入が復興財源に充てられることも踏まえ、安定的に株価を高める取り組みを徹底すべきだ。
郵政民営化法は、全国の郵便局で一律のサービスを提供するよう義務づけている。公共性を保ちつつ、確実に収益を高めることは容易ではない。
課題ははっきりしている。日本郵政が全株式を保有する日本郵便の郵便・物流事業は、電子メール普及などの逆風を受ける赤字体質だ。オーストラリアの物流大手買収を生かし、国際物流事業の強化などを急ぐ必要があろう。
グループの利益の多くを稼ぐゆうちょ銀とかんぽ生命の体質強化も重要だ。国債に依存した資金運用の多様化は急務である。民間金融機関との連携で収益を高める戦略も深化させたい。

懸念は、当面、日本郵政が保有する金融2社の株式売却が5割程度にとどまることだ。政府の間接的な保有が残るままでは『民業圧迫』の恐れが解消できず、融資などの新規事業に無条件で参入することは適切ではない。
最終的な郵政グループの組織形態が見通せない現状では、市場が3社の中長期的な経営を見極めるのも難しいのではないか。
政治との関わりにも不安が残る。自民党からはゆうちょ銀の預入限度額引き上げなどの提言もあった。現状では国の信用を背景にした肥大化につながりかねず、民営化の趣旨に逆行する動きだ。政治に翻弄され続けた宿痾を断ち切れるかが、民営化の成否を握るのは言うまでもない」。

主張の結語である「政治に翻弄され続けた宿痾を断ち切れるかが、民営化の成否を濁るのは言うまでもない」は、正論である。
小泉純一郎政権下で決めた郵政民営化法には、2017年までに金融2社の完全民営化が明記されていたのに、民主党政権下での改悪によって、凍結、そして東日本大震災後、2012年に努力目標に変えられたからである。

問題は、改悪したのは誰か、である。自民党支持から民主党支持に替わり、再度自民党支持に戻った特定郵便局長を中心とする郵政グループと自民党から離党し、再度戻った旧郵政族である。これら抵抗勢力との戦いなくして完全民営化への道はない。来年7月の参院選に、完全民営化を阻止すべく、郵政グループは、自民党公認で代表候補を擁立し、40万票獲得を、目指すが、それに抗して、郵政完全民営化を目指す改革勢力結集して対立候補を擁立し、100万票以上を獲得する必要がある。安倍晋三首相の決断次第である。

産経の「石平のChina Watch」に、「『裸の王様』となった習主席」が書かれている。
「先月27日、米海軍のイージス艦が南シナ海の、中国の人工島周辺海域を航行した。中国政府は『中国に対する深刻な政治的挑発だ』と強く反発したが、米軍の画期的な行動は、実は外交面だけでなく、中国の国内政治にも多大なインパクトを与えている。
話は9月下旬の米中首脳会談にさかのぼる。この会談が双方にとって大失敗であったことは周知の通りだ。南シナ海問題などに関する米中間の溝はよりいっそう深まり、米国の習近平主席への失望感が一気に広がった。
過去数年間、習主席は米国とのあらゆる外交交渉において自らが提唱する『新型大国関係構築』を売り込もうとしていた。『対立せず、衝突せず』を趣旨とするこのスローガンは『習近平外交』の一枚看板となっているが、訪米前日の人民日報1面では、習主席は米国側との新型大国関係構築を『大いに前進させよう』と意気込んだ。

しかし訪米の結果は散々であった。習氏が唱える『新型大国関係』に対してオバマ政権は完全無視の姿勢を貫き、習主席の『片思い』はまったく相手にされなかった。
その時点で習主席の対米外交はすでに失敗に終わっているが、中国政府と官製メディアはその直後からむしろ、『習主席訪米大成功』の宣伝キャンペーンを始めた。
まずは9月26日、人民日報が1面から3面までの紙面を費やして首脳会談を大きく取り上げ、49項目の『習主席訪米成果』を羅列して、筆頭に『新型大国関係構築の米中合意』を挙げた。同27日、中央テレビ局は名物番組の『焦点放談』で『習主席の知恵が米国側の反響を起こし、米中が新型大国関係の継続に合意した』と自賛した。同29日、今度は王毅外相がメディアに登場し『習主席のリーダーシップにより、米中新型大国関係が強化された』と語った。

