日刊労働通信社 | 「海洋放出は国際標準」

「海洋放出は国際標準」

政治

朝日の社説に「福島の汚染水」「海洋放出ありきではなく」が書かれている。

「東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水を、そう取り扱うべきか。政府が福島県富岡町、郡山市、東京都内で開いた公聴会で、今後の方針を決める難しさが浮き彫りになった。

炉心を冷やすための注水や地下水の流入で、いまも日々、放射能で汚染された水が生じている。浄化装置で大部分の放射性物質を除去しているが、トリチウム(三重水素)を取り除くことはできていない。

トリチウムを含む汚染水は、原発敷地内のタンクに移して保管されている。その数が900基に増え、徐々に用地がなくなりつつある。政府は2020年ごろ限界になるとみており、今後の方針を決めるまでの時間的な余裕はあまりない。

経済産業省の作業部会は『薄めて海に流す』『深い地層に注入する』『水蒸気にして大気中に出す』など5案を検討した結果、海洋放出であれば費用と期間を最小にできるとの評価をまとめた。政府内では、この案が最も有力視されている。

たしかに、トリチウムは自然界でも生じているほか、全国の原発は運転中にできたトリチウムを法定基準に従って海に流している。しかし、だからといって、福島の海に汚染水を流せばいいと考えるのは早計である。

いまだに福島産の食品の輸入を禁じる国々があるなか、地元や漁業や農業の復興に努力を重ねている。ここでトリチウムを海に流されたら風評被害が広がる、と懸念するのは当然だ。公聴会でも海洋放出への反対意見がほとんどだった。

しかも先月、基準を超える放射性のストロンチウムやヨウ素が汚染水に残っていたと報じられた。地元は『話が違う』と不信感を募らせている。わずか3カ所の公聴会では不十分なのは明らかだ。政府はもっと対話の努力を重ねてもらいたい。

その際、海洋放出ありきの姿勢では議論が成立しない。ほかの選択肢も真剣に検討することが信頼関係の礎となる。

たとえば、今回の公聴会では『放射能が弱まるまで大型タンクで保管してはどうか』という提案が相次いだ。この提案をはじめ、さまざまな選択肢の長所と短所を冷静に見きわめて議論する必要がある。

広く社会に受け入れられる方針を決めるには、専門家に地元住民を含む市民も加わって意見交換を積み重ねることが不可欠だ。政府や東電は議論の材料となる情報を十分に開示し、丁寧に説明しなければならない。合意づくりは、原発を国策としてきた政府の責任である」。

社説の主旨である「海洋放出ありきでなく」に異論がある。

トリチウムを含む汚染水は、原発敷地内のタンクに移して保管されているが、その数は900基に増え、用地がなくなりつつあり、2020年が限界となり、その対策として、政府は「薄めて海に流す」「深い地層に注入する」「水蒸気にして大気中に出す」など5案を検討したが、費用と期間を最小にできるからと海洋放出案を有力した。

問題は、トリチウムを含む汚染水の海洋放出は、国際標準であり、海外と国内でも実施済みであり、問題は発生していない。そもそもトリチウムは発する放射線のエネルギーが弱い上に、体内に取り込まれても速やかに排出される。科学的根拠と実績を踏まえての海洋放出なのである。規制委も唯一の解決策としている、風評被害への反対はあるが、最後は、安倍晋三首相の政治的決断による以外にない。

朝日の「平成とは」④に「安定も変化も未来像探す若者」が書かれている。

「気温35度の土曜日。額から汗を垂らしながらビラを配る年長世代を、若者たちが軽い身のこなしでひらりと避ける。見ていて、いたたまれない気持ちになる。

『おばあちゃんの原宿』と呼ばれる東京・巣鴨の駅で、改憲に反対する活動に立ち会った。若者グループSEALDsに影響を受けて結成した主に60代以上の人たちで、その名もOLDs。      

街頭に立つのは170日を超えたが、『若者で署名するのは1万人に1人』と大学名誉教授の高橋正明さん(73)は言う。今の政権でいいんですかと呼びかけると『いいでーす』と答える。『安倍さんをいじめないで』と言った人もいた。

メンバーが若かりし頃、世界で若者が反政府デモをしていた。だが今、若い世代の政権与党への支持は高い。昨年の総選挙の出口調査で比例区の自民党に投票した人は60代で29%だったが、20代は47%に上った。

教育のせいなのか。周囲から浮くのを恐れるのか。50代の記者も加わって議論したが、答えは出ない。

無知や無関心が理由の一つではという声もある。なら、いわゆる意識高い系はどう考えているのだろう。

中立的な立場で若者の政治参加を促しているグループの会合で聞いてみた。『政権支持イコール保守化ではないのでは』と学習院大2年の男子学生は言いつつ、こう続けた。『野党を選びリスクを避けて現状維持を望むのは確かです』

