社会

理解得られる先送り

政治 社会 経済

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朝日の社説に「衆院選挙制度」「理解得られぬ先送り」が書かれている。
「自民党が、衆院の選挙制度改革の案をまとめた。最高裁が国会に求めた一票の格差是正と、2大政党の党首が約束した定数削減。この2つを主な論点に政党間協議が再開されるが、自民党案は定数配分の見直しと削減を2020年の大規模国勢調査以降に先送りする内容だ。他の政党や有権者の理解を得られるとは思えない。
格差是正と定数削減は、政党間での協議がまとまらずに、有識者による調査会に検討が委ねられた経緯がある。

 

調査会は先月、10年ごとの大規模国勢調査をもとに、人口比に基づく『アダムズ方式』で都道府県単位の定数を配分▽大規模調査の中間年の簡易国勢調査で格差2倍以上の選挙区が生じたら、都道府県内の選挙区割りの見直しを行うとの是正策を答申。選挙区6、比例区4の定数削減も求めた。
安倍首相はこれまで『答申を尊重する』と国会などで繰り返してきた。一方、自民党執行部は当初、都道府県内の区割り見直しによって格差を2倍未満に抑えることにとどめる案を持っていた。ただ、それでは自らの答弁との整合性がとれないとの首相からの指示を受け、軌道修正した。

 

党執行部がきのう示した案には、都道府県別の定数については『20年の大規模国勢調査の際に、調査会の答申に沿って、必要な見直し、削減を行う』と書いてある。だが、具体的な数字や中身には触れていない。
定数削減については『10削減を党方針としたい』と口頭で説明。格差是正にアダムズ方式を用いるかどうかは『今後の検討』と言葉を濁している。
民主党政権の野田首相と安倍氏が、消費税率引き上げに伴う『身を切る改革』として定数削減を約束したのは12年11月だ。その後、格差是正の緊急措置として定数を5減らしたとはいえ、公党間の合意の実行をさらに5年あまり先送りすることは誠実な態度ではあるまい。
さらに問題なのは格差是正だ。定数の配分方式をはっきりさせないままの先送りは、最高裁が不平等の原因だとして『速やかな撤廃』を求めた1人別枠方式を実質的に存続させることになりかねない。

 

アダムズ方式が完全かどうかは別にしても、現実的な案として答申された以上、速やかに実施すべきなのは当然のことだ。圧倒的な議席数をもつ自民党の責任は大きい。政党間協議ではこれらの疑問について、国民が納得できる明確な結論を出さねばならない」。
社説の主旨である「理解得られぬ先送り」に、異論がある。
安倍晋三首相は、「最終的に私が決める」「答申が出た以上、尊重する」と国会答弁で繰り返し明言していたが、その安倍首相が、自民党案を「第3者機関の答申を守っていくことが、基本的に決定された」として、了承したからである。最高裁が国会に求めた1票格差是正と2大政党の党首が約束した定数削減を2020年の大規模国勢調査以降に先送りするものである。
問題は、その間に、衆院選が必ず実施されることである。最高裁が3回「違憲状態」の判決を下した選挙制度によってである。最高裁は、その衆院選を「違憲」と判決し得るのか、である。そこで、安倍晋三首相は賭けに出たのである。7月の衆参同日選で、改憲勢力で衆参で3分の2以上の議席を確保し、憲法改正の発議をし、来年国民投票で過半数を得て、憲法改正を為すために、である。その時間的猶予を確保するための先送りだから、「違憲」にはならないとの決断をしたのである。国民が理解し、納得し得る先送りであると。

 

産経の「阿比留瑠比の極言御免」に、「民主の社民化が止まらない」が書かれている。
「『北朝鮮の核・ミサイルに絡む国際共同歩調が模索されている局面で、民主党も、このような政策対応を打ち出すというのか。この論理構成が、どうにも理解できない』
東洋学園大教授(国際政治学)で、本紙正論メンバーでもある櫻田淳氏が、8日付の自身のフェイスブックでこう嘆いていた。民主党が維新、共産、社民、生活各党の計5党で、安全保障関連法の廃止法案を来週中にも共同提出する方針であることへのコメントだ。
折しも、北朝鮮の自称・水爆実験成功と、それに続く長距離弾道ミサイル発射によって国民の生命・自由・財産など基本的権利が脅かされていることが誰の目にも明らかになったタイミングである。
まさに日米韓3カ国が安保協力を強化すべき時に、わざわざ日米連携にひびを入れるような話を持ち出すとは、民主党はどういう政治センス、国際認識をしているのかとあきれた。
 
<自ら野党化志向>
『(共産、社民、生活の)3党から(共同提出を)強く要請を受けているので調整をしている』
民主党の枝野幸男幹事長は8日、国会内で記者団にこう語った。共産党の山下芳生書記局長も同日の記者会見で、野党共闘への影響について『一歩前進になるのではないか』と期待感を示していたが、安全保障問題を政局の道具に使われては国民はたまらない。
『民主党はどんどん社民党化している。(一応原則のある)共産党以下だ』
政府高官がこう突き放す通り、民主党は政権再奪取を目指すどころか万年野党化を自ら志向しているとしか思えない。
何せ平成27年版防衛白書によると、北朝鮮はただでさえ短・中・長距離弾道ミサイルを合わせて700基から千基を保有しているとみられるのである。中国も短距離弾道ミサイルだけで1200基を持ち、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む南西諸島の一部も射程に入れている。
にもかかわらず、これらの野党は、北朝鮮の脅威そのものよりも、政府・与党が脅威を安保関連法の必要性と結びつけることばかり警戒し、牽制しているようにみえる。8日付毎日新聞朝刊によると、枝野氏は7日、仙台市での会合でこう訴えたのだという。
『近くにおかしな国があるからこそ個別的自衛権をしっかりやるべきだ。首相周辺は悪用して集団的自衛権や憲法改正が必要という話にしかねない。だまされてはいけない』
日米同盟を毀損するようなことをやって、どうやって『おかしな国』から国民の安全を守るというのか。喜ぶのは北朝鮮や中国だけだろう。その北朝鮮をめぐっては、社民党も又市征治幹事長名で7日に『ロケットの発射』と題する談話を発表し、こう主張した。
『いたずらに<北朝鮮の脅威>をあおり、ミサイル防衛システムの整備・強化や<南西諸島防衛>名目の自衛隊の沖縄展開に利用することは、北東アジアの緊張関係をかえって増幅しかねない』
 

