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「改憲ありきが民意、日経調査で改憲の国民投票賛成58%」

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朝日の社説に「自民の新体制」「改憲ありきは許されぬ」が書かれている。

「来月4日召集の臨時国会を前に、自民党が改憲論議に臨む新たな体制を固めた。安倍首相は原案作成を目標に掲げるが、改憲ありきでは、与野党の対立をあおり、冷静な議論にはつながらないと心得るべきだ。

首相は先の内閣改造後の記者会見で、衆参両院の憲法審査会において、今後は『自民党が強いリーダーシップを発揮していくべきだ』と語った。この2年間、衆院憲法審で実質審議が一度も行われなかったことに業を煮やしたのだろう。

党憲法改正推進本部長には、首相の出身派閥の長で、自衛隊明記など改憲4項目をまとめた細田博之・元幹事長を再び起用。憲法審の会長には、衆院は佐藤勉・元国会対策委員長、参院は林芳正・元文部科学相を充てる。野党とのパイプや交渉力に重きをおいた布陣といえる。

ただ、これまで憲法論議が進まなかったのは、改憲に前のめりな首相の姿勢や、野党を挑発するような首相側近の不用意な言動が原因ではなかったか。その根本を改めずに、野党との駆け引きに心を砕いても、実のある論議は期待できない。

首相は改憲論議の是非を訴えた今夏の参院選に勝利したことで、『議論すべきだとの国民の審判は下った』と繰り返す。

しかし、同時に、自民、公明の与党に日本維新の会などを加えた『改憲勢力』が、国会発議に必要な3分の2を維持できなかったことも重く受け止めるべきだろう。公明党の山口那津男代表が選挙直後、『憲法改正を議論すべきだと受け取るのは、少し強引だ』と指摘したのはもっともである。

そもそも、内外の課題が山積しているというのに、政権党の政治エネルギーを改憲に注ぐ緊急性や必然性がどれだけあるのか。朝日新聞の世論調査によると、改憲を求める声は一貫して小さい。党総裁の任期が残り2年となるなか、政権の『遺産』づくりという思いが先立つなら、本末転倒というほかない。

安倍政権は集団的自衛権の行使に道を開いた安全保障関連法など、世論の割れるテーマで熟議を拒み、最後は『数の力』で押し切る国会運営を繰り返してきた。衆院憲法審の会長となる佐藤氏は安保法成立を強行した時の国対委員長だ。自民党内は早くも『改憲論議は(憲法審の)会長職権で進めるしかない』との声がある。

改憲ありきではなく、国のあり方をめぐって大所高所から議員同士が闊達な議論を交わす。その環境を整える責任こそ自民党にある。通常の法案以上に丁寧で幅広い合意形成が求められる憲法論議を数の力で推し進めることなどあってはならない」。

社説の主旨である「改憲ありきは許されぬ」に異論がある。

朝日調査(14,15日)では、内閣支持率48%、不支持率31%、分からない21%、憲法改正賛成35%、反対44%、わからない21%となっているが、日経調査(11,12日)では、内閣支持率59%、不支持率は33%、分からないは8%、改憲の国民投票に賛成58%、反対32%となった。

問題は、朝日調査と日経調査といずれが精度が高いか、である。分からない21%の朝日調査より、分からない8%の日経調査の方が精度が高いとなる。日経調査が分からないと回答した人に対して二度聞きをしているからである。朝日調査は、二度聞きをしないことで、恣意的であると言わざるを得ない。反安倍であり、反改憲が社是だからである。日経調査の改憲の国民投票賛成58%がファクトとなり、朝日調査の憲法改正賛成35%、反対44%はフェイクニュースとなり、改憲ありきが民意となるが。

そもそも、安倍晋三政権は国政選挙6連勝である。今回の参院選で改憲勢力3分の2に4議席足りないが、無所属、国民民主党の一部で補充は可能である。この民意を慎重論の公明党も無視できず、改憲賛成にカジを切らざるを得ない。臨時国会での国民投票法改正案の成立は必至となるが。

