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ヴォー・ヴァン・トゥオン・ベトナム社会主義共和国主席夫妻で訪日、国会演説

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ベトナム社会主義共和国のヴォー・ヴァン・トゥオン国家主席は、夫人と共に公式実務訪問賓客として訪日、27日から30日までの期間、日本の主要な政治指導者たちと会談しました。

この訪問は、両国間の強固な関係をさらに深める重要な機会となりました。

国家主席夫妻は、日本に到着し、天皇陛下と御会見しました。

その後、岸田総理大臣とも会談を行い、日越関係の強化について話し合いました。

この二国間の会談は、経済、文化、教育、安全保障など、多岐にわたる分野での協力を促進するための重要なプラットフォームとなりました。

特に注目されたのは、29日に実施された国会での演説です。

ヴォー・ヴァン・トゥオン国家主席は、日本の議会において、両国間の友好関係の重要性と、今後の協力の可能性について述べました。彼の演説は、日越関係をさらに推進するためのビジョンを示すものであり、日本側からも高く評価されました。

この訪問は、日本とベトナムの間の経済的および文化的な結びつきを強化するための基盤となり、両国の将来に向けた新たな道を開くことが期待されています。

ヴォー・ヴァン・トゥオン国家主席の訪問は、アジア地域における安定と繁栄への共通の願いを象徴しているとも言えます。

この訪問は、両国の長い友情と相互理解に基づくものであり、今後も継続的な交流と協力を通じて、より強固な関係を築くことが期待されます。

連合第18回定期大会

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「社会を新たなステージへ、ともに歩もう、ともに変えよう~仲間の輪を広げ 安心社会をめざす~」

連合は10月5~6日、「社会を新たなステージへ、ともに歩もう、ともに変えよう~仲間の輪を広げ 安心社会をめざす~」をスローガンに第18回定期大会を東京で開催しました。今後2年間の運動方針などを確認したほか、新役員を選出しました。

 冒頭挨拶で芳野友子会長は、「経済や社会の状況が、生活者にとって厳しい2年間だった」と振り返り、「『コロナ禍』『物価高』『円安」』の『三重苦』に打ち勝つため『賃上げ』を強く訴えながら、春季生活闘争に挑んだ。政府、経済界とも共通の認識として「政労使の意見交換」の場が設定され、大企業だけでなく中小企業でも賃上げが実現できるように、サプライチェーンにおける原材料費や労務費の価格転嫁の必要性が確認された結果、30年ぶりの高水準で賃上げが実現。このことが、過去最大の最賃の引き上げにつながった」として、現場で粘り強い交渉を展開した単組、構成組織の努力に敬意を表するとともに、賃上げの流れを2024春季生活闘争につなげていくように強く呼びかけました。
 また、第18期を迎えるにあたって、特に力を入れて取り組みたいこととして、①ジェンダー平等・多様性推進、②「社会的な対話」を挙げ、「組織拡大、組織の魅力化、情報発信、政策・制度の実現、そして、政治の取り組みなど連合のあらゆる取り組みのプラットフォームであると言っても過言ではない」として、その重要性を訴えました。
 最後に第18期に向かって、「連合に集う皆さまや連合を応援してくださる皆さまの力を一つに結集し、その輪を広げられるよう取り組んで参りたい」として挨拶を締めくくりました。