<「ダチョウの平和」>
だが、北朝鮮の脅威は別に『あおる』までもなく今そこに厳然としてある。社民党が、砂に頭を突っ込んで身に迫る危機を見ないようにして安心する『ダチョウの平和』に安住するのは勝手だが、国民を道連れにしようとしないでほしい。民主党の保守系議員は、ここで執行部の社民党化路線に歯止めをかけられないようでは、存在価値が疑われても仕方あるまい」。
「民主党はどんどん社民党化している。(一応原則のある}共産党以下だ」は、正鵠を突いている。左傾化している民主党と共産党との共闘は必然である。共産党主導の「国共合作」を加速するために、安倍晋三首相は、憲法9条2項改正の是非を衆参同日選の争点にすべきである。
 
産経に「民主『言論弾圧』レッテル貼り」「総務相の電波停止発言で論戦」が
書かれている。
「衆院予算委員会は10日、政治的公平性を求めた放送法違反を繰り返した放送局に電波停止を命じる可能性に触れた高市早苗総務相の発言をめぐり、民主党と安倍晋三首相が論戦を繰り広げた。民主党は首相が報道への圧力を強めているとのイメージづくりを展開したが、首相は『一般論だ』とかわした。
民主党の大串博志氏は『電波停止を否定しないのか』と首相に迫った。首相は『高市氏は法令として(電波停止が)存在することも含めて答えた』『従来通りの一般論を答えた』と述べ、高市氏を擁護した。
さらに、放送局の政治的公平性を判断する根拠をめぐって議論は白熱した。大串氏は、高市氏が平成27年12月に視聴者団体に提出した回答で、極端な場合は1つの番組でも政治的公平性が判断されるとの考えを示したとして、『行き過ぎだ』と追求した。
首相は『放送局の番組全体を見て判断する』と繰り返し答弁。高市氏の見解との食い違いを指摘されたが、『議論を深めたいなら高市氏を予算委に呼べばいい』と述べるにとどめた。
大串氏は『安倍政権になって1つの番組に口をはさもうとする態度が非常に多い』とも訴えた。これには首相も『一般論として答えたことに、恣意的に気にくわない番組に適用するとのイメージを広げるのは、(安全保障関連法に関する)<徴兵制が始まる><戦争法案>と同じ手法だ』と反論した。
首相は『政府や自民党が強圧的に言論を弾圧しようとしているイメージを付けようとしているが、間違っている。与党こそ言論の自由を大切にしている』とも強調し、民主党のレッテル貼りを批判した。
 

安倍政権の姿勢を追及した民主党だが、報道への圧力は民主党政権でこそ顕在化していた。23年7月、松本龍復興相は村井嘉浩宮城県知事との面会時のやり取りについて『書いた社は終わりだ』とマスコミを恫喝。同年9月には鉢呂吉雄経済産業相の辞任に関する報道について輿石東幹事長が民放関係者を聴取し、党代議士会で『マスコミ対応を含め情報管理に徹底していきたい』と宣言した。
菅直人首相は就任記者会見で『ややもすれば取材を受けることによって政権が行き詰まる』と取材を忌避する姿勢をみせていた。こうした過去を持つ民主党の追及がどこまで支持されるかは不透明だ」。
民主党が高市総務相の発言を巡り、「言論弾圧」のレッテル貼りに躍起となっているが、またもや「ブーメラン」となる。民主党政権3年間の「言論弾圧」の事実がむし返されるからである。「言論弾圧」の元祖は民主党政権であるからだ。

 

編集 持田哲也

改憲阻止で野党結集を

政治 社会 編集部

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読売の社説に「民主党大会」「野党結集を前に進められるか」が書かれている。
「夏の参院選で、自民党の明確な対抗軸を作れるか。正念場となろう。民主党が、東京都内で党大会を開いた。岡田代表はあいさつで維新の党との新党結成について、『選択肢として排除されていない。私にお任せいただきたい』と述べた。維新の松野代表と協議し、3月末までに結論を出すという。
 
2016年度活動方針も、『衆参同日選も視野に、大きな力の結集を図る』と明記し、野党勢力の結集を呼びかけた。だが、こうした掛け声と裏腹に、党内の足並みはそろわない。
細野政調会長ら保守系は、『負のイメージ』を一新できるとして、新党に積極的だ。一方、労働組合系などは、地方組織の混乱を懸念し、慎重論が強い。岡田氏は難しい判断を迫られよう。
 
新党結成は、理念の共有や基本政策の一致が前提となる。両党は政策協議を重ねているが、主要政策を巡る溝は埋まっていない。憲法改正や集団的自衛権行使の限定容認について、維新の党は基本的に前向きだが、民主党内には賛否両論がある。
民主党政権が決めた消費税率の10%への引き上げについては、維新の党では反対論が根強い。環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を維新の党が評価するのに対し、民主党は批判的だ。対立点が残ったままの合流は、『野合』批判を免れまい。
岡田氏は、参院選について『安倍政治の暴走を止め、政権交代をする足がかりの選挙にしなければならない』と訴えた。党綱領に掲げる『共生社会』の具体像を夏までにまとめるという。
安倍政権との違いを強調するだけでなく、実効性のある現実的な政策にすることが大切だろう。参院選での候補者調整など、野党協力も重要な課題である。
 