多感な頃、政権交代と東日本大震災を経験した。大人たちの民主党政権への評価と比べると、安倍政権は大きな失点がないように見える。就職も好調だから交代を求める理由がない。

大学に入って政治に興味を持ったという東京学芸大3年の女子学生は、自分をリベラルだと考える。LGBTの権利擁護や女性差別撤廃に強く賛同する。その上で、昨年の総選挙で投票したのは自民党だった。

朝日新聞の切り抜きをよく送ってくる70代の祖父母は、今の政権は戦争ができる国にしようとしていると言う。『でも、ピンと来なくて。憲法9条で日本が守られているとは思えない。公文書偽造やモリカケ問題はもちろん擁護できないけれど、私たちの世代は経済の安定を強く望むから、消極的支持でも与党を選ぶ』

多くの若者に話を聞いたが、共通するのは『安定志向』だった。それに憲法9条に対するこだわりのなさが加わる。平成の終わり、若い世代が願うのは『現状維持』だけなのだろうか。

≪保守と革新従来の常識とは逆≫

早稲田大学准教授の遠藤晶久さん(40)は6年前、政治意識の調査をして、あることに気づいた。『若い世代に何かが起きている』

学生に政党名を示し、『保守』と『革新』の間に位置づけてもらう。パソコン画面で回答者がどこに視線を向けたかが分かる。

自民は保守であり、社民や共産は革新政党だというのが『政治の常識』だ。しかし、回答者は目をさまよわせていた。

うーんと思ったのもつかの間、遠藤さんは驚くべき視線の動きを目にした。通常は保守とされる日本維新の会で迷わず『革新』を選び、逆に共産党は『保守』寄りだったのだ。

年長世代とは正反対の結果が出たのは、なぜか。知人の研究者に聞いて回ったが、みな首をかしげた。その後も調査を重ねると、20代から40代までが同じ傾向を示していた。

これは『若者は無知だから』と切り捨てる話ではないと遠藤さんは考える。若い世代は、革新という政治用語を『変化』や『改革』ぐらいの意味だととらえているのだ。『世代を超えて通じ合う政治の言葉が失われつつあるのではないか』

当初、自民は保守側に位置していたが、最近は真ん中に寄っている。これは若い世代に改革政党と映り始めていることを意味する。

『安定』だけではなく、『改革』という言葉が若者に響いているのはなぜか。

政治に足を踏み入れた20代に会った。田中将介さん(25)は今年4月、東京都練馬区長選に立候補した。

学生時代に国際NGOの一員としてカンボジアに行き、人身売買や児童買春を防ぐ活動をした。一方で、『反安倍』を連呼するデモや野党のあり方には違和感を抱き続けてきたという。

『国会デモも見に行ったけど、政権を倒した後にどうするのかというビジョンがない。文句を言っているだけでは何も変わらない』

そういう自分は、新卒で大手メディア企業を志願し、全滅した。親元を離れてフリーの記者を始めたが、月収1万円以下の時もあり、パックご飯に納豆でしのいだ。それでもリスクを取らないと何も変わらないとネットで選挙資金を集めた。

街頭演説で上の世代に親指を下に向けるしぐさをされ、ネットで『中学校の生徒会長の方がマシ』と罵倒された。72歳の現職には遠く及ばなかったが、得票率は10%を超えた。

『僕らの世代は、10年先の未来さえはっきり見えない。日本社会がどうなるのか、不安しかない。だから自分たちで変えないと』

こんな考え方について、思い当たることがある。

≪日本が取り残されている感覚≫

平成に入り、バブル崩壊後に企業は新卒採用を減らす。同時に小泉政権の規制緩和で   派遣、契約といった非正規雇用が大量に生まれた。その世代について、私を含めた取材班は2007年『ロストジェネレーション』という連載をした。 

当時、取材をした若者もこう言っていた。『社会も会社も当てにならない。僕らの世代は、自分しか頼りにできない』  

内閣府が13年、日米韓など7カ国で行った意識調査で『将来の希望がない』と答えた日本の若者は38%と最多だった。  

現状維持を求めるのは、若者が日本社会に見捨てられ様子を見ているから。将来に不安を抱えるからこそ、同時に『変わらなければ生きていけない』と考える。それを理解していなかった私に、耳の痛い意見を述べる人がいた。

作家の橘玲さんは『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』(朝日新書)を6月に出版し、『朝日新聞に代表される戦後民主主義が嫌われる理由』を説いている。

