中国首脳会談

政治

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勿論、一定の成果があったことは否定しない。安倍首相は『競争から協調へ』と述べ、対中政府開発援助(ODA)は『歴史的使命』を終えたが、日中企業の第三国での経済協力、ハイテク・知的財産に関する対話、ガス田開発協議の早期再開、円元通貨スワップ協定の再開など、経済分野で両国関係を進展させようとしている。それ自体は日本の経済界にとっても結構なことだ。

問題は共同記者発表などで語られなかった事項である。そもそも今回の訪中で共同声明などの文書は発表されなかった。これは中国側が今回の合意内容に満足していないことを暗示している。勿論、その点は日本側も同様だろう。

<問題は蒸し返される可能性も>

今回興味深かったのは、歴史、靖国、尖閣、南シナ海、一帯一路などについて対外的言及が殆どなかったことだ。外交・安全保障面では、両国の偶発的軍事衝突を避ける海空連絡メカニズムに関する会合や海上捜索・救助協定の署名が実現したものの、これで歴史問題などの懸案が前進したわけでは全くない。中国側がこれらに固執しなければ首脳会談は成功する。逆に言えば、中国側はいつでもこれらを蒸し返す可能性があるということだ。されば、今回の首脳会談が大成功だったとはいえない。

戦略と戦術を区別すべし

それでも今回の首脳会談は良かったと考える。振り返れば、安倍首相の最初の訪中は06年10月、『戦略的互恵関係』を旗印に小泉純一郎首相時代の日中関係を劇的に改善したのは安倍首相自身だった。ところが12年末に首相に返り咲くと、中国は同首相に尖閣問題で譲歩を迫り、世界各地で安倍孤立化キャンペーンを張った。

しかし、14年以降主要国では安倍評価が高まり、逆に中国が孤立化していく。17年にトランプ米政権が誕生すると、中国の孤立化はますます深まり、さらに今年に入って米中『大国間の覇権争い』が一層激化している。現在、日中関係は戦略レベルで『安倍首相の粘り勝ち』であり、さすがの中国も対日関係改善に動かざるを得なかったのだろうと推測する。

<潜在的脅威は今後も続く>

ここで重要なことは戦略と戦術の区別だ。中国にとって日本は潜在的敵対国であり、尖閣や歴史問題での戦略的対日譲歩はあり得ない。現在の対日秋波は日本からの対中投資を維持しつつ日米同盟関係に楔を打つための戦術でしかない。一方、日本にとっても中国の潜在的脅威は今後も続く戦略問題だ。されば現時点で日本に可能なことは対日政策を戦術的に軟化させた中国から、経済分野で可能な限り譲歩を引き出すことだろう。        

現在日中間で進んでいるのはあくまで戦術的な関係改善にすぎない。こう考えれば、欧米と普遍的価値を共有する日本が、産経の主張が強く反対する『軍事や経済などで強国路線を突き進む中国に手を貸す選択肢』をうやむやにしているとまでは言えない。

中国の面子だけは潰せない
中国との付き合いで最も難しいことの一つが『面子』の扱いだ。日中で面子の意味は微妙に違うようだが、公の場で中国人を辱めれば、思いもよらない逆上と反発を招くことだけは確かだろう。逆に言えば、公の場で中国人の面子を保つ度量さえあれば、彼らは実質面で驚くほど簡単に譲歩することが少なくない。その意味でも首脳会談は成功だったのではないか。

勿論、これで中国が歴史、靖国や尖閣問題で実質的に譲歩するとは到底思えない。だが、米中関係が険悪であり続ける限り、中国は対日関係を維持せざるを得ない。しかし日本がこれを公式に言えば中国の面子が潰れる。日中関係は双方の智恵の勝負となるだろう」。

コラムの主旨である「中国の微笑みは戦術的秋波だ」は正鵠を突いている。中国は尖閣や歴史問題などの戦略的対日譲歩はあり得ないからであり、経済分野でのみの戦術的な関係改善に過ぎない。安倍晋三首相が中国の面子を立ててあげたのである。

毎日に「入管法改正 与野党異論」「ドイツの失敗に学べ、外国人の人権心配」が書かれている、

「外国人労働者受け入れ拡大に向けた入管法改正案をめぐり、野党は29日の代表質問で『移民政策ではないのか』などと攻勢を強めた。自民党法務部会は改正案を了承したものの、党内には不満もくすぶり、法案成立に向けた道のりは険しそうだ。受け入れ拡大には幅広い環境整備も求められ、外国人労働者が安心して働けるよう社会保障制度に確実に加入してもらうこともその一つ。だが、母国に残してきた家族の医療費の扱いなど、制度上解決が必要な課題もある。

『これまで首相自身が否定してきた移民政策とどう違うのか』。立憲民主党の枝野幸男代表は代表質問で首相に批判の矛先を向けた。首相は『深刻な人手不足に対応する制度だ』とかわし、受け入れる外国人材も『真に必要な業種に限り、一定の専門的技能を有し、即戦力となる人材を期限付きで受け入れる』と強調した。