『1人区』で自民党と戦うには、野党候補の一本化が有効だ。ただ、民主党内では『保守票が逃げる』として共産党との協力に否定的な声が強い。岡田氏は協力を限定的な声が強い。岡田氏は協力を限定的にし、共産党の自主的な候補取り下げに期待する方向とされる。
各党が様々な選挙区事情を抱える中、どんな協力関係を構築するか、民主党の力量が問われる。参院選では、ベテランの輿石東参院副議長、江田五月・元参院議長、北沢俊美・元防衛相らが立候補せず、引退すると表明した。世代交代は両刃の剣だ。新たな党の姿を示し、党勢を回復できるか。それとも議席減少が続くか。民主党の将来を左右しよう」。
 
社説の主旨である「野党結集を前に進められるか」は、正論である。野党結集しない限り、7月の参院選でもしくは衆参同日選で民主党は惨敗だからである。
問題は、民主党が野党結集をできるのか、である。自民党との対決軸を何にするか、である。安倍晋三首相が、参院選の争点に憲法改正をと位置付けている限り、民主党は「改憲阻止」を対決軸にせざるを得ない。野党結集も「改憲阻止」が錦の御旗となる。民主党の保守派は、居場所がなくなるから党を割り、新党を作らざるを得ない。結果、民主党は「改憲阻止」で共産党と共闘することになる。「改憲阻止」での野党共闘に勝つには、衆参同日選と自公支持層の思想武装が必須となるが。
 

日経に「米艦、再び南シナ海に」「受け身の『航行自由』」「米大統領、外交日程迫り決断」が書かれている。
「米軍のイージス艦が30日、南シナ海で中国が領有権を訴える島の12カイリ(約22キロ)以内を再び航行した。来月中旬に東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳との会議を控えるオバマ米大統領がその外交日程に押されて決断した印象が否めない。受け身の『航行の自由』作戦が浮き彫りになっている。
昨年10月下旬に米軍艦が中国の人工島12カイリ内を航行した直後、カーター米国防長官は『今後数週間から数カ月、作戦が継続される』と明言。米国防総省高官は『四半期に2度かそれ以上』と頻度まで予告した。それから3カ月間、米軍艦が中国が領海と主張する海域を航行することはなかった。
『待った』を掛けたのは、オバマ氏やライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)だ。はしごを外された米軍には不満がくすぶっていた。昨年12月までに再度派遣するよう求めたが、認められなかったからだ。今回ようやくオバマ氏らが派遣を承認したものの、中国への配慮がにじむ。
 
米太平洋軍のハリス司令官が27日の講演で、南シナ海での軍艦の航行拡大をわざわざ表明している点だ。ハリス氏の発言は当初、軍内のオバマ氏に対する不満の代弁にすぎないとみられていたが、実際は作戦の内容を事前に明かしたものだった。あらかじめ漏れれば、それは作戦ではない。軍の運用は機密に属する。それを司令官自らが言及したのは、中国の反応を気にするオバマ氏の意向があったからだとされる。
昨年10月下旬に初めて中国の人工島12カイリ以内に米軍艦を派遣したときも、米国防総省の進言からすでに5カ月が経過していた。しかもその直後にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や東アジア首脳会議という外交日程が迫っていた。そのときの主な議題は今回のASEAN首脳との会議と同じ南シナ海問題だ。似たような状況下でオバマ氏らが決断しているのは、偶然ではないだろう。
 
米軍艦を今後、アリバイのように航行させても、南シナ海での中国の確信的な海洋進出に歯止めを掛けるのは難しい。中国が南シナ海で造成する人工島では民間機の離着陸の試験飛行が始まっており、軍事拠点化は時間の問題だ。綻ぶオバマ政権の対中政策の立て直しが急務なのは、南シナ海の問題だけを取っても明らかだ。
大統領は米軍の最高司令官を兼ねており、軍との協調は不可欠だ。南シナ海で海洋権益を探る中国への対応は、最高司令官と軍との間にすきま風を吹かせている。世界の安全保障に直結する最高司令官と軍の関係改善は、オバマ氏が残された任期で取り組むべき重い課題である」。
 
30日、2カ月余ぶりに、「航行の自由」作戦が実行されたが、米軍の不満を抑えるためである。昨年の10月末以来、作戦の継続を、オバマ大統領、ライス補佐官が中国に配慮して「待った」をかけていたからである。米軍最高司令官の大統領と軍との隙間は深刻である。
 

日経の「日曜に考える」に、吉田忠則・編集委員が「電子版ASIAN RE
VIEW」「中国『爆買い』と偽物の関係」を書いている。
「中国の春節(旧正月)の連休まであと1週間。日本の観光産業は中国人の『爆買い』への期待にわきたつが、中国の政府関係者の顔色はさえない。景気の下支え役になるはずの消費の一部が、海外に流出していることになるからだ。中国政府は『海外から消費を取りもどせ』と旗をふるが、うまくいくだろうか。
『国外の製品と国産品を比べると、最大の差はブランドの知名度と影響力だ』。中国国営通信の新華社は最近、工業情報化省の馮飛次官のこんな発言を伝えた。次官は根拠として、日本と中国の電子炊飯器で炊いたご飯の味にほとんど差がないとの調査を紹介した。
次官は詳しい中身を語っていないが、おそらくは国営中央テレビが昨年放送した番組を指す。日中の炊飯器でご飯を炊き、10人に食べ比べてもらったところ5人が中国製がおいしいと答え、2人が差がないと答えたという内容だ。
たった10人の感想で優劣を決めるのはあまりに強引。ただ少なくとも政府の高官が調査を根拠に、ブランド力では劣ると認めた点には一定の意味がある。
 