この異様な光景は世界外交史上前代未聞の茶番だった。米中首脳が『新型大国関係構築』に合意した事実はまったくなかったにもかかわらず、中国政府は公然と捏造を行い『訪米大成功』と吹聴していたのである。それはもちろん、ひたすら国内向けのプロパガンダである。習主席訪米失敗の事実を国民の目から覆い隠すためにはそうするしかなかった。『新型大国関係構築』がご破算となったことが国民に知られていれば、習氏のメンツは丸つぶれとなって『大国指導者』としての威信が地に落ちるからだ。
まさに習氏の権威失墜を防ぐために、政権下の宣伝機関は『訪米大成功』の嘘を貫いたが、問題は、米海軍の南シナ海派遣の一件によってこの嘘が一気にばれてしまったことである。オバマ政権が中国に対して『深刻な政治的挑発』を行ったことで、習主席訪米失敗の事実は明々白々なものとなり、米中両国が『新型大国関係構築に合意した』という嘘はつじつまが合わなくなった。しかも、米海軍の『領海侵犯』に対して有効な対抗措置が取れなかった習政権への『弱腰批判』が広がることも予想できよう。
今まで、習主席はいわば『大国の強い指導者』を演じてみせることで国民の一部の支持を勝ち取り、党内の権力基盤を固めてきたが、その虚像が一気に崩れてしまった結果、彼はただの『裸の王様』となった。
いったん崩れた習主席の威信回復は難しく、今後は政権基盤が弱まっていくだろう。反腐敗運動で追い詰められている党内派閥が習主席の外交上の大失敗に乗じて『倒習運動』を展開してくる可能性も十分にあろう。
1962年のキューバ危機の時、敗退を喫した旧ソ連のフルシチョフ書記長はわずか2年後に失脚した。今、米軍の果敢な行動によって窮地に立たされた習政権の余命はいかほどだろうか」。

9月下旬の米中首脳会談の大失敗の事実が、米海軍の南シナ海派遣によって、国内で露呈し、習主席の威信が一挙に崩れてしまった。1962年のキューバ危機で敗退した旧ソ連のフルシチョフ書記長は2年後に失脚したが、同じ轍を踏むか。

日経に瀬能繁・編集委員が「官業脱却、市場が監視」を書いている。

「ドイツから遅れること15年。日本郵政グループ3社がようやく株式上場を果たした。市場の規律を生かす普通の企業への一歩は、人口減時代の日本経済の行方を占う試金石でもある。
『遅ればせながら、だんだん進んでいる』。4日、小泉純一郎元首相はこう語った。『国有国営』の非効率をただそうとした郵政民営化法の成立から10年。株式会社として2007年に発足した日本郵政は『民営』ながら『国有』というねじれを残した。政争の具になった結果、経営の緊張感も失われ『設備投資も止まった』(日本郵政幹部)。
郵政上場は『民有民営』の普通の企業への出発点だ。課題は『株主の経営監視をテコに市場での競争を通じて成果を上げること』(郵政民営化委員長を務めた田中直毅国際公共政策研究センター理事長)に尽きる。豪トール社買収などをテコに2万4000の郵便局網の生産性を上げる経営の手腕が焦点だ。
官業の引力はなお強い。自民党はゆうちょ銀行への預入限度額を増やすよう求める。資産効率化をめざす経営陣が求めない提言は『お節介』に等しい。政治の介入で経営が迷走し時価総額が減れば郵政株の売却益を財源とする復興資金も足りなくなる。このねじれを政治はどうとらえるか。