「内閣支持率5ポイント増の58%、立憲支持率5ポイント減の7%」

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読売に「本社世論調査」「内閣支持58%に上昇」「日韓安保連携『必要』72%」が書かれている。

「読売新聞社は23~25日、全国世論調査を実施した。韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたことを、『理解できない』とした人は83%に上った。日韓両国が安全保障面で連携する『必要がある』は72%で、『必要はない』の19%を大きく上回った。

輸出手続きを簡略化する優遇対象国から韓国を除外すると決めた日本政府の対応は『支持する』65%、『支持しない』23%だった。

元徴用工の問題などを巡って対立が続く日韓関係の今後について聞くと、『受け入れがたい主張を韓国がしている限り、関係が改善しなくてもやむを得ない』が64%で、今年2月調査の72%から8ポイント低下。『関係の改善が進むよう、日本が韓国に歩み寄ることも考えるべきだ』は29%(2月調査22%)に上がった。

安倍内閣の支持率は58%で、前回7月22~23日調査の53%から5ポイント上昇した。不支持率は30%(前回36%)。安倍内閣の外交・安全保障政策を『評価する』は54%(7月4~5日調査47%)、経済政策を『評価する』は45%(同38%)だった。

政党支持率は、自民党41%(前回40%)、立憲民主党7%(同12%)などの順。無党派層は37%(同27%)となった。
    
≪日韓対立「止むを得ず」64%、若年層「歩み寄りを」4割≫

読売新聞社の全国世論調査では、元徴用工の問題などで対立が続いている日韓関係  に対する考えを聞いた。輸出管理の強化など安倍内閣の韓国に対する対応は、国民の多くが評価しているが、若年層では関係改善へ日本からの歩み寄りを求める意見も少なくなかった。

今後の日韓関係について、『受け入れがたい主張を韓国がしている限り、関係が改善しなくてもやむを得ない』と思うか、『関係の改善が進むよう、日本が韓国に歩み寄ることも考えるべきだ』と思うか、二つの意見から近い方を選んでもらった。『やむを得ない』は64%と半数を超え、『歩み寄る』は29%だった。

この割合は、安倍内閣に批判的な人が多い女性や無党派層でも、全体と大きな差がなかったが、年代別では意識の差が表れた。若年層の30歳代以下は56%-42%と意見が分かれ、『歩み寄る』が4割を超えた。40~50歳代、60歳代以上は『歩み寄る』が2割台だった。同じ質問をした今年2月調査で、30歳代以下の『歩み寄る』は30%だったが、今回は12ポイント上昇した。

<野党統一会派「評価する」42%>

読売新聞社が23~25日に実施した全国世論調査で、立憲民主党や国民民主党などが、衆参両院で統一会派を組むことで合意したことを『評価する』は42%、『評価しない』は39%と意見が分かれた」。

以上の調査結果から次のことが読み解ける。

内閣支持率は前回調査(7月22日、23日)より5ポイント増の58%、不支持率は6ポイント減の30%、自民党支持率は1ポイント増の41%。外交・安保政策を評価する54%、日本政府の韓国のホワイト国外しを支持する65%が、経済政策を評価する45%、消費税率10%引き上げ反対49%を相殺して押し上げた形となった。

問題は、野党支持率の低迷である。立憲民主党は5ポイント減の7%、国民民主党は1ポイント減の1%、共産党は1ポイント減の2%、社民党は1ポイント減の0%、NHKから国民を守る党は1ポイント増の1%、れいわ新選組1ポイント減の0%。野党共闘は、19%から8ポイント減の11%と急落した。与党は45%と同じ45%。4分の1以下である。

野党第1党の立憲民主党が5ポイント減の7%、れいわ新選組が1ポイント減の0%をどうみるかである。国民が両党を政権担当能力がないとの見限った証左となるが。与野党の4倍格差があれば、次期衆院選も与党が圧勝との予測である。改憲の国民投票での過半数勝利も可能である。次期衆院選と国民投票とのダブル選を想定すれば、自民党支持層の思想武装が必須となる。「9条改憲は戦争への道」との左派メディア・野党の世論操作に対してである。