中国人が海外で買い物をするわけはほかにもある。次官によると、『先進国は偽物が少なく、安心して消費できる』。ブランド力の次は信用力の欠如だ。それが『中国人の海外での消費を促している』。これも自国の『急所』を正直に認めた発言といえる。
場面はいったん国家統計局が今月19日に開いた記者会見に移る。2015年の成長率を説明したこの会見で好調さが際だったのは、前年比で3割強も増えたネット通販だ。だがそのネット通販こそが、偽物にむしばまれているのだ。
全国人民代表大会の常務委員会が昨年11月に開いた会議で、驚きの数字が明らかになった。『14年の調査によると、ネットで販売された商品のうち品質に問題なく偽物でもない比率は58・7%』。消費者からの訴えも急増しているという。この状態で、国内で安心して買い物してほしいと求めることに無理がある。
偽物の横行は、次官が国内消費の課題として挙げるブランド力の向上にも影を落とす。中国を代表する新興企業で、スマートフォン大手の小米(シャオミ)のホームページには『偽物をみたら通報してほしい』というページがある。台頭する国内ブランドも模造品に頭を痛めているのだ。
これが『爆買い』の背景にある中国の消費の実態だ。次官は『海外の消費を国内に戻すには消費環境の浄化が必要だ』と強調するが、『浄化』には相当な努力が求められるだろう。
 
中国政府も手をこまねいているわけではない。李克強首相は昨年4月に開いた会議で、消費者に人気のある海外の日用品の関税を試験的に下げ、国産のブランド力の向上を急ぐよう指示した。国内消費を増やすのが狙いだが、現時点で効果が出たとは言いがたい。
政治分野を除くと、中国政府は自国の矛盾を意外なほど率直に表明する。企業の過剰設備も環境悪化も食品汚染も、政府が問題を指摘し、是正キャンペーンを張ってきた。だがどれも経済と社会の構造に深く根ざしており、旗をふっても簡単には根治できない。それが安定成長への移行のハードルになっている」。
中国人の爆買いの理由は、中国国内での偽物の横行である。14年の調査でネット通販の41・3%が偽物だと言う。偽物の横行は、中国経済、社会構造の宿痾であり、異形の市場経済での根治は不可である。爆買いは続く。
 

編集 持田哲也

憲法9条改正を

国際 政治 社会 経済

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産経の「年のはじめに」に、石井聡・論説委員長が「再生に向かう力の結集を」書いている。
「国の建て直しを加速する年を迎えた。牽引役である安倍晋三首相はすでに長期政権への道を踏み出し、夏の衆参同日選も視野に入る。
日本の底力を発揮できる環境を整え、懸案解決にあたってほしい。意を用いてもらいたいのは、希望を持って未来を見つめられるような方向へ、国民の気持ちを大きくまとめ上げる
ことだ。

 

もとより、首相一人に難題を押しつけて事足れり、とはならない。今年は『18歳選挙権』の導入に伴い、有権者が約240万人増えることに注目したい。
<主権者の責任より重く>