 来賓として、岸田文雄内閣総理大臣、武見敬三厚生労働大臣、泉健太立憲民主党代表、玉木雄一郎国民民主党代表からご挨拶をいただきました。
 岸田首相は「コロナ禍を乗り越えた国民は今、物価高に苦しんでいる。今こそ成長の成果を適切に国民に還元すべきである」として、「皆様のご尽力もあり生じた賃上げの大きなうねりを持続的なものとし、地方や中堅、中小企業にまで広げていかなければならない」、また「最低賃金についても2030年代半ばまでに1500円となることを目指す」などのご挨拶をいただきました。
 武見大臣は「成長と分配の好循環を実現していくためには、持続的に賃金が上がる構造を作り上げていくことが必要」として、「リスキリングによる能力向上の支援、個々の企業の実態に応じた職務給の確立、成長分野への労働移動の円滑化、この三位一体の労働市場改革に働く人の立場に立って取り組む」などのご挨拶をいただきました。
 泉代表は「想定以上の物価高に襲われ、実質賃金が下がり続けている」と指摘し、「政府には今の取り組みに満足をせず、賃上げ、最低賃金を引き上げるスピードをより一層加速させなければいけない」として、それには「緊張感のある政治を作り出していかなければならない」などのご挨拶をいただきました。
 玉木代表は「この30年間の実質賃金低下のトレンドを変えられるかどうか。日本は今後を決める大きな岐路に立っている。その中で、連合、労働組合の果たす役割は極めて大きいが、政治の役割も極めて重要である」として、「持続的な賃上げに繋がる大きな後押しになるよう、連合の皆さんとしっかりと力を合わせ、心を合わせて取り組んでまいりたい」などのご挨拶をいただきました。

 また、郷野晶子国際労働組合総連合(ITUC)会長、吉田昌哉国際労働組合総連合アジア太平洋地域組織(ITUC-AP)書記長、ヴェロニカ・ニルソン経済協力開発機構・労働組合諮問委員会(TUAC)事務局長をはじめ、海外の組織からもご挨拶をいただきました。また、ジルベール・F・ウングボ国際労働機関(ILO)事務局長などからはビデオメッセージをいただきました。

 新たに確認された「2024~2025年度運動方針」では、連合がめざす社会像「働くことを軸とする安心社会 -まもる・つなぐ・創り出す-」の実現に向けて社会経済のステージ転換を確かにする2年として、「すべての働く仲間をまもり、つなぐための集団的労使関係の追求と、社会に広がりのある運動の推進」、「安心社会とディーセント・ワークをまもり、創り出す運動の推進」、および「ジェンダー平等をはじめとして、一人ひとりが尊重された『真の多様性』が根付く職場・社会の実現」などを掲げています。

 役員には、芳野友子会長(JAM)、松浦昭彦会長代行(UAゼンセン)、石上千博会長代行(自治労)、清水秀行事務局長(日教組)をはじめ、副会長15名、副事務局長6名、中央執行委員32名、会計監査4名、あわせて61名を選出しました。

 芳野会長は就任挨拶の中で、「2年前、『ガラスの天井』を突き破る覚悟を決めて会長に就任しました。これまで、初の女性会長として注目され、ジェンダー平等・多様性推進に取り組んできました。その際、多くの女性たちと『チャンスが来たら絶対断らないこと』を約束してきました。今日ここに多くの男性がいらっしゃいます。今後は、ぜひ女性たちに勇気をもって声を掛け、チャンスを与えてください。そして、失敗するチャンスも与えてほしいと思います。これまで築き上げたものを変えるのは難しいと思います。しかし、これからの社会、私たちが時代に取り残されないためには、スピード感もって進める必要があります。すべての労働者、生活者の信頼を得てこそ、連合運動が発展します。コロナ禍で困難な生活を強いられている方も含め、すべての労働者、生活者のために、私たちが自ら足を運んで活動していくことが必要です。

『はたらくのそばで、ともに歩む』

すべての人にとって、力となり、信頼される存在となれるよう、精一杯取り組んで参ります。」と決意表明しました。
  
 さらに、「私たちは、大会スローガンである『社会を新たなステージヘ、ともに歩もう、ともに変えよう~仲間の輪を広げ    安心社会をめざす~』のもと、すべての働く仲間にとって『必ずそばにいる存在』として、組織全体で思いを一つにし、労働組合の社会的価値を広く訴えながら、力強く運動を進めていくことを、ここに宣言します」との大会宣言を満場一致で採択し、閉幕しました。