過疎地が求める郵便局網の維持は切実な願いだが、法律でユニバーサルサービス(全国展開)義務を課す仕組みが正しいかは別問題だ。日本郵政自身が『(全国津々浦々の郵便局網は)大きな組織の基礎であり、国民の支持がある』(西室泰三社長)と考えている。民の工夫を生かす仕組みにしなければ草の根の改革も芽生えないだろう。
郵政上場は民営化法の再設計の時期が来たことも意味する。川本裕子早大教授は『(旧国鉄のような)地域分割や郵便局網の民間開放を考えてもいい』と言う。金融2社の完全民営化の時期すら曖昧な現行法では投資マネーもいずれ背を向ける。
郵政上場の8日前、イタリアの郵政会社も株式を上場した。ドイツと比べれば日本もイタリアも出遅れ組だ。経営も政策も待ったなしで次の一手を迫られている」。
氏が指摘している「郵政上場は民営化法の再設計の時期が来たことも意味する」は、正論である。金融2社の完全民営化の時期を明示すべきである。投資マネーが背を向けるからである。「国有民営」を「民有民営」に早期にすべきである。ドイツから15年遅れである。
編集 持田哲也

多数決論理最優先

政治 社会 経済

東京の社説に「多数決がのし歩いては」が書かれている。
「安全保障関連法の強行可決にみられるように、国会ではますます『数の論理』が幅をきかせています。でも、多数決は本当に万能なのでしょうか。
掃除当番は面倒なものです。誰も進んでやりたくない仕事です。でも、毎日、誰かが引き受けなければなりません。そこで、こんな提案がありました。
『誰か一人にやってもらおう』そうして、『誰か』にA君が指名されてしまいました。来る日も、来る日もA君が一人で掃除当番を引き受けるという案です。みんなで多数決をした結果、『A君が毎日、一人で掃除当番をする』という案が過半数になってしまいました。
<掃除当番の押し付けは>
さて、こんな投票は許されることなのでしょうか。こんな多数決は有効なのでしょうか。実は掃除当番のエピソードは、弁護士の伊藤真さんが書いた憲法の絵本『あなたこそ
たからもの』に出てきます。絵本には、こんな説明があります。
<たとえ、たくさんのひとがさんせいしても、ただしくないこともあるんだ。わたしたちは、ぜったいまちがえない、とはいえない。わたしたちが、えらんだだいひょうも、いつも、ただしいことをするとは、かぎらない>
確かに面倒だからといって、A君に掃除当番を押しつけたことは正しくありません。提案自体も多数決の結果も間違っているわけです。では、なぜ間違いだといえるのでしょうか。
ずばり、A君の人権が侵されているからでしょう。毎日、苦痛な掃除当番を一人に背負わせるのは、基本的人権の観点から許されません。A君という『個人の尊重』からも問題でしょう。絵本の文章はこう続きます。<だから、ほんとうにたいせつなことをけんぽうに、かいておくことにし
たんだ>
<民主政治の落とし穴は>

日本国憲法の三大柱は、基本的人権と国民主権、そして平和主義です。憲法前文にはとりわけ基本的人権が優先する形で書かれています。しばしば国民の間で行われた多数決の結果を『民意』と呼んだりしますが、たとえ民意が過半数であっても、基本的人権は奪うことができません。
『A君に毎日、掃除当番をさせる』という多数決の結論は、『多数の横暴』そのものです。立憲主義憲法では、それを許しません。立憲主義は暴走しかねない権力に対する鎖であると同時に、民意さえ絶対視しない考え方です。いかなる絶対主義も排するわけです。民意もまた正しくないことがあるからです。ナチス・ドイツのときが典型例でしょう。
初めはわずか7人だったナチス党は国民の人気を得て、民主的な手続きによって、1933年にドイツ国会の第一党となりました。内閣を組閣したヒトラーは議会の多数決を利用しました。そして、政府に行政権ばかりでなく立法権をも与える法律をつくりました。『全権委任法』です。
議会は無用の存在となり、完全な独裁主義の国となりました。戦後間もないころ、旧文部省がつくった高校生向けの『民主主義』という教科書では、このテーマを『民主政治の落とし穴』というタイトルで描いています。
<多数決という方法は、用い方によっては、多数党の横暴という弊を招くばかりでなく、民主主義そのものの根底を破壊するような結果に陥ることがある><多数の力さえ獲得すればどんなことでもできるということになると、多数の勢いに乗じて一つの政治方針だけを絶対に正しいものにまでまつり上げ、いっさいの反対や批判を封じ去って、一挙に独裁政治体制を作り上げてしまうことができる>
旧文部省の教科書は何とうまく『多数の横暴』の危うさを指摘していることでしょう。多数決を制したからといって、正しいとは限りません。それどころか、多数決を乱発して、独裁政治にいたる危険性もあるわけです。
確かに多数決は民主的手続きの一つの方法には違いありません。しかし、少数派の意見にも十分耳を傾けることや、多数決による結論に対する検証作業も同時に欠かせない手続きといえます。