国民一人一人が日本の未来像を描き、ふさわしい社会や政治の針路を見定める。民主主義の中で主権者が担う責任は重みを増すだろう。
権利を行使する先に再生の看板も掲げよう。それを阻む要因を取り除くには強い力が必要だからだ。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効に向けて、規制緩和や保護政策の転換が欠かせない。壁は分厚く簡単には崩れない。
選挙を経て、自民党の『1強多弱』が固定化、強化されればよいといった話ではない。与党の改革意欲がしぼめば、勢力拡大はかえって停滞や後退につながりかねない。
真に日本の繁栄と平和を守る政治を実現する体制、政治風土をどう作り上げていくか。再編成を迫られる野党も含めた大きな課題である。
安全保障関連法の審議で反対に回った野党は、『安保法廃止』の一点での共闘を模索している。
軍事力を背景に東シナ海や南シナ海での行動を活発化させる中国の台頭など、日本の周辺環境の悪化にどう対処するかは国家的課題だ。にもかかわらず、共通の土俵に立ち、真っ向から論じ合えない。それが昨年の国会の姿だった。
慰安婦問題をめぐる日韓合意は、歴史の歪曲に粘り強く事実で反論していく政権の方針が揺らいだ印象を与えた。日本の名誉を守ることがいかに大事かを忘れてはならない。歴史戦への戦略を再構築すべきだ。
『力の信奉者』の本性をむき出しにする中国、ロシアは、軍事以外の分野でも影響力の拡大を急いでいる。国際金融や中東問題をめぐる欧米分断の懸念は小さくない。
伊勢志摩サミットの議長を務める安倍首相の最大の使命は、国際秩序の漂流を食い止めることにあるともいえよう。自由と民主主義の価値観を共有する国々との協力を強める立場を改めて鮮明に示してほしい。
そのためにも、基軸となる日米同盟をより深化させることが重要だ。集団的自衛権の限定行使容認や日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定によって、抑止力強化の枠組みは整った。これにどう魂を吹き込むかの段階を迎えている。
昨年、就任したジョン・ドーラン在日米軍司令官は、自らの人生で日米の絆を体現している。
三沢基地(青森県)勤務だった24年前、F16戦闘機を操縦して米国に向かう途中、他の輸送機との衝突で太平洋上に転落した。5時間漂流し、意識が薄れかかったところで1000キロ以上離れた厚木航空基地(神奈川県)から飛来した海上自衛隊の救難飛行艇US-1Aに救われた。波高く、燃料切れの恐れもある命がけの救出だった。
<日米に空白をつくるな>
横田基地での就任式には飛行艇のクルーも招かれた。『強固な日米同盟は困難を絶好の機会に変える』という新司令官の言葉に期待したい。問題はその具体化である。
米国の『航行の自由』作戦に日本はどう関与すべきかという課題がある。横須賀生まれのハリス米太平洋軍司令官と河野克俊統合幕僚長は緊密な関係にある。この問題を話し合う最良のパートナーだろう。
むろん、絆を強化する上で日米首脳の役割は大きい。大統領選の年だからこそ、同盟に空白を生じさせてはならない。リオ五輪を控え、2020年の東京開催準備にも拍車がかかる。被災地復興とともに、国や国民の力を再結集する試金石としたい」。
「再生に向かう力の結集を」は、正論である。
今年5月、伊勢志摩サミットの議長を務める安倍首相に最大の使命は、国際秩序の漂流を食い止めることであり、そのためにも基軸となる日米同盟を深化させることが重要となる。日米安保法制による抑止力強化に、どう魂を吹き込むか、である。憲法9条改正が必須となる。安倍晋三首相は、7月の衆参同日選で、日本の再生と同義である憲法9条改正に国民の力を再結集し、衆参で9条改憲勢力で3分の2以上の議席を獲得する歴史的責務がある。
問題は、自民党の党是である憲法改正の核心が9条改正であるのに、自民党は、緊急事態条項の創設から始めようとしていることである。昨年の安保法制成立の際の「憲法違反」キャンペーンに懲りたからであり、公明党も9条改正には反対だからである。日本国を再生するには、国民を9条改正で再結集するのがベストであり、安倍晋三首相が、衆参で9条改憲勢力で3分の2以上を確保するラストチャンスであるから、9条改正と17年4月からの消費再増税凍結の是非を争点にして、衆参同日選を断行すべきとなる。公明党抜きで衆参で3分の2以上を確保できるかが、焦点となる。
日経に「今年の展望、経団連会長に聞く」「名目3%成長、必ず達成」「政権と連携『当然』」が載っている。
「経団連の榊原定征会長(72)は日本経済新聞などとの新春インタビューで、2017年4月の消費税率10%への引き上げを控え、名目3%の経済成長を『是が非でも達成しなければいけない』と述べた。経済界と政権との連携は欠かせないと強調。賃上げや設備投資を積極的に促していく考えも示した。
――今年の日本経済の見通しをどう見るか。『15年のキーワードは干支の羊にちなんで<翔>とした。日本経済がとび立つ年にと願いを込めたが、羊に羽がはえてもあまり高くは飛べなかった。16年は『実』。重要課題を着実に実行し、経済再生を確実に実現する年にしたい』
――16年秋までに政府は消費税率10%上げを最終判断する見通しだ。『消費増税も絶対に実行しなければいけない。安倍晋三首相もその考えだと思う。8%に引き上げた時、駆け込み需要と反動減という苦い経験をした。住宅、自動車、家電などでとありとあらゆる消費喚起が必要で、万全の準備が欠かせない』『増税を乗り越えられる経済の地力をつける必要がある。政府は実質1・7%、名目3・1%という成長率目標を掲げる。高い低いの論評でなく、是が非でも達成しなければいけない。十分に達成可能だ。懸念が強い中国経済も6・5%以上の安定成長を維持するはずで、大きなリスク要因になると思っていない』
――安倍政権3年間の評価は。『民主党政権での経験をよく思い出してほしい。当時、日本経済は停滞し、自信も将来への見通しもない世界だった。安倍政権3年で株価は2万円近くまで上昇し、雇用も改善した。環太平洋経済連携協定(TPP)も大筋合意に導いた。11兆円の経済効果が見込まれるTPPは日本にとって究極の成長戦略だ』
――政権と「近すぎる」との指摘もある。『極めて不本意だ。国内総生産(GDP)が1円も増えない時代が20年続き、墜落しようとする飛行機(のような日本経済)を安倍機長が立て直そうとしている。それを批評している場合か。政府から賃上げや設備投資の要請があった場合、無責任にできない、できるはずないと伝えることが、本当に国のためになるのか。榊原は首相に文句を言ったと褒めるのか。今は平時ではなく戦時だ。当然、政治と経済が一緒になって危機から立ち直る時期だ』
――春季労使交渉の行方は。『15年はベースアップを意識した交渉の指針に仕立てたが、今年の指針はあえてしていない。過去2年、悠々とベアができた企業とそうでない企業がある。あくまでベアや定期昇給、賞与、各種手当を含めた年収ベースで、15年を上回る賃上げを期待したい』」。
「名目3%成長、実質1・7%」の目標を達成するには、17年4月らの消費再増税凍結が必須となる。15年度が実質1・2%の成長にとどまったのは、14年4月からの消費増税故だからである。16年7月衆参同日選必至となる。
日経の「政治新潮流2016」に、「18歳選挙権」「民主主義、変化の風」
「『若者VS高齢者』超え改革へ」が書かれている。
「2016年は夏の参院選から選挙権が18歳に広がり、政治に新しい潮流が生まれそうだ。アベノミクスで芽生えた政官業の新たな動きや日本外交の行方などを含め、4年目を迎えた安倍政権の課題を展望する。
15年12月21日、都内の明治学院大学。自民党で若者対策を担当する牧原秀樹青年局長は法学部の川上和久教授のゼミで3、4年生と向き合った。

