日刊労働通信社 | 「9条2項維持・自衛隊明記が自民党案に」

「9条2項維持・自衛隊明記が自民党案に」

政治

産経の主張に「総裁選と憲法9条」「自衛隊明記の意義を説け」「ゴールは『2項削除』と確認を」が書かれている。

「自民党総裁選は、安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなる公算が大きい。まず、憲法改正が主要な争点となっていることを歓迎したい。

今後3年間の日本の舵取りを論ずる上で、憲法改正から目をそらすわけにはいかない。国の基本法の改正は、よりよい国造りに欠かせない。なぜ憲法を改めなければならないのか。どのような改正をどう実現していくつもりなのか。国民や党員に具体的に訴え、約束する論戦を展開してほしい。

<主要争点化を歓迎する>

施行から71年がたった憲法と現実世界との乖離は大きくなるばかりだ。その最たるものが安全保障分野だという問題意識を安倍、石破両氏は共有しているはずだ。

防衛力を整備し、侵略者から国民を守り抜くことは国の最大の責務である。ところが、現憲法にはそのための規定が欠けている。

首相は現行の9条を残しつつ、自衛隊の存在を憲法に明記する党の加憲案を、秋の臨時国会に提出する考えを示している。

石破氏は、改正を急ぐべき項目として、参院選の合区解消と大規模災害に備える緊急事態条項の創設を挙げた。自衛隊明記には緊急性がないとし、国民の理解を得た上で、戦力不保持を定めた9条2項を削除して、軍の保持を定めるよう唱えている。

多くの国民は自衛隊を合憲と認め、活躍に期待している。だから自衛隊の明記だけでは改憲の意味がないという議論が存在するが、果たしてそうか。

9条を旗印にした空想的平和主義や、自衛隊違憲論に基づく軍事忌避の傾向は今も存在し、防衛努力を妨げている。

北朝鮮の核危機や中国の軍拡を前にしてなお、防衛省が資金提供する軍民両用の先端研究を忌避する大学や、研究機関が存在している。日本の義務教育では、抑止力や同盟といった安全保障の初歩的知識すら教えていない。

自衛隊の明記は、これらの問題を解消するきっかけにできる。

平和のために国が防衛力を活用する場合はあり得る。必要なら集団的自衛権の行使で仲間の国同士が守り合うことが国連憲章で認められている。世界の常識を国民が共有し、日本の安全保障論議の底上げをはかる意義は大きい。

国民投票で自衛隊明記を決めることは、命をかけて日本と国民を守る自衛隊を国民が支える意思表示にもなる。

もちろん、9条2項を削除して自衛隊を軍に改め、法律と国際法が禁じた以外は、柔軟に行動できるようにすることが憲法改正のゴールであるべきだ。

衆参各院での3分の2勢力の形成に必要な公明党の理解がすぐに得られる段階ではないが、これなくして、日本の安全保障改革は完成しない。

<緊急事態条項も急務だ>

安倍首相と石破氏は、第一歩として自衛隊を明記し、その後、9条2項削除の実現を目指すことで協力してもらいたい。

緊急事態条項の創設も急務である。備えるべきは、南海トラフの巨大地震や首都直下型地震といった天災(自然災害)にとどまらない。日本に対する核ミサイル攻撃や南西諸島方面への侵略など有事がもたらす人災にも備える憲法上の規定が必要である。

自民党憲法改正推進本部が検討している改正案には、緊急事態を天災に限定する欠陥がある。『大規模な天災には備えるが、大規模な人災には備えない』:憲法などあってはなるまい。

自由や権利を享受する国民の命とそれを保障する憲法秩序を守るため、再考してほしい。

憲法改正は、自民党内で論議しているだけで満足しているわけにはいかない。麻生派は安倍首相に対し、来年夏の参院選前に憲法改正国民投票の実現を求める政策提言を提出した。

平成24年12月に第2次安倍政権が発足してから5年8カ月がたった。憲法改正に前向きな勢力が衆参各院で3分の2以上を占めても憲法改正は実現していない。

その理由の一つが、政局を理由に改憲論議にブレーキをかけてきた立憲民主党などとの『合意』にこだわりすぎた憲法審査会の停滞にある。審

査会規定にのっとり、改正論議に前向きな与野党が主導する運営に改める時期にきている」。主張の主旨である「自衛隊明記の意義を説け」は、正論である。自民党総裁選は、安倍晋三首相と石破元茂元幹事長との一騎打ちとなるが、主要争点は、安倍晋三首相主導の9条2項維持・自衛隊明記案の是非となる。安倍晋三首相が3選を目指す最大の動機だからである。自民党の党是であり、祖父からの悲願である憲法改正を2020年に施行するためにである。