朝日の「記者解説」に岡田耕司アメリカ総局長が「泥沼の日韓、陰る米覇権 得するのは」を書いている。       

米国、中ロの共同飛行に大きな衝撃。日韓問題に「深い憂慮」も、調停は不発
トランプ米大統領、日韓問題深入りに慎重。背景に同盟軽視・二国間交渉重視
日韓関係の悪化、米国の覇権に陰り。韓国批判より冷静に安全保障戦略を

<つけ込み狙う中ロ>

7月下旬、米ワシントンに衝撃が広がった。日韓両国の防空識別圏が重なり合う東シナ海や日本海の上空に、中国機とロシア機が進入し、初の共同警戒監視活動を行ったからだ。ワシントンの外交関係者は、米国の同盟国・日韓の対立を受け、日米韓の防衛協力の揺らぎを見る試みと受け止めた。

東アジアの安全保障問題に詳しい米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は、『中ロは、日韓の緊張と米国の同盟国体制の弱体化につけこもうと待ち構えている。我々は中ロの準備態勢を過小評価してはいけない』と警告する。

事態を危惧したナッパー米国務副次官補(日韓担当)は8月初旬、『(中ロが)日米韓3カ国の間にくさびを打つようなことがこれ以上あってはならない』と訴え、『我々は日韓の     関係改善を図る責任があると考えている』と日韓両国に注文をつけた。

米政府は日韓の関係悪化に繰り返し『深い憂慮の念』を表明し、改善を働きかけてきた。その要因の一つは、韓国側が7月に入り、日本の対韓輸出規制に対抗し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の再検討に言及し始めたことだ。GSOMIAは日米韓安全保障体制の柱の一つで、米国が尽力してまとまったものだからだ。

複数の日米外交関係者によると、米政府は韓国のGSOMIA離脱を防ぐため、日本側に輸出優遇対象国のリストから韓国を外す発表を延期するように要請。米政権高官は朝日新聞の取材に対し、米政府が日韓に互いに報復を注視する『休戦協定』を推し進めていることを明らかにした。だが、日本政府関係者は、『慰安婦や徴用工問題でさんざん日本が韓国からやられていたときに米国は何もせず、今更急に介入してきても遅すぎる』と語る。

<橋渡しせぬ米大統領>

日本政府が米政府の提案に振り向かなかった最大の理由は、米政権トップのトランプ大統領に日韓の関係改善に向けた強い意思が見えなかったことだ。トランプ氏は7月中旬、韓国の文在寅大統領から直接の関与を頼まれたことを明らかにしたが、『日韓両国首脳の要請があれば』という条件を付けた。見方によっては、安倍晋三首相に対し、韓国への対決姿勢を続けてもよいという『お墨付き』を与えたとも受け取れる。その後、日本は予定通り韓国を輸出優遇対象国から除外し、米政府の『休戦協定』調停は不発。韓国は日本への報復措置としてGSOMIAを破棄する事態に陥った。          

日韓は歴史認識という困難な問題を抱えており、歴代の米大統領は陰に陽に両国の橋渡し役を担ってきた。2014年、オバマ米大統領(当時)は安倍首相と韓国の朴槿恵大統領(同)の初会談を仲介し、日韓の慰安婦合意を後押しした。ある日米外交関係者はオバマ政権時代は米政権が一体となって日韓に協力を働きかけたと回想する。

しかし、『米国第一』を掲げるトランプ氏は異なる。同盟国相手でも、いかに多くの金を引っ張ってくることができるかが最大の関心事だ。NATO(北大西洋条約機構)加盟国に対しても安全保障をめぐる負担の大幅増を要求する一方で、貿易紛争を仕掛けている。在ワシントンのNATO加盟国のある外交官は、『我々はロシアの脅威に接しているのに、米政権がやっているのは同盟の弱体化だ』と嘆く。
         
トランプ氏は二国間交渉を好む。交渉相手が束になってかかってくるのを避け、個別に撃破できるからだ。トランプ氏は日韓に対し、米軍駐留経費の負担増を要求しており、日韓が分断されている方が好都合とも言える。