<なぜ自分たちが>

『自分たちがなぜ大きな負担をしなければならないのか。シルバー民主主義に不満がある』。学生からは高齢者に偏りがちな国の予算配分に不満が漏れた。牧原氏は『財政で高齢者の社会保障が圧倒的な状況を是正しなければならない。そのためい若い人の声が必要だ』と力を込めた。
その朝、牧原氏は選挙区があるさいたま市のJR北与野駅前で街頭に立っていた。通勤通学客へのあいさつの最中、70歳代の高齢者から声がかかった。『お年寄りは困ってるの。3万円早くちょうだい。そしたら応援するから』
『3万円』とは15年度補正予算案に盛り込んだ低所得の高齢者への給付金のこと。『ばらまき』との批判が与党にもあり、17日の党会合では小泉進次郎氏が『若い有権者がどんどん入ってくる。高齢者に耳に痛いことも言わなければいけない』とやり玉に挙げた。
若者に期待する牧原氏だが、14年衆院選でさいたま市の投票率は、20代は36%にとどまり、70歳以上は63%。給付金を求める高齢者にも『お年寄りのことは大事に思っています』と応じた。安倍政権は一億総活躍社会を掲げるものの、高齢者から若者への予算シフトの壁は厚い。
16年度予算案をみると政策に使う一般歳出57兆円の内訳は年金、医療がそれぞれ11兆円、介護が3兆円でこれらで4割を占める。若者向けといえる少子化対策は2%ほど増えたが2兆円。文教費は4兆円台で少子化で減少傾向にある。
<選挙がトラウマ>
政治が高齢者に弱い一例が医療費の窓口負担だ。小泉政権は70~74歳の窓口負担を08年から1割を2割に引き上げると決めた。だが07年参院選で安倍政権が『消えた年金問題』で大敗。高齢者の反乱は与野党にトラウマとなり、民主党政権も手をつけられなかった。
引き上げは第2次安倍政権が衆参『ねじれ』を解消した後の14年。この間、1割に据え置くため毎年2000億円が投じられた。70~74歳は780万人で20~24歳の600万人より3割多い。施策一つにも高齢者向けは予算が膨らみがちで、1人3万円の給付金は3600億円かかる。
子供の貧困対策を重視する民主党も支持者の意識とのギャップに悩む。12日、次の内閣で子ども政策を担当する阿部知子氏が地元の神奈川県藤沢市で開いた支援者会合。集まった30人は50代以上が大半で20代はゼロ。質問も介護、医療が多く、子供の貧困に触れても反応は『かわいそうね』。『政策論まで話が進まない』と阿部氏はこぼす。
世代間対立は避けられないのか。高齢者福祉を重視する政党と、若者教育を唱える政党のどちらを支持するか――。14日、こんな授業をした新潟県の六日町高校では『若者に介護の専門教育をすれば高齢者も助かる』『高齢者の雇用は技術の伝承につながる』といった意見が出た。指導した関雅夫弁護士は『若者と高齢者は対立構造でなく、補完関係にあると生徒は意識している』と話す。
冷めた若者を振り向かせるのも課題だ。『年金に頼る高齢者に政治が配慮するのは当然だ。今の若者はあまりお金がなくても結構幸せなのに、なぜ政治に関心を持たせようとするのか』。23日、民主党が東京・渋谷で10代向けに開いたイベントでこんな声が挙がった。枝野幸男幹事長は『政治は明日を決める。消費税30%になったら今の幸せを守るのは大変だ』としたうえでこう訴えた。『年配の方でも自分の年金よりも孫のことを考えて投票する方は相当いる。年金制度は現役世代のためでもある。世代間対立にしてはいけない』子や孫への教育資金贈与の非課税制度は、利用が十数万件、一兆円を超え定着しつつある。こうした思いを社会全体に広げ、世代間の対話を促して社会保障改革を進めるきっ賭けにできるのか。70年ぶりの選挙権拡大を新しい政治につなげる知恵が求められている」。
7月の衆参同日選から、18~19歳の約240万人が新たに参加するが、投票率が問題となる。14年の衆院選でさいたま市の20代の投票率は36%にとどまり、70歳以上は63%もあったからだ。今回も同じく投票率40%以下であれば、100万人未満となり、大勢に影響なしとなる。若年層の投票率の底上げが喫緊の課題となる。

 

編集 持田哲也

沖縄視察

政治 新着情報 社会

120826d

国会記者クラブ視察。美ら島、守りの最前線、陸上自衛隊第15旅団を視察し、吉野副旅団長より状況をお伺いしました。
沖縄県庁では自民党沖縄県支部副会長の新垣県議会議員と意見交換させて頂き、オスプレイが駐機する普天間飛行場なども視察させて頂きました。
泊港から船をレンタルして近ずける範囲まで行きましたが、美しい沖縄の海と相反する沖縄が抱える不条理に想いを巡らせながらの視察でした。

 

自衛隊第15旅団http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/15b/15b/

 

沖縄県議会

 

自衛隊15旅団

 

自衛隊15旅団10

 

自衛隊15旅団12

 

自衛隊15旅団17

 