問題は、憲法改正発議を何時為し、国民投票を何時為すかとのタイムスケジュールである。来年7月の参院選の圧勝が絶対条件となる。そのスタート台が総裁選との位置づけになり、圧勝が必須となる。結果として、安倍案である9条2項維持・自衛隊明記案への一本化がなる。だからこそ、朝日・野党は石破氏を支援するのである。石破氏の主張も、朝日・野党に迎合し、もりかけ問題を駆使しての「正直」「公正」をキャッチフレーズにし、9条改正論には慎重姿勢を示している。石破氏は自民党の党是に反しており、大儀名分がない。結果、自民党支持層で石破支持は20%にとどまっている。安倍支持は60%を超えているのに、である。安倍晋三首相の圧勝となるが。

産経の「正論」に神谷万丈・防衛大学校教授が「中国との体制間競争を勝ち抜け」を書いている。

「冷戦期は、自由・共産両陣営が体制の優位を競い合った時代だった。だが冷戦後、リベラルデモクラシー諸国は、中国に対してはそうした考え方を控えてきた。中国を打ち負かすのではなく発展を助けることで、中国の体制をより自由な方向に動かそうというのがその対中戦略の基本だった。

<動揺するリベラル国際秩序>

現在われわれは、リベラルな価値や理念の受け入れを拒む中国の自己主張の強まりを前に、過去数十年の東アジアと世界の平和と繁栄の基盤になってきたリベラル国際秩序が動揺するという現実に直面している。今われわれに求められているのは、自由な諸国と中国との体制間競争が既に始まっており、リベラル国際秩序が守られ得るかどうかは、その結果にかかっているという認識を持つことだ。

21世紀に入る頃から、日米欧などは、中国にリベラル国際秩序を支持させようとする働きかけを続けてきた。世界貿易機関(WTO)などの国際機構に迎え入れてさまざまな形で関係を深めれば、中国も国際ルールを尊重するようになり、相互依存の中で既存秩序の維持を利益とみるようになるだろう。また、中国の発展を助ければ徐々に民主化も始まり、リベラルな価値の受容も進むだろう。そのように考えられたからだ。

だが、豊かさと強さを手にした中国は、反対に共産党独裁と言論・思想統制の強化に動いた。対外的にも、南シナ海や東シナ海でみられるように、国際的なルールを守るよりも、力で現状を変えようとする姿勢が目立ってきている。

<世界はいずれの体制を選ぶのか>

最近では、既存のリベラル国際秩序を支えるのではなく、中国主導でその改変を図りたいという意志が表明されるようにもなった。たとえば習近平国家主席は、6月の中央外事工作会議で、中国が『グローバルな統治システムの改革に積極的に関わり、リードしていく』と述べている。

これまでわれわれは、中国は、安全保障面では脅威でも、経済面では協力すべき相手なのだから、競争とか対決とはあまり言うべきではないと考えてきた。だが、今や、経済面を含めて中国と正面から対峙し、自由で民主的な体制と中国的なるものとのいずれが優れているのかをめぐり、決然と競争することが求められているのではないだろうか。

これは、中国をいたずらに敵視せよということとは違う。近い将来経済規模で世界一になる可能性が高く、人工知能などの最先端技術でも躍進著しい中国とは、仲良くできるならばそれにこしたことはない。だが、協力を追い求めるあまり、対中競争を恐れることがあってはならないということだ。

われわれは、リベラルな国際秩序を守りたい。そのためには、世界の国々がわれわれの秩序と中国的秩序とのいずれを選ぶかが重要だ。世界に対し、日米欧のような自由で民主的な体制が中国の体制よりもよいものであることを示していくことが求められている。

そのためには、経済や技術力で中国に負けないことが必須の条件だ。中国の体制の欠点を批判するだけでは対中競争には勝てない。現実の経済や技術で中国が自由な国々よりも実績を残せば、誰がどう批判しようとも中国に引きつけられる国は増えてしまうだろう。

政治的にも、リベラル民主社会の素晴らしさを世界にアピールできなければならない。言論の自由が保障され、男女が平等で、少数派が迫害されず、社会の開放性が保たれている。そうした社会がいかに住みよいものなのかを、説得的に示さなければならない。

<魅力ある経済と社会の構築を>

1963年6月26日、西ベルリンを訪れたケネディ米大統領は、30万の聴衆に『私はベルリン市民である』と語りかけた。共産圏に浮かぶ自由主義の孤島となっていた西ベルリンの人々を勇気づけたこの演説は、冷戦史上最も記憶されている瞬間のひとつだ。だが、彼が次のように述べたことを覚えている人はどれだけいるか。『共産主義が未来の波だという者がある。彼らをベルリンに来させよう。…共産主義が邪悪な体制であることは確かだが経済的進歩を可能にするという者さえある。彼らをベルリンに来させよう』

