日刊労働通信社 | 村山談話・河野談話を踏襲せよ

村山談話・河野談話を踏襲せよ

コラム 国際

 
朝日の「集団的自衛権、行方を問う」に「ハーバード大ナイ教授に聞く」「ナショナリズムトの連動懸念」「憲法解釈見直しは『支持』」との記事が載っている。
 
「オバマ米政権に近い米国の知日派の代表格として知られる米国のジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授(元米国防次官補)が朝日新聞のインタビュー取材に応じた。安倍政権が進める集団的自衛権を巡る憲法解釈の見直しに向けた動きについて、安倍晋三首相の靖国神社参拝などを例示して『政策には反対しないが、ナショナリズムのパッケージで包装することに反対している』と語った。
「近隣諸国の理解を得ることを一層困難にしているとして、政権の取り組み方に懸念を示したものだ。集団的自衛権をめぐる日本の憲法解釈について、ナイ氏は『戦後の憲法で非常に限定的に解釈してきた。これをより広く解釈することは正当なこと』と語り、解釈見直しで行使を容認することを基本的に支持する立場を示した。
一方で、ナイ氏は首相の靖国参拝のほか、首相周辺が村山談話や河野談話の見直しに関する発言を続けてきたことを取り上げ、『日本が軍国主義に向かうのではないかと中国や韓国を不安にさせている』と指摘。『米国内でも、日本で強いナショナリズムが台頭しているのではないかとの懸念が出ている』と述べた。
 
ナイ氏は『日本の集団的自衛権行使はナショナリズムで包装さえしなければ、東アジアの安定に積極的に貢献しうる』と強調。現在のやり方は近隣諸国の反発を強めることになりかねないとして『良い政策を悪い包装で包むことになる』と注文をつけた。国際政治学者のナイ氏は、クリントン政権時代に米国家情報会議議長や国防次官補を歴任。「ナイ・イニシアチブ」と呼ばれた日米安保の再定義を推進するなど、対日政策に深く関わってきた」。
「日中・日韓の緊張、米望まず」
<解説>「ナイ氏の見解は、米国の安全保障政策に携わる多くの政府当局者や識者の間で共有されている。
ナイ氏がアーミテージ元国務副長官らと2000年に発表した超党派の報告書は、日本が集団的自衛権の行使に踏み出せば『より緊密で効率的な日米安保協力につながる』とした。当時に比べ、東アジアの安保環境はさらに不安定になっている。米国内に目を転じれば、厳しい財政事情が国防予算を制約し、同盟国に一層の役割を求める声が強まっている。同盟国が自国の防衛力や米国との防衛協力を強化することは、米政府や議会が歓迎する動きだ。
一方、安倍首相の靖国参拝や慰安婦問題をめぐる対応に頭を痛めているのも、もう一つの米国の顔だ。
オバマ政権は『日本と近隣国の良好な関係は米国にとっても地域にとっても利益だ』(ケリー国務長官)と繰り返す。北朝鮮をにらんだ日米韓の協力は急務だし、日中関係でも緊張が制御不能なレベルまで高まることを望んでいない。
 
国務省のサキ報道官は10日の会見で『過去の問題について、近隣国との強固な関係構築に資する形で取り組むことを日本の指導者に促している』と述べた。
米国にとって日本の集団的自衛権の行使容認は本来歓迎すべきことだが、安倍政権によって発せられる歴史認識をめぐるメッセージと重なると、地域の不安定要因になりかねない――。ナイ氏の『良い政策に悪い包装』とは、米国のそんなジレンマを端的に示した言葉だ」。
「良い政策を悪い包装で包むな」は、正論である。安倍首相は、集団的自衛権行使容認を進めるために、靖国参拝自粛、村山談話・河野談話を踏襲せよ、である。
 
編集 持田哲也

« »