歴代米政権には、米国のアジア太平洋地域の覇権を支えているのは日米同盟と米韓同盟を土台とした日米韓の安全保障体制という認識があった。朝鮮戦争をきっかけに、朝鮮半島有事の際に前線で戦う米韓同盟、後方支援を行う日米同盟という想定のもと、日米韓の安全保障体制は築かれてきた。今では中国が米国の覇権に挑戦するほど軍事的なプレゼンスを高めており、その重要性はますます増している。

<日本は立て直す責任>

だが、今回の韓国のGSOMIA破棄決定で、日米韓の安全保障体制は大きく揺らぐことになった。米国は同盟国同士の争いを制御する能力がないことをさらし、権威は大きく傷ついた。同盟軽視を続けるトランプ氏のもと、同盟国を土台としてきた米国の覇権に陰りが出始めたとも言える。

カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員は米国が今後取り組むべきこととして、日韓のこれ以上の関係悪化を防ぐ努力を続けることと、日米韓の安全保障体制を守る仕組みをつくることを提案する。具体的には、高官レベルの3カ国協議を開催して対話を進め、日米韓の軍事演習を実施して安全保障協力を強化することが重要という。ショフ氏は『米国が中国に焦点を合わせようとしている時、日韓が(勝ち負けをはっきりさせる)ゼロサムゲームを演じるのは米国にとって最悪のシナリオだ』と指摘する。

一方、北朝鮮や中国の脅威に接する日本にとっても、米韓との防衛協力は極めて重要だ。日本の防衛当局間の間では、米韓同盟が日本の防波堤の役割を果たしているとの見方が強い。

日米同盟を基軸とする日本にとって真の脅威とは何か。日韓が『仲たがい』することで得をするのは誰か。中ロが防空識別圏に進入し、北朝鮮がミサイル発射を続ける現状を見れば、答えは明らかだ。日本の政治指導者たちは韓国批判に明け暮れるのではなく、安全保障戦略を最優先に日本の国益を考え、日米韓の安全保障体制の立て直しを図る責任がある」。

朝日の論理は、日韓関係悪化の責任は日本にあるから、日本が立て直す責任あるという。暴論である。韓国の文在寅政権が反日・親北の左派政権であり北朝鮮の傀儡政権との言及はない。GSOMIA破棄は、米韓同盟破棄へ、文在寅政権が踏み出したと同義となるのに、である。

産経に「トランプ氏、韓国に怒り」「G7・日米首脳会談」「北になめられている」が書かれている。                     

「韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた直後に行われた今回の日米首脳会談では、北朝鮮政策をめぐる温度差が浮き彫りになった。トランプ米大統領は先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の場で韓国側の対応に怒りをあらわにした一方、北朝鮮による短距離弾道ミサイルの発射を認める姿勢は崩さなかった。東アジアの安全保障を支える米国が北朝鮮の脅威を軽んじれば、日本の安全保障が置き去りにされる懸念が残る。

≪北ミサイルは容認≫

25日の日米首脳会談で、安倍晋三首相とトランプ氏は北朝鮮情勢について日米韓3カ国の連携を改めて確認した。ただ、24日のG7初日の討議でトランプ氏が韓国を『金正恩(朝鮮労働党委員長)になめられている』などと批判したことは、米国が日本と足並みをそろえる一方、日米韓の防衛協力の枠組みがもろいことも示している。日韓GSOMIAはアジア太平洋地域の米軍の運用を支えており、協定破棄は『実は日本より米国のほうが困る』(外務省幹部)ためだ。

ただ、北朝鮮の脅威をめぐっては、米韓対話を重視するトランプ氏は金氏を『率直な人間』と評価するなど、同盟国である日本の不安に関心は薄い。

25日の首脳会談でも、北朝鮮による短距離弾道ミサイルの発射を『国連安全保障理事会決議に違反する』と明言する安倍首相に対し、トランプ氏は『気持ちは理解できる』と述べつつ『(短距離)ミサイルを撃っている国はたくさんある』と語り、改めて容認する考えを示した。

