日刊労働通信社 | 力の論理の破たん

力の論理の破たん

コラム 国際




朝日に「豪・欧硬化、ロシア孤立」が書かれている。



ロシアは政治、経済の両方で味方を失いつつある。多数の犠牲を出したオーストラリアでは11
月にブリスベンで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に『ロシアのプーチン大統領
を呼ぶべきではない』との声が高まっている。

ロシアはクリミア併合を巡り主要国(G8)から排除されたばかり。G20からも締め出されれ
ば、国際社会での孤立は決定的だ。オーストラリアは国連安保理の非常任理事国でもあり、マレー
シア機墜落の国際的な調査を求める決議採択にも動き出している。

経済的な結びつきが強い欧州も離れつつある。『ロシアはウクライナ問題に責任を負っている。
ロシアの大統領と政府は政治解決に向けて役割を果たすべきだ』。ドイツのメルケル首相は18
日の記者会見で、いつもより厳しい表現でロシアに対応を迫った。

ドイツは天然ガスの3割以上をロシアに頼り、ロシアに一定の理解を示す世論も根強かった。だ
が、独国民4人が死亡した墜落事件で風向きは変わりつつある。

欧州連合{EU}の変化はロシア経済にとって深刻だ。同国の金融市場では、16日の米国の追
加制裁を受け、すでに株や通貨ルーブルが売られている。輸出も輸入も約4割を依存するEUが
米国の制裁に同調すれば、影響ははるかに大きい。

本格的な原因調査が始まる前から親ロシア派による撃墜という前提が独り歩きしている現状に、
ロシアはいら立ちを募らせている。ただ、それ以外の可能性を説得力を持って示すこともできず、
防戦一方だ。

ロシア国防省のアントノフ次官は19日、『ロシアに対する情報戦が続いている』と述べた。そ
のうえで、ロシア側の反論を当日のウクライナ軍機のすべての飛行記録を示せるか、など『ウク
ライナへの10の質問』という形で公表した。

ロシアのプーチン大統領は19日、メルケル独首相と電話会談。ロシア側発表によると、詳細で
客観的な究明が必要だという認識で一致した。ただ、プーチン氏が各国からの批判に対してどう
説明したかは不明だ」。

ロシアは、マレーシア機撃墜の情報戦で敗北濃厚である。米国主導のロシア関与の親ロシア武装
勢力主犯説が定説となっているからである。国際世論もそれ一色である。紛れもない事実だから
である。



問題は、いつ。プーチン大統領が、「主犯説」を認め、謝罪し、親ロシア武装勢力への支援を中
止、停戦に応じるか、である。時間の問題であ輸入の4割を依存するEUが、米国の制裁に同調
するからである。プーチン大統領の力の論理の破たんである。




編集 持田哲也

 

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