ケネディは、東西競争の帰趨はベルリンに行けば一目瞭然だと言い、それに誰もが納得した。ソ連は、西側の自由と繁栄を東側の目から隠すために、ベルリンの壁を築かなければならなかったのだ。

だが今日の中国は違う。北京や上海を見た人は、その繁栄に圧倒される。中国の体制は自由でも民主的でもないが、経済的進歩は疑いなく可能にしているのだ。他方、リベラル民主社会の魅力は、トランプ大統領の言動によって徐々に蝕まれつつある。

世界の多くの国が中国を『未来の波』とみなし、手本にしたいと思うようになってしまえば、リベラル国際秩序の将来は暗い。この秩序を守りたいならば、われわれは、経済でも社会の魅力でも、中国との体制間競争には負けられないのだ」。

コラムの主旨である「中国との体制間競争を勝ち抜け」は正論である。米中貿易戦争がそれである。日本はトランプ政権側に立つべきである。米中貿易戦争は、邪悪なる中国共産党一党独裁体制を潰すための戦いだからである。

朝日の「自民党2018総裁選」に「石破氏、首相との違い強調」「政策発表 行政の信頼回復策提示」が書かれている。 

『自民党の石破茂元幹事長が27日、国会内で記者会見し、総裁選(9月7日告示、20日投開票)で掲げる政策を発表した。森友・加計学園問題で失墜した行政の信頼回復に向けたメニューを提示。地方に軸足を置く『ポストアベノミクス』なども提唱し、安倍晋三首相との違いを強調した。

<100日プラン>

10日の立候補表明会見に引き続き訴えたのが、森友・加計問題を念頭にした『政治・行政の信頼回復100日プラン』だ。

国家公務員の幹部人事を握る内閣人事局の運営の見直しのほか、官邸主導の政策推進プロセスの透明化や官邸スタッフの面会記録の保管義務化などを列挙。公文書改ざんの再発防止に向け、全省庁に公文書管理監を置くことや改ざんが不可能なシステムをつくり、各省庁に法令順守調査室を設置することなどを掲げた。また、官邸で乱立する会議を再編し、『日本創生会議』を新設する考えも示した。

<地方経済に軸足>

経済政策では、安倍政権下での成長戦略や地方創生の失敗を指摘する資料を配布し、異次元の金融緩和という『カンフル剤』が効いている間に地方と中小企業の成長を高める『ポストアベノミクス』を主張した。『地方創生推進機構』を立ち上げ、中小企業を支援する考えも示した。

ただ、アベノミクスによる雇用や企業収益の改善については『素晴らしいことは素晴らしいと評価すべきだ』とたたえた。株高を進めたアベノミクスへの批判が、『石破首相で株価が下がるとのレッテル貼り』(石破派幹部)につながることを懸念したためだ。

<対等な地域協定>

外交では、安倍首相とトランプ米大統領の『蜜月』を評価しつつ、『友情と国益は別と認識しなければならない』。北朝鮮の拉致問題や核・ミサイル問題解決のため、東京と平壌への連絡事務所設置を提案した。

また、米国内に自衛隊の常設訓練場を創設し、在日米軍と対等な地位協定につなげる考えを強調。将来的な集団安全保障体制の構築を念頭に、豪州やインド、北大西洋条約機構(NATO)との連携にも意欲を示した。憲法改正には『スケジュールありきとは思っていない』と述べた。

<「正直公正」は政治姿勢と説明>

自民党の石破茂元幹事長は27日の記者会見で、見直しに言及していた総裁選のキャッチフレーズ『正直、公正』について、自身の『政治姿勢』として変わらないと強調する一方、『自分の政治姿勢と政策のスローガンは当然峻別されてしかるべきだ』と語った。

この日に配布したリーフレットには『正直、公正』が記されたものの、石破氏は今後は政策論議に軸足を移すことになるとして『政策論を展開するにあたり、スローガンは当然変わる』とも説明した。

『正直、公正』をめぐっては、森友・加計学園問題を想起させるとして、石破氏を支持する参院竹下派などから『首相への個人攻撃』との不満が噴出。石破氏は25日に見直しに言及したが、今度は石破派内から『ぶれたような印象を与える』(幹部)との懸念の声が上がっていた」。

石破氏は27日、国会内で記者会見し、総裁選で掲げる政策を発表したが、肝心なアベノミクスの代案は出せずに終わった。市場が安倍3選を望み、アベノミクスの継続を希求しているからである。石破首相になれば、株価暴落必至となる。国政選挙5連勝の勝因はアベノミクス効果であることを、自民党支持層は承知しているので来年の参院選の顔として安倍晋三首相を選ぶのは必然となるが。

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