<「4分の1」の尊重を>

臨時国会の召集を野党が憲法53条の規定に基づいて求めましたが、政府は『首相の外交日程』などを理由に拒みました。議員の4分の1の要求があれば、召集を決めねばならないという規定です。
『4分の1』という数字は、むろん少数派の意向を尊重する意味を含んでいます。多数決論理ばかりが横行して、『4分の1』という少数派の『数の論理』を無視しては、民主主義がうまく機能するはずがありません」。
社説の結語である「多数決論理ばかりが横行して,『四分の一』という少数派の『数の論理』を無視しては、民主主義がうまく機能するはずがありません」に、異論がある。
民主主義とは、最後は、多数決論理最優先だからである。少数派の意見も尊重するが、最後の決は、多数決に拠るとしているのが、民主主義である。
問題は、社説が指摘しているように、多数決を乱発して独裁政治に至る危険性があるのか、である。ナチス・ドイツのことを指しているが、戦後の日本国憲法下で三権分立が整備された民主主義国日本ではあり得ない。事実、戦後70年に一度も独裁政治体制があったのか、である。戦後の欧米の民主主義国においても、その例を見ない。むしろ独裁政治体制は旧ソ連、中国、北朝鮮などの共産主義国のみである。そもそも、共産主義国には、議会制民主主義が存在しえない。民主主義を全否定する全体主義である。民主主義の根幹である多数決の論理から独裁政治体制への移行はありえない。

読売の「政治の現場」「揺れる沖縄」�に「菅氏、知事の矛盾突く」が書かれている。
「政府は、沖縄県が反対する米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を進めるため、一気に攻勢に出た。10月28日に高裁への提訴に向けた法的手続きに着手し、翌29日には移設先で作業を再開させた。
内閣で沖縄問題を仕切る菅官房長官は、知事の翁長雄志の『弱み』を分析し、揺さぶりをかけ続けてきた。
7月4日夜、東京都内の日本料理店。菅は翁長と副知事の安慶田光男を招いた。場が和んだ頃、菅は『全ての移設作業を止めるので、8月から集中的に協議しませんか』と語りかけた。翁長は歓迎し、対話を継続させることが決まった。
だが、菅にとって本題は別にあった。沖縄県議会で焦点となっていた条例案への対応を確かめることだ。条例案は県内に搬入される埋め立て用の土砂や石材を『外来生物の侵入防止』を理由に規制するもので、社民、共産両党など翁長を支える5会派が6月に県議会に提出していた。
条例化の狙いは辺野古移設を遅らせることにあった。これに対し、菅は、県が早期開業を求めている那覇空港第2滑走路の整備も対象になることに目を付け、翁長側に2020年を予定している開業が大幅にずれ込むとの見通しを伝えていた。
翁長らは『条例案は議員が提案したもので、運用は県がやる。同じ場所の土砂なら、一部を調べて問題がなければ搬入を認める』と説明した。じっくりと耳を傾けた菅はその後、周辺にこう指示した。『辺野古への土砂は第2滑走路と同じ所から持ってくるようにしろ』条例は9日後に成立したが、菅はこの時点で事実上、骨抜きにすることに成功した。
菅は、翁長が別の米軍用地の返還に抵抗する姿をあぶり出すことも狙っている。8月29日、那覇市内のホテル。菅は翁長と再び会談した後、記者団にやり取りを明らかにした。『北部訓練場で今、反対運動があるので、県に協力要請しました。県は<聞き置く>という状況でした』
北部訓練場(約7800ヘクタール)は国頭村と東村にまたがる県内最大の米軍施設だ。日米両政府は約4000ヘクタールの返還に合意しているが、実現していない。輸送機オスプレイが使うヘリコプター着陸帯6か所を訓練場の残りの区域に移すことが返還の条件になっているが、反対派が妨害しているためだ。
翁長は知事選公約で『米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因』と訴えた。だが、北部訓練場の妨害行為は排除せず、返還を実現させようとしていない。なぜか。
公約で『オスプレイの配備撤回』も掲げたためだ。翁長は菅との会談後、記者団からの追及に『オスプレイの配備撤回に頑張る中で、この問題も収斂していくのではないか』と繰り返した。
矛盾した姿勢は、那覇市の中心部にある米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の返還計画でも見られる。返還の前提である浦添市沖への移設について、那覇市長時代は賛成していたが、知事に就いてからは賛否を明言しなくなった。政府関係者は『辺野古移設に反対しながら同じ県内移設に賛成すれば、<二枚舌>と批判されるからだ』と指摘する。
菅は4月23日、3日前に移設を受け入れた松本哲治浦添市長を首相官邸に迎え、「全面的に協力する」と約束した。直後の記者会見では「政府は目に見える形で沖縄の米軍基地の負担軽減をするために全力で取り組んでいる」と強調し、翁長をけん制した。
だが、こうした揺さぶり作戦に展望があるわけではない。翁長は辺野古移設に徹底抗戦する構えを崩していないからだ。菅は10月29日、訪問先の米領グアムで『普天間飛行場の危険除去と閉鎖に向けて、首相から<やれることは全てやるように>と強い指示をもらっている』と述べ、辺野古移設の実現に改めて決意を示した。混迷を深める普天間飛行場の移設問題はどのような決着をみるのか。菅と翁長の神経戦はこれからも続く。