第2次岸田改造内閣 閣僚名簿

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職名氏名備考
内閣総理大臣岸田 文雄(きしだ ふみお)衆議院
総務大臣寺田 稔(てらだ みのる)衆議院
法務大臣葉梨 康弘(はなし やすひろ)衆議院
外務大臣林 芳正(はやし よしまさ)衆議院
財務大臣内閣府特命担当大臣(金融)デフレ脱却担当鈴木 俊一(すずき しゅんいち)衆議院
文部科学大臣教育未来創造担当永岡 桂子(ながおか けいこ)衆議院
厚生労働大臣加藤 勝信(かとう かつのぶ)衆議院
農林水産大臣野村 哲郎(のむら てつろう)参議院
経済産業大臣原子力経済被害担当GX実行推進担当産業競争力担当ロシア経済分野協力担当内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)西村 康稔(にしむら やすとし)衆議院
国土交通大臣水循環政策担当国際園芸博覧会担当斉藤 鉄夫(さいとう てつお)衆議院
環境大臣内閣府特命担当大臣(原子力防災)西村 明宏(にしむら あきひろ)衆議院
防衛大臣浜田 靖一(はまだ やすかず)衆議院
内閣官房長官沖縄基地負担軽減担当拉致問題担当ワクチン接種推進担当松野 博一(まつの ひろかず)衆議院
デジタル大臣内閣府特命担当大臣(デジタル改革 消費者及び食品安全)国家公務員制度担当河野 太郎(こうの たろう)衆議院
復興大臣福島原発事故再生総括担当秋葉 賢也(あきば けんや)衆議院
国家公安委員会委員長国土強靱化担当領土問題担当内閣府特命担当大臣(防災 海洋政策)谷 公一(たに こういち)衆議院
こども政策担当共生社会担当女性活躍担当孤独・孤立対策担当内閣府特命担当大臣(少子化対策 男女共同参画)小倉 將信(おぐら まさのぶ)衆議院
経済再生担当新しい資本主義担当スタートアップ担当新型コロナ対策・健康危機管理担当全世代型社会保障改革担当内閣府特命担当大臣(経済財政政策)山際 大志郎(やまぎわ だいしろう)衆議院
経済安全保障担当内閣府特命担当大臣(知的財産戦略 科学技術政策 宇宙政策 経済安全保障)高市 早苗(たかいち さなえ)衆議院
内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策 地方創生 規制改革 クールジャパン戦略 アイヌ施策)デジタル田園都市国家構想担当国際博覧会担当行政改革担当岡田 直樹(おかだ なおき)参議院
内閣官房副長官木原 誠二(きはら せいじ)衆議院
内閣官房副長官磯﨑 仁彦(いそざき よしひこ)参議院
内閣官房副長官栗生 俊一(くりゅう しゅんいち)
内閣法制局長官近藤 正春(こんどう まさはる)