北朝鮮の軍事的脅威はトランプ政権下でも増している。短距離とはいえミサイル実験を繰り返せば軍事力が高まり、日本にとって脅威が固定化されてしまう。

さらに韓国は、24日の北朝鮮の飛翔体発射に対し『強い憂慮』を表明するにとどまった。対北政策で日米韓の温度差は際立つばかりだ。

加えて、最近のトランプ氏の関心はイランに移っている。他のG7参加国も同様だ。今回は初日の討議で各国首脳から北朝鮮への言及はなく、安倍首相がG7で議論するよう求めた。トランプ氏が北朝鮮への融和に傾斜し、脅威を野放しにすれば、軍事力で米国と覇権を争う中国を利することにもつながる。トランプ氏と信頼関係を築く首相の外交力は今後が正念場ともいえる。

≪米、孤立回避の演出狙う≫

対イラン政策などをめぐって米欧の溝が目立つ中、トランプ米大統領は今回のG7サミットで、自由・民主主義の価値観を共有する各国との『協調』を演出したい考えだ。『米国第一』に邁進するトランプ氏だが、『米国の孤立』への警戒感はある。米中貿易摩擦が世界経済の攪乱要因だと批判されており、トランプ氏は中国の不公正貿易是正に向けた米国の政策に理解を求めるとみられる。

『偽ニュースにはうんざりだ。米国と6カ国の関係が緊張しているだなんて』。トランプ氏は25日、ツイッターにこう投稿した。欧州外交筋にはサミット直前まで『トランプ氏は本当に来るのか』といぶかしむ声があった。

米政権高官は『(トランプ氏が)成長を重視する経済政策を訴える』と説明。世界貿易機関(WTO)改革や、仏政府と対立するデジタル課税といった課題で、G7首脳と打開策を探る姿勢を強調する。来年の大統領選で再選を目指すトランプ氏は、経済の不安要因となる摩擦の種を少しでも減らしたいところだ。

ただ、トランプ氏は25日のジョンソン英首相との会談冒頭、『(米中貿易戦争は)必然的に起きた』と述べ、中国の不公正貿易を是正させる米国の制裁関税を正当化する姿勢を貫いた。

『G7だけが、中国の行動と対照的に(公正な)経済ルールを作れる』(米政権高官)と、中国への対抗策の必要性を各国に訴えていく思惑だ。

≪日米貿易最終段階へ、トランプ氏「実利」優先≫

トランプ米大統領は25日の日米首脳会談冒頭で『大きな貿易協定で合意間近だ』と述べ、農産品の対日輸出増加につながる貿易交渉の成果に期待を示した。大統領選に向けた国内農家からの支持拡大という『実利』を優先し、米産業界が求める包括的な対日協定を当面、断念した格好だ。

9月下旬の大枠合意にめどをつけた貿易協議は、会談直前まで米政権内に『悪魔は細部に宿る。合意するまでは合意したとはいえない』(大統領側近)と妥結に慎重な声が出ていた。

通商政策はトランプ氏の再選戦略に屋台骨だ。日本が自動車など工業製品で関税撤廃を求める中、利害が交錯する複雑な貿易交渉の結果、トランプ政権として『米国に製造業を取り戻す』という看板に傷をつけられない事情があった。

トランプ氏は今月中旬のペンシルベニア州の演説で対米投資を歓迎しながらも、『日本との貿易赤字は巨大だ』と不満を表明した。

6月下旬まで決裂の可能性すらあったと関係者が振り返る日米交渉で、米国が厳しい姿勢を転換させたのは、対日妥結が、輸出増を目指す農畜産業者らにアピールする格好の材料になるとの目算があったためだとみられる。

首脳会談では、一定の合意に向け、協議を加速することで一致。9月下旬の国連総会に合わせた次回の首脳会談での合意に向け、協議は最終段階に突入する。

日本側は、秋の臨時国会で批准の手続きを取ることも視野に入る。だが、全体のバランスが崩れ日本にとって不利な状況になれば、『国会で承認されない事態』(政府関係者)となる。自民党議員からは『早期の妥結よりも、日米ともにウィンウィンになることが重要』との声も上がっており、最後まで予断を許さない状況が続きそうだ」。