<普天間跡地、経済効果32倍>

米軍普天間飛行場(約481ヘクタール)を含む沖縄県中南部の米軍用地の跡地利用について、県と関係市町村は2013年に構想をまとめている。普天間飛行場の場合は、幹線道路や高度情報通信基盤などを整備し、コンベンション施設や医療・生命科学産業、再生可能エネルギー産業などの導入を目指すことが柱だ。県はこの構想をもとに米軍用地の返還による経済効果を分析し、今年1月に結果を公表した。それによると、普天間飛行場が返還された場合の年間の経済効果(施設・基盤整備による効果を除く)は3866億円で、返還前の120億円の32倍に増える。那覇港湾施設(約56ヘクタール)では、流通産業や都市型文化産業の導入などにより、年間の経済効果は30億円から1076億円と36倍に跳ね上がる」。
沖縄県が普天間返還による跡地の経済効果を年間3866億円と試算している、返還前の120億円の32倍である。にもかかわらず、翁長知事は辺野古移設に反対している。矛盾である。県民にこの矛盾を周知徹底させるべきである。

東京の「本音のコラム」に山口二郎・法政大教授が、「真ん中とは何か」を書
いている。
「野党結集について、野党第一党である民主党の態度が煮え切らない。この党の政治家はいったい誰に支持してもらいたいと思っているのか、気が知れない。
細野豪志政調会長は、共産党と組んだら保守票が逃げるという。逃げるほどの保守票をもらっているのかねと、嫌みの一つも言いたくなる。安倍自民党が右傾化する中、中央が空いているので、民主党は中央を取らなければならないという細野氏の主張には同感する。しかし、中央とは何か細野氏が理解しているとは思えない。
中央あるいは中庸とは、足して二で割る微温的態度ではない。さまざまな立場を尊重し、常識に基づいて合意を目指す政治的態度である。真に人道や常識を重んじる穏健・中庸の知性の持ち主なら、権力をかさに着て、憲法を意図的に踏みにじり、沖縄や原発事故被害者を無視する安倍政権に対しては、性根が腐っていると断罪すべきである。
民主党では、国会前のデモに参加して市民の思いに触れた政治家と、そうでない政治家の分離現象が起こっている。市民に背を向け、保守票とやらにしがみつくならば、民主党は遠からず消滅する。日本の政治に必要なのは、自民党の二軍ではなく、安倍政権の政策と政治手法を正面から批判し、別の道筋を提示する野党である」。
「真ん中とは何か」に異論がある。真ん中とは、「安倍政権の政策と政治手法を正面から批判し、別の道筋を提示する野党」のことだと指摘しているからである。それは、共産党を指している。共産党は誰が見ても左翼だが。共産党礼賛の度が過ぎている。

編集 持田哲也

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