ウクライナ大統領 国会演説 3月23日衆議院第一会館

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細田衆議院議長、山東参議院議長、岸田総理大臣、日本の国会議員のみなさま、日本の国民のみなさま。本日は私がウクライナ大統領として、史上初めて国会で演説する外国の国家元首として、直接皆様に対してお話できることを光栄に思います。
両国の間には8190キロの距離がございます。経路は飛行機で15時間はかかります。ただし、お互いの自由度を感じる気持ちの差はないです。また、生きる意欲の差もないです。これは2022年2月24日に実感しました。日本はすぐに援助の手を差し伸べてくださいました。心から感謝しております。
ロシアがウクライナの平和を破壊し始めた時に、世の中の「本当」の様子を見ることができました。本当の反戦運動、本当の自由・平和への望み、本当の地球上の安全への望み。日本はこのようなアジアのリーダーになりました。みなさまがこの苦しい大変な戦争の停止のために、努力し始めました。日本はウクライナの平和の復活のために動き始めました。それはウクライナだけではなく、ヨーロッパ、世界にとって重要です。この戦争が終わらない限り、平和がない限り、安全に出かけられる人はいないでしょう。
チェルノブイリ原発の事故はみなさまもご存じかと思います。1986年に、大きな事故がありました。放射能の放出があり、世界各国・各地域で登録(確認)されました。その周りの30キロゾーンは未だに危険なものであり、その森の中では、事故収束当時から多くの瓦礫、機械、資材などが土の中に埋められました。2月24日、その土の上をロシア軍の装甲車両が通りました。そして放射性物質のダストを空気中に上げました。チェルノブイリ原発が支配されました。
事故があったこの原発を想像してみて下さい。破壊された原子炉の上にある現存の核物質の処理場を、ロシアが戦場に変えました。また30kmの閉鎖された区域を、ウクライナに向けた新しい攻撃の準備のために使っています。ウクライナへの戦争が終わってから、どれだけ大きな環境被害があったかを調査するのに、何年もかかるでしょう。核物質が空気中に舞い上がったかということです。
みなさん、ウクライナには現存の原子力発電所が4ヶ所、重厚な原子炉があり、すべて非常に危険な状況にあります。すでにザポリージャ原発というヨーロッパ最大の原発が攻撃を受けています。また工業施設などが被害を受けまして、環境に対するリスクになっています。
石油パイプライン、および炭鉱もそうです。先日スムイにある化学工場において、アンモニアの漏れが発生しました。また今ロシアが、シリアと同じようにサリンなどの化学兵器を使った攻撃も準備しているという報告を受けています。また核兵器を使用した場合の世界の反応がどうなるかが、今世界中の話題になっています。
将来への自信や確信は、今、誰にもどこにもないはずです。ウクライナ郊外に 28日間に渡ってすぐにこの大規模な戦争、また攻撃に対して国を守っています。世界最大の国がこの戦争を起こしたんですが、影響や能力の面では大きくなく、道徳の面では最小の国です。
1000発以上のミサイルが空爆で落とされ、数十の町が破壊され、全焼しています。多くの町では、家族や隣の人が殺されても、彼らをちゃんと葬ることさえできません。埋葬は家の庭の中や道路沿いにせざるを得ません埋葬が可能なところでやっています。
数千人が殺され、そのうち121人は子どもです。9000人以上のウクライナ人が住み慣れた家を出て、身を守るために避難しています。ウクライナの北方領土、東方領土、南方領土の人口が減り、人が避難しています。またロシアは海も封鎖して、通常の交易路も封鎖しています。海運を障害することによって、他の国にも脅威を与えるためです。
皆様、ウクライナおよび反戦連立だけが、世界の安全保障をなすことができます。すべての民族、国民にとって、また社会の多様化を守り、それぞれの国境安全を守り、また子どもや孫の将来を守るための努力が必要です。
ご覧のように、国際機関が機能しませんでした。国連の安保理も機能しませんでした。改革が必要です。機能するために誠実の注射が必要です。話し合うだけじゃなくて、影響を与えるためです。ロシアによるウクライナ攻撃によって世界が不安定になっています。
これからも多くの危機が待っています。世界市場における状況も不安であり、また資材の輸入などの障害が出ています。環境的および食料面の調整も前例のないものです。また、これからも戦争をやりたいという侵略者に対して、非常に強い注意をしなければならないです。平和を壊してはいけないという強いメッセージが必要です。責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力しなければならないです。