『リベラルは本来はより良い未来を語る思想のはずなのに、日本では現状を変えることに頑強に反対している』

グローバル化に適応できず、長期低迷が続く平成の日本で、不安定雇用や少子高齢化に直面する若い世代の目に、リベラルは『守旧』に映るというのだ。

平成の次が近づき、変化も兆している。今年5月、40代以下の国会議員が若者政策推進議連を結成した。設立に奔走した室橋祐貴さん(29)は言う。『日本が取り残されている感覚を僕らの世代は持っている。10年、20年後の未来を提示できていないのはリベラルも保守も同じ』  

若者議連には自民、共産など左右問わず6党の約40人が参加し、供託金や被選挙権年齢の引き下げに向けて活動をしている。狙いはもちろん、若者を政治へ送り込むことだ」。

リベラルは「守旧派」、自民党は改革政党とのイメージを20代、30代が共有している。野党共闘は、立憲+共産+国民+自由+社民で10%、自民党40%の4分の1に過ぎない。改憲は「改革」、護憲は「守旧」となり、9条に自衛隊明記は、国民投票で過半数を得るが。

産経の「石平のChina Watch」に「国内経済脅かす『消費降格』」が書かれている。

「中国のネットで先月以降、『消費降格』という言葉が大きな話題となっている。消費降格とは『消費のレベルが下がった、下げた』という意味合いである。若者を中心とした多くのネットユーザーは『微博(ウェイボー=中国版ツイッター)』や各種の掲示板・コメント欄などで自分たちが今、外食・外出・衣類の購入などを控えて節約に励んでいることを自重的に語って人気を博したり、『貧乏自慢』や『節約術自慢』を競い合って大いに盛り上がったりしている。

8月23日、ニューヨーク・タイムズの中国版サイトで、袁莉という中国人記者が書いた記事が掲載された。『子供を産まない、デートしない、中国は〝消費降格″の時代を迎えたのか』というタイトルである。記事は、中国国内での幅広い取材に基づいて、都市部に住む多くの若者たちの消費志向と実態を次のようにリポートしている。

彼らの多くは日常生活においてはタクシーよりも自転車、外食よりも自炊、バーでカクテルを飲むよりも自宅で缶ビールを飲み、出費の多いデートより、1人でスマホをいじることを好むという。そして、人生設計において一部の若者たちは未来の経済状況に対する不安から、子供を産むことを断念し、自らの老後のために貯蓄に励む道を選んだというのである。

このような内容の記事が掲載されると、全国さまざまなサイトで転載され、広く読まれた。『消費降格』に関するネット上の議論はより一層盛り上がったのである。

こうした中、安酒の代名詞ともなっている『二鍋頭』という銘柄の中国酒のメーカーと、全国でよく食べられている搾菜という漬物のメーカーが両方とも業績を大幅に伸ばして株価を上げた。それもまた『消費降格』を表す現象として注目されている。安酒を飲みながら『ご飯に搾菜』という食生活を送っている人が増えていることが分かったからである。

即席ラーメンの消費量が増えていることも注目されている。例えば中国で特に人気のある『康帥傳』という銘柄の即席ラーメンの場合、今年上半期の売上総額は前年同期比で8・4%増となった。これはカップラーメンをすすって食事を済ませる人が増えていることを示している。

自動車市場の動向にも異変があった。今年7月、全国の自動車販売台数は前年同月比では4%減、前月比では何と16・9%も減少した。一部専門家の分析では減少の傾向は今後も続きそうだという。

8月中旬に国家統計局が発表したところによると、7月の全国の社会消費品小売総額の伸び率は、前年同月比1・6ポイント減となって15年ぶりの低水準となっている。『消費降格』が単なるネット上の噂や人々の主観的な感覚ではないことが、客観的な統計数値によっても裏付けられた。

もちろんそれは、中国経済全体にとっては由々しき事態である。これまでも慢性的な消費不足はずっと、中国経済成長の最大のネックとなっている。日本や米国の個人消費立は60~70%であるのに対し、中国のそれは37%前後。中国経済に占める国民の消費する割合は4割未満しかないのである。

消費が不足しているが故に、中国はずっと、投資と輸出の拡大で経済の成長を引っ張ってきている。しかし今、国内投資の過剰と『一帯一路』構想の失敗によって投資の伸びは大きく鈍化しており、米国から仕掛けられた貿易戦争においても、中国の対外輸出は大きく減少していくであろう。

こうした中で、中国経済にとっての唯一の生きる道は内需の拡大であるのだが、『消費降格』が広がっていくと、『内需拡大』は夢のまた夢。中国経済は今後、絶体絶命の危機を迎える」。

コラムの主旨である「国内経済脅かす消費降格」は、正鵠を突いている。米中貿易戦争によって対米貿易黒字の大幅削減により経済成長が鈍化する中、唯一の生き残る道は内需拡大以外にない。そこに「消費降格」が広かれば、ゼロ成長となり、内乱誘発となるが。

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