トランプ大統領は、24日のG7初日の討議で韓国を「金正恩氏」になめられていると批判、一方、25日の首脳会談で、北朝鮮の短距離ミサイルは容認すると。さらに、金正恩氏を「率直な人間」と評価した。文在寅氏は「信用できない」とこき下ろした。トランプ氏と安倍晋三首相の蜜月が、日米同盟強化に奏功するが。

日韓 内憂外患

政治

毎日に「米『徴用工解決済み』支持」「日本に複数回伝達」が書かれている。

「韓国最高裁が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決を巡り、米国政府が日本政府に『元徴用工への損害賠償を含む請求権問題は、1965年の日韓請求権協定で解決済み』とする日本の法的立場を支持する意向を伝えている。日本政府関係者が明らかにした。米国は元徴用工問題で日韓に歩み寄りを促すが、日本側は『原則的な主張は米国の理解を得ている』と受け止め、韓国政府に賠償の肩代わりなど『請求権協定違反』の是正を引き続き求める方針だ。

外務省は、昨年10月の韓国最高裁判決を受けて、原告側が米国にある日本企業の資産差し押さえを申し立てるケースを想定し、米国務省と協議した。日本側は、米国で申し立てがあれば、米国務省が『訴えは無効だ』とする意見書を米国の裁判所に出すよう求めた。

米国務省は昨年末までに日本の主張を支持する考えを日本側に伝達。日韓請求権協定に『例外』を認めれば、基となる51年のサンフランシスコ講和条約で定めた『戦争請求権の放棄』が揺らぎかねないと懸念を示した。7月の日米高官協議でも日本の法的立場を確認し、河野太郎外相が8月上旬にバンコクでポンぺオ国務長官と接触した際も、ポンぺオ氏は理解を示した。

米国では2000年代前半、旧日本軍捕虜だった米国人らが『日本国内で強制労働させられた』として、日本企業に損害賠償を求める訴訟が相次いだ。米国務省は『サンフランシスコ講和条約で請求権を放棄した』として原告の訴えに反対する意見書を裁判所に提出。裁判所も原告の訴えを退けた。米政府には、韓国最高裁判決の影響で、元捕虜らが賠償請求に動きかねないとの懸念があるとみられる。

日韓請求権協定は、日本と旧植民地との請求権問題を当事者間で取り決めるとしたサンフランシスコ講和条約第4条に基づいて締結された。日本が韓国に無償供与3億ドル、長期低利貸し付け2億ドルの経済協力を行う一方、請求権問題は『完全かつ最終的に解決』したと明記した」。

米国政府は、日本政府に「元徴用工への損害賠償を含む請求権問題は、1965年の日韓請求権協定で解決済み』とする日本の法的立場を支持する意向を伝えている。理由は、そもそも日韓請求権協定は、日本と旧植民地との請求権問題を当事者間で取り決めるとしたサンフランシスコ講和条約第4条に基づいて締結されているからである。「例外」を認めれば、旧日本軍捕虜だった米国人らが、賠償請求に動きかねない懸念があるからだ。

産経の「不信かんぽ不適切販売」㊥に「政治に翻弄された民営化」が書かれている。

「『きちんと民営化ができていれば、こんなことにはならなかった…』

小泉純一郎政権の下で初の郵政民営化担当相を務め、日本郵政グループの〝生みの親″とも言える東洋大教授の竹中平蔵は郵政グループの不祥事に憤る。

『今回の解散は<郵政解散>だ。郵政民営化に賛成するのか反対するのか、はっきりと国民に問いたい』

平成17年8月8日夜、首相官邸。首相の小泉(当時)は記者会見し、衆院解散・総選挙を表明した。

郵政民営化は、文字通り『政治主導』の産物だった。郵政民営化をほぼ唯一の政治信念とし、永田町で『変人』扱いされた小泉だが、13年にまさかの首相に上り詰めると、民営化を『改革の本丸』と位置づけた。当時350兆円に上った膨大な郵政の資金は『民間で有効に活用されるべきだ』との信念があった。

民営化法案が参院で否決されると、小泉は衆院解散という奇策を断行。元建設相の亀井静香ら自民党の民営化反対派が反発すると、17年9月の衆院選で党公認としないどころか、次々『刺客』としての対立候補を送り込んだ。