日本国については、建設的・原理的なお立場を取っていただきましてありがとうございます。またウクライナに対する本当の具体的なご支援に感謝しています。アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが日本です。引き続きその継続をお願いします。また制裁の発動の継続をお願いします。
ロシアが平和を望む道を、探すための努力をしましょう。またこのウクライナに対する侵略を止めるために、ロシアとの貿易禁止を導入し、また各国企業がウクライナ市場から撤退しなければならないです。その闘志がロシア亡命の同志になりますので、ウクライナの復興も考えなければならないです。また、人口が減った地域の復興を考えなければならないです。避難した人たちがそれぞれのふるさとに戻れるようにしなければならないです。日本のみなさんもきっとそういう住み慣れたふるさとに戻りたい気持ちがお分かりだと思います。
また予防的に全世界が安全を保障するために、動けるためのツールが必要です。既存の国際機関がそのために機能できないので、新しい予防的なツールを作らなければならないです。本当に侵略を止められるようなツールです。日本のリーダーシップがそういったツールの開発のために大きな役割を果たせると思います。ウクライナのため、世界のため、世界が将来、明日に対して自信を持てるように、安定的で平和な明日が来るという確証ができるように。日本の国民のみなさま、一緒になって努力してください。想像以上のことが出来ます。
日本の発展の歴史は著しいです。調和を作り、その調和を維持する能力がすばらしいです。また環境を守って、文化を守るというのがすばらしいことです。ウクライナ人は日本の文化が大好きです。それはただの言葉ではなくて、本当にそうです。2019年、私が大統領になってまもなく、私の妻オレナが、目がよく見えない子どものためのプロジェクトに参加しました。それは、オーディオブックのプロジェクトでした。日本の昔話をウクライナ語でオーディオブックにしました。それは1つだけの例ですけれども、日本の文化はウクライナ人にとって本当に興味深いです。距離があっても価値観がとても共通しています。もう距離が無いということになります。心は同じように温かいです。今日の努力を、またロシアに対するさらなる圧力をかけることで平和を取り戻すことが出来ます。また、ウクライナの復興を行い、また国際機関の対策を行うことができるようになります。その将来の反戦連立が出来上がった際に、日本が今と同じようにウクライナと一緒にいらっしゃることを期待しています。
ありがとうございます。ウクライナに栄光あれ、日本に栄光あれ。

