日刊労働通信社 | <定義不明の差別>

<定義不明の差別>

政治

産経の「阿比留瑠比の極言御免」に「人権擁護法案の愚 繰り返すな」が書かれている

「同性愛者など性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案に関する自民党内の議論が、紛糾を極めている。その様子は平成19、20年頃に、人権擁護法案の是非をめぐって党内が二分され、最後まで話がまとまらなかったときに相似しており、既視感がある。
<定義不明の差別>
議論の焦点は、与野党の実務者が合意した法案の『性的指向および性自認を理由とする差別は許されない』との文言である。
もともとの自民党案では『性自認』の部分は、医学用語として使われる『性同一性』だったが、公明党の主張を入れてより広い概念に置き換えられた。また、立憲に配慮して『差別は許されない』と付け加えられた。
これに対し、自民党の保守派からこの2点は社会的混乱や、訴訟乱発などの悪用を招きかねないとの反論が出ている。自民党は当初、LGBTへの理解増進を求めていたはずなのに、いつの間にかあらゆる性的指向や性自認を同等に扱わないと『差別』だと決めつける差別禁止法案にすり替わっていたからである。
かつての人権擁護法案では、人権侵害の定義が曖昧で恣意(しい)的な運用が可能であることが問題となったが、今回は差別の定義が不明確な点がそっくりである。
『我(わ)が党は、蟻(あり)の一穴、活動家の強(したた)かさをわかっていない!』
SNSにこう記した自民党の長尾敬副幹事長は、その真意をこう語る。
『私は旧民主党に10年いたから、活動家らが<小さく生んで大きく育てよう>などと会話しているのを実際に聞いている。彼らは法律に<性自認>と記載されればそれを利用して運動を展開する。裁判で勝たなくても、好ましくない相手に圧力をかけ、社会的に追い込む道具として使う』
逆に長尾氏のところには、LGBT団体などから『性自認』とするのはやめてほしいという声が多く届く。理由はこうである。
『<性自認>を活動家が利用しだすと、人権侵害から救わないといけない人たちやLGBT団体が、特殊な人たちの集まりだという目で見られるようになる。むしろ差別を助長する』
それでは、人権擁護法案に関する議論はどんなものだったか。現在は、修正LGBT法案の推進に熱心な稲田朋美元防衛相は、こんな意見を開陳していた。
『(法案は)人権という美名の下に、もろ刃の剣になる可能性、危険性がある』(平成19年12月の自民党人権問題調査会)
『不当な申し立てをされた者の視点も考えてほしい。政治活動、表現の自由に対する重大な危険だ。民主主義の根幹にかかわる』(20年3月、同)
『法律をつくることによる弊害が大きい。こういった法律をつくる余裕がいったいわが党にあるのか』(20年5月、同)
『率直に意見を言う愛すべき政治家の活動すら、この法案が通れば非常に危うい』(20年6月、同)
同様の危険性と弊害がある2つの法案に対し、稲田氏の見解がここまで違う理由が理解できない。いつどうして宗旨変えしたのか。
人権擁護法案は安倍晋三前首相や故中川昭一元財務相らが防波堤となって止めたが、中川氏は筆者にこんなことも語っていた。
『ある記者からこう言われた。もしこの法律が成立したら、私の政治生命は3日、安倍さんは1週間で終わるのだそうだ』
リベラル全体主義に取り込まれ、左派活動家に利用されるようでは、自民党は存在意義を失う」。(論説委員兼政治部編集委員)阿比留瑠比の極言御免
門田隆将氏の新著に「新・階級闘争論」がある。性別や収入、学歴、人種、性的指向、職業、価値観など人間が持っている「差異」をことさら強調して、「差別の被害者」を生み出し、「階級闘争」に持ち込む手法で、左派メディア、左派活動家である共産党・立憲が多用している。LGBT法案もそれである。自民党案は当初、LGBTへの理解の増進を図る法案であったのに、立憲民主党に配慮して「差別は許されない」との文言が明記された。

問題は、「差別は許されない」の恣意的運用が可能となり、訴訟乱発、道徳的混乱が生じることである。自民党の山谷えり子氏が挙げた「体を男だけど、心は女だから女子トイレに入れろと意見書を出したり、女子陸上競技に参加してメダルを獲ったり、ばかげたことがいろいろ起きている」との批判がそれである。これが「差別は許されない」となるのか。女性の人権はどうなるのか。女子トイレを使う女性の人権は、女子陸上競技に参加する女子選手の人権は。「逆差別」となるが。

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