小泉は選挙中、『民間にできることは民間に』と民営化の意義を訴えた。結果は自民が296議席獲得の大勝。小泉は改めて民営化法案を提出し、成立した。

<急変から迷走>

郵政解散から2年後の19年10月、政府出資の株式会社グループが発足。10年後に完全民営化を成し遂げるはずが、事態は急変する。

21年の民主党への政権交代だ。21年10月に民営化の見直し方針を閣議決定し、株式売却凍結法すら成立させた(その後廃止)。24年に成立した改正民営化法は、日本郵政が保有するかんぽ生命とゆうちょ銀行の株式を『早期にすべて売却することを目指す』と定めたが、日本郵政は現在もゆうちょ銀に89%、かんぽ生命に64%出資している。

この迷走ぶりが、市場には『実質の再国有化』(金融アナリスト)とも映る。メガバンクの元頭取で日本郵政社長を務めた西川善文ら、小泉政権下で集まった民間人も相次ぎグループを去った。竹中は『民間経営者を追い出して天下り先にし、ガバナンス改革が遅れたから問題(不適切販売)が起きた』と批判する。

天下りの象徴が、『10年に一人の大物次官』と呼ばれた元大蔵省事務次官、斎藤次郎の日本郵政社長への起用。斎藤や当時与党・国民新党を率いた亀井らの下、政府の影響力が増した。

不完全な民営化は営業面でも如実だ。かんぽ生命は認可がなければ新商品が開発できない制約が過剰ノルマを招いた。竹中は『おかしな政策をやれば必ずおかしな結果を招く』と指摘する。ゆうちょ銀行も預貸業務と商品開発の拡大が見込まれたが、預入限度額は今年4月に2600万円に引き上げられるまでその半額に抑えられてきた。

<風土変わらず>

24年12月に自民党が衆院選で圧勝し、政権復帰直前に斎藤は社長を辞任。東芝出身の西室泰三が日本郵政社長を務めたりしたが、『国の意向や政治に左右される郵政グループの風土は変わらなかった』(保険業界関係者)と指摘される。

日本郵政上級副社長の鈴木康雄は元総務事務次官。日本郵便の副社長の一人は、自民党の支持団体である全国郵便局長会(全特)の元会長だ。先月の参院選は全特の組織内候補が自民で比例最多の60万票を獲得した。

政治に翻弄された民営化の迷走は、郵政グループのいびつな経営を招いた大きな要因であり、今後にも影を落としている」。

日本郵政グループの不祥事は、生みの親ともいえる東洋大教授の竹中平蔵氏が言う「きちんと民営化できていれば、こんなことにはならなかった」は、正鵠を突いている。2007年10月から10年後の2017年10月の完全民営化が、2009年の民主党への政権交代によってとん挫したからである。2012年に成立した改正民営化(実質の再国有化)のままである。2012年に自民党が政権交代しても、である。

「改憲の国民投票に賛成52%、反対33%」

政治

朝日の「多事奏論」に国分高史・編集委員が「れいわ旋風 心からの言葉 だから刺さった」を書いている。

「選挙の街頭演説を聞いて涙を流す人を見るのは珍しい。参院選投開票前日の20日夕、東京郊外の多摩センター駅前であったれいわ新選組の演説でのことだ。

比例区特定枠で立候補した木村英子さんは、生後間もなくの事故が原因で首から下を自由に動かせなくなった。この日の演説では、養護学校を出てから受けた差別を語り、議員になったら障害者と健常者が共に学びあえる教育を実現したいと訴えた。

『障害があるというだけで子供を分けていいはずがありません。もう私のような子供たちを増やしたくないんです』。静かな語り口に、涙ながらに拍手する人がいた。

山本太郎代表が結成したれいわ新選組は、木村さんら重い障害のある2人を当選させた。消費税廃止などの先鋭的な主張が注目されたが、街頭演説を何度か聞いて驚かされたのは、山本代表以外のほぼ無名の候補者たちが発する言葉の強さだった。

