日刊労働通信社 | 4勝3敗

4勝3敗

コラム 政治

 
産経の「決める政治の行方」「安倍政権発足1年」㊦に、「外交・安保『宿題』どうする』「尖閣、首脳会談拒否・・変わらぬ中韓」が書かれている。
 
「『戦場で散った方のためにご冥福をお祈りし、リーダーとして手を合わす。それ以外の何ものでもない』。靖国神社参拝から一夜明けた27日。安倍晋三首相は記者団にこう語り、引き続き各国に対し真意の説明に努める考えを示した。
首相は第2次政権発足から丸1年となった26日まで、常に中国、韓国の出方をうかがってきた。春と秋の例大祭での参拝を見送っても中国は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺への領海侵入を繰り返し、韓国の朴槿恵大統領は執拗に歴史認識問題を持ち出して対話のドアを閉ざし続けた。そして首相周辺が『靖国参拝を決断するダメ押し』と証言するのが、小銃の銃弾提供をめぐる韓国の反応だった。
『ダメだ。どうせ銃弾の口径が同じなのは日本だけなのだから、すぐに分かる。提供を決めた時点で表に出せ』。首相は22日、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に参加する韓国軍への銃弾1万発の提供を求めつつ、『日本からの提供』の非公表を求める韓国の意向を伝えた事務方に『ノー』を突きつけた。
『積極的平和主義』を掲げる首相にとって、国連の要請に基づく緊急かつ人道上の必要性が高い銃弾の無償提供は、理念を行動に移す絶好の機会でもあった。
だが、韓国国防省の報道官は24日、銃弾が『不足していない』と強弁。在京の韓国大使館が正式に要請し、現地の韓国軍は謝意を述べたのに、韓国から外交ルートでの感謝は表明されていない。
9月のロシアでの20カ国・地域(G20)首脳会合の控室で、首相は朴氏と会話したが、握手した事実は韓国の要請で伏せられた。靖国参拝前から韓国の体質は何も変わっていない。『相手が求めて来ない限り、無理にこちらが近寄ることはない』。最近、首相は周辺にこう漏らすことが多くなっていた。
<4勝3敗目指し>
さかのぼること1年前。自民党が衆院選で圧勝し、第2次政権発足の準備に入っていた首相は、就任が内定していた秘書官の『政権運営は4勝3敗でいきましょう』との提案に、『そうだね』と深くうなずいた。
4勝3敗で勝ち越し――。それは、平成18年9月からの第1次政権で『7勝0敗』を目指し全力疾走した自身の教訓でもあった。『戦後レジームからの脱却』を掲げ、国民投票法や防衛庁の省昇格などの成果を挙げながらも、病気により1年で挫折した。
経済政策『アベノミクス』を掲げて再登板した首相は27日、在任367日を迎え、366日で終わった第1次政権を上回った。首相と閣僚が同じ顔ぶれで1年以上続いたのは、宮沢喜一内閣(3年11月~4年12月)以来。首相の思いはひとしおだったに違いない。
国家安全保障会議(NSC)創設など着実に第1次政権の『宿題』を実現させた一方、首相にとっては積み残しもあった。憲法改正と集団的自衛権の行使容認だ。
首相は19年5月、有識者による諮問機関『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』を発足させたが、4カ月後に退陣。懇談会の提言は雲散霧消した。首相は8月、内閣法制局長官に小松一郎駐仏大使を起用した。内閣法制次長からの昇格という慣例を破り、初めて外務省から起用された小松氏は、行使容認が持論だった。
同じころまで、首相は憲法改正の発議要件を緩和する96条改正の先行にも意欲を隠さなかった。だが、ほどなく官邸サイドから『打ち方やめ』の指示が出ると、『年内の容認』は終止符が打たれ、憲法改正論議も影を潜めた。
最大の理由は公明党の存在だ。山口那津男代表は7月の参院選で、政府が行使容認に踏み切った場合の連立政権離脱をちらつかせた。参院選で勝利した与党は、衆参のねじれを解消したばかり。『決める政治』を手にした首相は、『4勝3敗』を地で行った。
<最優先は経済>
首相は『来年も最優先は経済だ』と強調する。『デフレを脱却し、賃金を上げ、津々浦々まで景気回復を実感してもらわなければ、その先にやりたいこともできなくなる』との思いからだ。ただ緊張の度を増すアジア太平洋地域の外交・安全保障情勢を考えれば、首相が持論とする集団的自衛権の行使容認などは待ったなしの課題でもある。引き続き経済重視か、それとも『安倍カラー』の本格始動か。来年は、その間で悩む1年となりそうだ」。
「4勝3敗で勝ち越し――。それは、平成18年9月からの第1次政権で『7勝0敗』を目指し全力疾走した自身の教訓でもあった」は、正論である。
安倍首相は「来年も最優先は経済だ」と強調するが、集団的自衛権行使容認も待ったなしである。
問題は、集団的自衛権行使容認をいつ決めるか、である。タイムリミットの年末にならざるを得ない。4月の消費増税で、景気失速するから、その回復に秋までかかるからである。秋まで経済最優先で4勝を稼ぎ、秋以降の集団的自衛権行使容認で3敗を覚悟し、14年全体で1つ勝ち越すとの戦略である。政権の命綱は、経済最優先で先ず、4勝を稼ぐことに尽きるが。
 
朝日に「都知事選、本命なく越年へ」「自民、舛添氏望む声も」が書かれている。
「東京都知事選(1月23日告示、2月9日投開票)に向けた政党の候補者選びが難航ぎみだ。各党とも『本命候補』の決め手に欠け、他党の出方を探るにらみ合いの状態が続く。与野党とも、候補者の本格的な絞り込みは年明けに先送りされそうだ。
自民党都連会長の石原伸晃環境相は仕事納めの27日、石破茂幹事長らと党本部で会談し、都知事選の対応を協議した。『自民党が前面に出ないほうがいい』。石原氏は周囲に再三、こう釘を刺している。
石原氏がこう指摘するのは、自民は過去の都知事選で苦杯をなめ続けてきたからだ。党本部主導で勝利したのは1979年に初当選した鈴木俊一氏が最後だ。だが今回は、7年後の東京五輪の成否を握る知事を選ぶだけに、国政と連携できる人選が欠かせない。候補者選びでは党本部が前面に出ざるを得ないが、候補が絞り込めず、党内には焦りもにじむ。
自民は21~23日の週末、独自の知名度調査を実施。元自民党参院議員で元厚生労働相の舛添要一氏がトップで、小池百合子氏ら現職国会議員は下位に沈んだ。加えて、仮に国会議員から知事選候補を出せば、欠けた国会議員を選ぶ補欠選挙は、消費税率引き上げ直後の4月に実施される。増税直後は安倍政権や与党に逆風が吹くことも予想されるだけに、国政の補選は避けたいところ。党幹部は『国会議員からは出さない』と明言する。
行政経験のある『非議員』で、知名度があり、無党派層にも強い――。こんな理由から、『舛添氏より有力な人がいない』という流れができつつある。だが、舛添氏は知名度が高い半面、自民の野党転落後に離党し、除名処分を受けた過去がある。『党が一番つらい時期に逃げ出した』との声も一部にある」。
自民党の21~23日実施の知名度調査で舛添氏がふた桁台でトップになったが、安倍首相の意向は「行政経験のある女性」であり、村木厚子・厚労省事務次官が急浮上している。与党候補は、舛添氏と村木氏の一騎打ちになるが。
  
編集 持田哲也

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