普天間3

テロに屈するな

ニュース記事 国際 政治 社会 経済

朝日の社説に「パリ同時テロ」「冷静で着実な対処こそ」が書かれている。
「同時多発テロがおきたフランスのパリは、いまも緊張状態にある。関係先とされる現場では当局による銃撃戦もおきている。平穏な市民生活が一日も早く戻るよう望みたい。
オランド大統領には、当面の治安を回復し、国民の動揺をやわらげる責任がある。同時に、大局的にみてテロの土壌をなくすには何が必要か、冷静で着実な施策を考えてほしい。
オランド氏は、自国が『戦争状態にある』と宣言した。呼応して、米国とロシアはシリア空爆での連携を確認した。欧州連合では、相互防衛条項を発動することになった。
テロに怒り、高ぶる世論があるのは仕方あるまい。だが一方で、暴力の連鎖を抑えるうえで有用なのは、力に傾斜した言動ではなく、落ち着いた分析と対応である。
『対テロ戦』をかかげて軍事偏重の戦略にひた走った米国のあと追いになってはならない。イラク戦争が、今回の事件を企てたとされる過激派『イスラム国』(IS)の台頭をまねいた教訓を思い起こすべきだ。
テロ対策は、組織網を割り出し、資金源や武器ルートを断つ警察、諜報、金融などの地道な総合力を注ぐ取り組みだ。病根をなくすには、不平等や差別、貧困など、社会のひずみに目を向ける必要がある。軍事力で破壊思想は撲滅できない。
とりわけ今回のテロで直視すべき事実は、容疑者の大半は、地元のフランス人とベルギー人だったことだ。欧州の足元の社会のどこに、彼らを突き動かす要素があったのか、見つめ直す営みが必要だろう。
オランド政権は、治安対策を強める憲法改正や、危険思想をもつイスラム礼拝所の閉鎖、外国人の国外追放手続きの簡素化などを提案している。
それらは本当に自由主義社会を守ることにつながるのか、深い思慮を要する。異分子を排除するのではなく、疎外感を抱く国民を包含するにはどうすべきか。人権大国として、移民社会の現状や国民の同化政策をめぐり、開かれた議論を進めることも肝要だろう。
冷静な対処はむろん、フランスだけでなく、米国、ロシアを含む国際社会にも求められる。事件の背後にいるISに対し、有志連合を主導する米国は空爆を拡大し、ロシアもISの拠点都市などを爆撃した。巻き添えになる人びとの被害は、改めて憎悪の連鎖を広げる。
テロを機に国際社会が最も連携すべき目標は、シリアの停戦を含む中東和平づくりにある」。
社説の主旨である「冷静で着実な対処こそ」に異論がある。
「国際社会の総力あげて対テロ戦争を」が、正論だからである。テロ国家「イスラム国」には対話は通じないのであり、憎悪による問答無用の暴力あるのみである。対テロ戦争に勝つには。テロ国家「イスラム国」壊滅しかないのである。国際社会の総力をあげてである。空爆のみでは限界であり、地上軍派遣が必須となる。世界の警察官であるべき米国のオバマ大統領の決断如何である。
問題は、米国民が「テロに屈するな」として「イラク戦争の二の舞になるな」を超克して、地上軍派遣を支持するか、である。対テロ戦争の核心は、心理戦なのである。社説の主旨である「冷静で着実な対処こそ」はまさに「テロに屈している」が。

産経の「正論」に田久保忠衛・杏林大名誉教授が「国際社会の総力あげ対テロ戦を」書いている。
「狼老年の戯言と笑われても悲観的にならざるを得ない。2001年9月11日の米同時多発テロの際における犯人はアルカーイダで、私には一つの点に見えた。首謀者のウサマ・ビンラーディンは11年に米国に殺害されたが、アルカーイダその他類似のイスラム勢力の犯行は続き、点はさながら線を形成した。その結果、シリアとイラクにまたがるイスラム国(IS)と称する、国家ではないテロリスト集団が、日本とほぼ同じ大きさで面を実効支配するに至った。
<IS「包囲網」の効果>
さらに、この面から正式なビザ(査証)を持って自国とシリアを往復する者、移民や難民に紛れ込む者が、居住国を狙ういわゆるホームグロウン・テロという新しい事態を生んでいる。大量破壊兵器である核・化学・生物兵器の一つでも彼らの手に渡った場合、世界全体はパニックに陥る。危険は近づいているように思われる。
オランド仏大統領は、パリの惨劇に『これは戦争行為だ』と叫び、ISの本拠地と目されているシリアのラッカにすぐ猛爆撃を加えている。アラブ首長国連邦とヨルダンにある基地から飛び立ったフランスの爆撃機は11月15日だけで指令センター、軍事訓練施設、武器庫に目標を絞って20個の爆弾を投下したとの発表を読んだが、どうもピンと来ない。

パリの憎むべきテロリストはフランスの軍事基地、兵舎、官庁、警察署に攻撃を加えたのではなく、警備の少ない一般庶民のいわゆるソフトターゲットに狙いをつけているのだ。司令塔はラッカにあるにしても、ISの犯行声明は、いったんサポーターが手にしたものをツイッターで流しているようだから、所在は正確につかめていないのではないか。
特段に新しいことではないが、ISの勢力拡大の様子が一目でわかる世界地図が11月16日付ニューヨーク・タイムズ紙国際版に載っている。米民間のシンクタンクや国務省、法務省の資料をもとに戦争研究所が作成したもので、シリア、イラク、サウジアラビア、エジプト、リビア、アルジェリア、アフガニスタン、パキスタンの一部を実効支配地域と見なし、欧州、米国、豪州ではいくつもの箇所のほか、バングラデシュなどの国々が直接、間接的に攻撃されたところとして記されている。
インテリジェンスの世界はわれわれの目の届く範囲外なので断定的な言い方は避けたいが、英国が米仏露に加わってIS『包囲網』を形成しようとしているなどの解説を読んでも、その効果は上がるかどうか。
<「天下大乱」の兆しも>
国際政治に国際テロリストという、国家ではない歴史上初めての主役が加わった場合、国家関係だけの分析では無力だ。好例は、米欧諸国とロシアのシリア・アサド政権をめぐる対立だ。ロシアによるIS攻撃は、アサド政権存続を企図したものだと疑いを深めていた米欧諸国は、今夏のパリ同時多発テロを契機にロシアとの話し合いの場を増やし、仏露関係は『同盟』に早変わりした。
国家ではない『共通の敵』の登場による合従連衡であろうか。事件直後にトルコで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議の議題はもっぱらテロ事件であった。南シナ海もウクライナも影が薄れた。欧州連合域内で自由に人間の通過を求めるシェンゲン協定の見直しを求める声が強まっている。テロ犯人、武器が自由に動く社会でいいのかとの反省だ。