政府は、中小企業などの人手不足に対応するため、今国会で改正案を成立させ、来年4月からの導入を目指す。しかし、現時点では受け入れる外国人の規模や業種など具体的な制度内容はあいまいな部分が多い。これが野党の強い批判を招く結果となっている。

首相の答弁も歯切れが悪くならざるを得ない。枝野氏が『見切り発車では日本の人権レベルが国際社会から問われかねない』とただすと、首相は『総合的対応策の検討を進めている』。 国民民主党の玉木雄一郎代表も『全体像が見えない』と批判し、外国人の受け入れ数をただしたが、首相は『見込み数を精査中』と述べるにとどめた。 

首相側近の自民党の稲田朋美筆頭副幹事長も、党内の不満を『代弁』するように『なし崩し的な移民政策につながるのではとの指摘もある』と質問。青山繁晴参院議員は29日の自民党法務部会で、『外国人の社会保険制度が間に合わない』と受け入れ態勢に懸念を示し『反対』を表明した。別の議員からは『(移民流入で混乱する)ドイツの失敗に学ばなければならない』との声も出た。首相にとって頭が痛いのは、自身と思想信条が近い保守系議員にも改正案に対する反発があることだ。

与野党で評判が芳しくない改正案。しかし、安倍政権にとっては今国会の目玉法案との位置づけだ。衆院法務委員会メンバーの自民党議員は『天の声があるから、下々がいくら騒いでも変わらない』と述べ、首相の強い意向を踏まえ、早期成立を目指す考えを示した。自民党のベテラン議員は現状をこう評した。『安倍晋三という保守政治家が外国人の受け入れを進め、本来進めるはずのリベラルが反対する。不思議だ』

≪社会保障整備が課題≫

『日本で働きたい方が、安心して日本で生活できる環境を整えなければいけない』。入管法改正案をめぐり、自民党法務部会に先立って議論した厚生労働部会の終了後、小泉進次郎厚労部会長はそう強調した。

改正案で創設する新たな在留資格で受け入れる外国人も、要件を満たせば日本人と同様に医療保険や公的年金、雇用保険への加入が必要となる。     

ただ、現状でも、外国人労働者を雇用する事業所の未加入が問題視されており、放置しておけば必要な医療サービスや失業手当を受けられないことになりかねない。厚労省は、国税庁から給与支払い実績のある事業所の情報提供を受け、実態調査を進めている。また、市町村や日本年金機構などと連携し、加入歴を把握する仕組みを創設する方針。通訳を置く医療機関への助成なども検討する。

年金制度で問題になるのは、年金を受け取るために必要な加入期間。日本は10年で、これに満たずに帰国すると、日本で納めた保険料は無駄になる。厚労省は外国人労働者が日本と母国で保険料を二重払いしなくても済むようにする社会保障協定の締結を進めており、現在、協定発効国は欧米を中心に18カ国。厚労省は協定を結んでいない国     からの労働者でも『協定の考え方を尊重して対応する』としている。

一方、国民に不公平感を生じさせかねない制度上の問題もある。民間企業の従業員が加入する健康保険は、『扶養家族』に国内居住要件がないため、海外に残した家族の医療費まで健保が負担することになる。厚労省は3月、扶養家族の認定には、公的な証明書を必須とするよう通知を出した。健保組合側は『各国の<公的証明書>を見定めるのは難しい』と実効性を疑問視している。

自民党内には在留資格を偽っての医療機関の受診などを懸念する声もあり、小泉厚労部会長は『不公平感を放置したままでは、将来に不安を残しかねない』とも指摘した。

≪首相、移民政策は否定、衆院代表質問「増税、影響に対応」≫

安倍晋三首相は29日、衆院本会議の代表質問で、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管法改正案に関し、『いわゆる移民政策をとる考えはない。深刻な人手不足に対応するため即戦力になる外国人材を期限付きで受け入れるものだ』と強調した。

首相は『国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人やその家族を期限を設けることなく受け入れ、国家を維持する政策は考えていない』と説明。そのうえで、『労働環境の改善、日本語教育の充実、住宅入居支援、社会保障への加入促進などを検討している』と述べ、外国人受け入れ体制の整備を急ぐ考えを示した。

消費税の10%への引き上げに関しては『あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないように全力で対応する』と語った。

憲法改正については『全ての自衛隊員が強い誇りを持ち、任務を全うできる環境を整えることは今を生きる政治家の責任だ』と強調。憲法への自衛隊明記への意欲を重ねて示した。

日韓関係をめぐっては、韓国海軍による海上自衛隊への旭日旗掲揚の自粛要請や、韓国の国会議員による島根県・竹島への上陸などに言及。『未来志向の関係構築に向けた協力を確認しているのに、逆行するような動きが続いているのは遺憾だ』と述べた。立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、自民党の稲田朋美筆頭副幹事長の質問に答えた」。

「安倍晋三という保守政治家が外国人の受け入れを進め、本来進めるはずのリベラルが反対する、不思議だ」は、正鵠を突いている。入管法改正に反対する野党(リベラル)は、国民から政権担当能力なしとのレッテルを貼られるが。

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