『ワクチンに勝負をかける』菅義偉首相

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日経の「Deep Insight]に丸谷浩史・ニュース・エデイタ―が「ワクチン接種の『菅モデル』」を書いている。
「『ワクチンに勝負をかける』と菅義偉首相が話すのを聞いた人は多い。
新型コロナウイルスのワクチン接種で最初に『1日100万回』を掲げたのは5月7日。積み上げた数字ではなく、閣僚や事務当局が『なかなか難しい』との見通しを示したのをさえぎって『俺はやる』と退路を断った。行き詰まっている部分があると聞くと、自ら電話で調整した。
結果として接種速度は加速し、職域接種は申し込みが殺到して一時停止の状態になった。
こうした状況は両面の見方ができる。需要と供給の目算を誤った責任は首相官邸にある、担当する閣僚が多く、トップが口を出しすぎて首相らしくないとの批判的な声は、永田町・霞が関にも多い。
一方で混乱はあっても、とにかく接種回数を増やすのが重要で、トップダウンでなければできなかったとの見方もある。
1日100万回、希望する高齢者すべてに7月末までにワクチンを2回接種する。具体的な目標と期限を区切ってプロジェクトを実行するのは、デジタル化のスピードに追われる企業では一般的な手法でもある。進捗状況をリーダーが確認し、うまくいっていなければボトルネックがどこにあるのかを探して現場の目線を離れ、解決策を提示する手法に似る。
今回のワクチン接種で首相が厚生労働省だけでなく総務省も使ったのは、この観点からみれば理にかなっている。首相のもとには民間から『産業医を使えばスピードがあがる。協力したい』との声が早くから届いていた。『1日100万回』を打ち出す前に、民間の企業接種と総務省を組み合わせれば十分に可能だ、との目算が首相にはあった。トップが目標を示し、仕事を分解して実行にも直接、関与する運営は伝統的な永田町の手法とは異質な『菅モデル』とも言うべき取り組みである。
『ワクチンで勝負』には危うさもある。
4日投開票の東京都議選で自民党は第1党を奪還したものの、当初の期待ほどには議席を伸ばせなかった。東京五輪への不安、コロナ感染者の再拡大などさまざまな要素はあったが、ワクチンの大規模接種や職域接種が相次いで中止、一時停止となった事情は見逃せない。
自民党総裁の任期が9月末、衆院議員の任期も10月21日に満了となる。選挙の季節が本番を迎え、都議選の結果を踏まえた衆院選の予測で、自民党内はかまびすしい。
前哨戦は既に終わっている。半導体から外交まで、あらゆるテーマで議員連盟が乱立した。そこでは二階俊博幹事長のグループと、安倍晋三前首相、麻生太郎副総理・財務相、甘利明税制調査会長の『3A』との対立構図が取りざたされた。議連に参加したほとんどの議員は『菅氏の総裁再選』を支持する。狙いはトップの交代ではなく、幹事長ポストをどのグループが握るか、にある。
なぜ総理総裁ではなく、幹事長の争奪戦になるのか。
背景には衆院選を前に首相交代論で党内が乱れれば、野党に転落しかねないという本能的な恐怖がある。しかも、いまはコロナ禍で誰が政権を担当しても局面打開は難しい。本格的な勝負の機会を来年の参院選前後に設定し、1年間の時間軸をとる。党内にまとまった基盤を持たない首相は『いつでも交代させることができる』とみて、まずはナンバーツーの獲得に全力をあげる考え方といってもよい。
前例はある。1997年、総裁選を前に党内は誰もが橋本龍太郎首相の再選を支持し、対立の焦点は『幹事長を誰にするのか』の一点にあった。橋本氏は難なく再選したものの、人事や政策のつまずきで瞬く間に求心力が低下した。退陣に追い込まれたのは総裁選から1年もたたない翌98年の参院選後だった。このときは有力候補として最大派閥の会長、小渕恵三氏が控えていた。
幹事長ポストがターゲットになるのは、菅氏のほかに衆目の一致する総裁候補がいないことを意味する。『議連政局』では、安倍前首相が主役と目された。憲政史上最長の政権を担当し、次があれば3度目の登板となる安倍氏がクローズアップされるところに、自民党の深刻な人材難がうかがえる。
安倍氏が最初に総裁選で勝った時、舞台回しは菅氏が主導した再チャレンジ議連が担った。議連で党内の主導権を争うのは、派閥の力が衰えているからでもある。だからこそ、無派閥であっても菅氏が勝利できた。自らが最初に動いて勝ち馬となり、総裁選に勝つ。これが政局での『菅モデル』だとすれば今回、その流れをつくるのはワクチンになる。政権運営と政局の両面で、首相はワクチンに勝負をかけた。
ワクチン接種に手間取れば内閣支持率に響き、衆院選前に人事刷新や首相交代論も出てきかねない。一方で接種が再加速すれば、空気は変わる。『党内ではなく、国民がどう受け止めてくれるかだ』と首相は漏らす。『菅モデル』の成否は来年の参院選までつながっている」。
「ワクチンに勝負をかける」が菅義偉首相の来年参院選までの続投の覚悟である。都議選での大敗でも、総裁差し替えとの議論は起こらず、菅義偉首相での衆院選突入は必至である。無観客であれ東京五輪・パラ五輪開催の世界公約を果たし、ワクチン接種の加速化で、重篤者、死亡者の大幅減少をもたらすからである。世論の潮目が変わり、衆院選での自公圧勝となる。22年7月の参院選も菅義偉首相でとなる。ワクチン勝負にかけたからである。問題は、22年11月の米中間選挙でトランプ共和党が上下両院で圧勝、対中国強硬路線を日本に迫ってくる。国内の二階幹事長らの親中派、公明党が総抵抗してくる。これを抑止出来るのは安倍再々登板しかなく、幹事長差し替えが急務となる。いつ甘利氏に差し替えるか。

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