移民に反対するフランスのルベン国民戦線(FN)党首ら欧州右翼の声は高まっても低くなることはない。難民に直接関係のない米国のライアン下院議長まで『難民を受け入れるとの思いやりをテロリストに利用させるわけにはいかぬ』と述べ始めた。まさに『天下大乱』の兆しではないか。
<戦後日本の非力が鮮明に>
世界の安全保障に危険が生じたときにわれわれは自動的に米国の動きに目を向けるが、オバマ大統領に痛棒を加えたのはウォールストリート・ジャーナル紙の社説であった。『目を覚ましなさい。大統領閣下』と題するこの社説は事件の2日前にオバマ大統領がABC放送とのインタビューで、ISを『われわれは封じ込めた』と語ったのを徹底的にとがめた。
さらに『オバマはタイミングを誤ったという人もいるが、実際はもっと悪い。発言は自分でそう信じているのか、あるいは少なくとも米国人にそのように考えさせようとしているのかのいずれかだ』と断じた。オバマ政権の対中東政策失敗の真因を突いている。
いつもながら、テレビの解説を目にしてうんざりした。中東専門家による、パリの惨劇は米仏などのIS空爆が原因との説明だ。テロには妥協の余地は全くない。9・11事件に見られたように北大西洋条約機構(NATO)は集団的自衛権の行使に踏み切り、米国を引きずり込まないと事態はさらに深刻になる。国際社会の総力による対決だ。それにつけても、戦後続いている日本の非力はますます鮮明になってきた」。
氏が言う「国際社会の総力あげて対テロ戦を」は、正論である。問題は、日本が「総力挙げて対テロ戦」をとの覚悟を持っているのか、である。「安保法案は戦争法案だ」との「平和という名の戦争」に国民の過半数が騙されているからである。対テロ戦争に、安保法制と緊急事態条項創設を加える憲法改正が必須なのに、である。

日経に太田康彦・編集委員が「APEC首脳会議閉幕」「『法治』は『人治』
に勝てるか」を書いている。
「今年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地がフィリピンだったのは、稀有な歴史のめぐり合わせかもしれない。東アジア全体の安定を揺るがしかねない最大の震源地がフィリピンだからだ。
南シナ海をめぐる米中対立の最前線はここにある。中国が人工島の建設を進める南沙諸島(スプラトリー諸島)は目と鼻の先。日本経済の生命線であるシーレーンはこの海域を貫いて走る。
フィリピンの海軍力、空軍力は極めて貧弱だ。1992年にスービック基地から米軍が撤退して以来、同国はいわば丸裸の状態にある。韓国から軽戦闘機の購入を決めたが、現時点で実戦配備されているのは1機もない。近代装備の艦船もない。
丸裸のまま放置はできない。オバマ米大統領はマニラ到着後に比海軍の視察に直行し、巡視船の無償供与や約8千万ドル(約98億円)の資金援助を約束。アキノ比大統領も環太平洋経済連携協定(TPP)への『強い関心』を直接オバマ大統領に伝え、軍事、経済の両面で米比の連携を演出した。
交渉決着を受けたTPP首脳会合では、新規加盟を目指すアジア各国の要望を確認した。ベトナム、マレーシアなどに加え、フィリピンが参加すれば、要衝である南シナ海を囲む国々は全てTPP陣営に入る。安倍晋三首相は『経済の相互依存関係が深まれば地域の安定に資する』と、域内の安全保障を高めるTPPの役割を強調した。
だが、東アジアの秩序づくりは、このまま日米の思惑通りに進むだろうか。気になるのは、来年5月に迫るフィリピンの大統領選だ。選挙戦の行方は混沌として予測がつかない。次期政権が米中どちらの陣営に近づくかによって、アジア経済圏の姿は一変するだろう。
日米の盲点がここにある。東南アジアの経済を実質的に支配するのは華人だという現実だ。フィリピンも例外ではない。フィリピン航空、流通大手SMグループを筆頭に有力企業の過半は華人財閥の傘下にある。その多くは中国の習近平国家主席が政治実績を積んだ福建省にルーツがある。
比財界では中国マネーへの期待が強い。中国が設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加や親中外交を求めて、政界に激しく働きかけている。こうした財界の意向は大統領選にも影響するだろう。

透明なTPPのルールを広げて『法治』の秩序を築けるか。それとも中国の裁量や人脈が物を言う『人治』の領域にのみ込まれていくのか。マニラAPEC会合で浮き彫りになったのは、環太平洋経済圏の核である東アジアが、大きな岐路に立っている現実である。
オバマ大統領がマニラ到着直後から目立つ行動で軍事面での協力を誇示し、南シナ海問題で中国批判を公言する間、習近平主席の動きは静かだった。華人経営のホテルに陣取り、フィリピン財界人との会談に時間を割いていたという。
安倍首相は『TPPは発効しなければ絵に描いた餅だ』と語った。その通りだ。参加意欲を示した国々も、発効までなお時間がかかるとみて、決意を伴わずに発言している節もある。日米が考える以上に、東南アジア各国はしたたかである」。
来年5月のフィリピンの大統領選で、親中派か親米派かで、南シナ海を囲むTPP包囲網が完成するか否かが決まる。中国の対フィリピン工作は、華人を通じてのものであり、現段階では優勢である。日米が巻き返せるが、である。

編集 持田哲也

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