元コンビニオーナーは、『強い者が弱い者をいじめる。コンビニはそういう世界。もういい加減、強い者が人間を部品のように扱うのはやめてくれ』。元派遣労働者のシングルマザーは、『若者が政治に無関心なんて絶対にウソ。政治が若者を、貧乏人を排除している。だったら、こっちは手作りの政治をつくるしかない』。

れいわの候補者はみな、自分の生活に根ざした『言いたいこと』を持っていた。それが聴衆の心に刺さった。演説後に何人もが寄付の受け付けに列をなし、財布から千円札を取り出した光景がそれを物語る。

安倍晋三首相は、この選挙でこれまでになく憲法改正を前面に打ち出した。一方、自民党の候補者らはどうだったか。

首相が駆けつけた20日夜の東京・秋葉原。たくさんの日の丸が揺れる中、東京選挙区の候補者は『私たちの国は私たちの手で守る。憲法改正に向けての議論を深め、その思いを貫きたい』と絶叫した。だが、安倍自民の聖地と化した秋葉原の熱気は例外だったと思う。私が見た限りこの候補はそれまでの演説で憲法には触れていないし、選挙序盤に聞いた菅義偉官房長官も憲法のことは話さなかった。別の自民候補は『憲法は票にならないし、一生懸命応援してくれる公明党が嫌がることをわざわざ言うのもはばかれる』と明かす。

れいわ旋風を除けば、全体として冷めた選挙だったことは否めない。48・80%の低投票率の中、自民は単独過半数を失い、改憲勢力も3分の2を割った。それでも首相は、自公で改選議席の過半数という低いハードルを越えたことをもって、『少なくとも議論をすべきだとの国民の審判は下った』と自賛する。

予想された言い方だが、結果を素直に受けとめれば牽強付会に過ぎる。選挙後の朝日新聞の世論調査では、首相に一番力を入れてほしい政策として『憲法改正』を選んだ人はわずかに3%。改憲の訴えが有権者に浸透したとはとても言えない。

とんとん拍子に進むかは別として、自民は国会の憲法審査会で議論を始めようとするだろう。問題はそのやり方だ。

首相は選挙中のNHK番組で、立憲民主党などが求める国民投票の際のテレビCM規制について、『議論していいと思いますよ』と前向きにもとれる発言をした。

その通りに実践し、立憲などを含めた議論の道を模索するのか、それとも国民民主党から賛同者を得て立憲抜きで進めようとするのか。公明の出方も焦点だ。

首相が手元に残した衆院解散カードもにらみつつ、しばらくは各党間で神経戦が続くだろう。ただし、改憲は国会の中の数合わせだけでは実現しない。何のためか、だれのためなのか。多くの人の心に刺さり、納得させるメッセージが発せられない限りは」。

コラムの主旨である「心からの言葉 だから刺さった」に異論がある。

れいわ新選組の比例区得票数は228万票となったが、その45%が党代表の山本太郎氏の個人票99万票である。個人票の2位が蓮池透氏の2万票、3位が大西常樹氏の1万9000票である。政党名で100万票である。立憲民主党が比例区で300万減、共産党が150万減となっており、各々半分がれいわに流れたとの分析となる。氏が言う「令和の候補者の心からの言葉がささったからではない」。

問題は、自公維の改憲勢力が3分の2に必須の85議席に4議席差に迫ったことである。その4議席も無所属などからの参加で充当される見通しであることだ。つまり、今回の参院選は48・80%という史上2番目の低投票率であったが、安倍晋三首相は悲願である改憲勢力3分の2維持を果たし、改憲発議に王手をかけたことになる。事実、日経の26~28日の調査では、改憲の国民投票に賛成が52%と反対33%を大きく上回っている。選挙後の朝日調査で、首相に一番力を入れて欲しい政策として、憲法改正はわずか3%しかないが。16年以降、衆参3分2を改憲勢力で維持し続けているというファクトは重たい。改憲の国民投票に賛成52%がファクトとなり、秋の臨時国会での国民投票法改正成立は必至となるが。

日経に「日韓、安保でも相互不信」「輸出規制・レーダー照射が波及」『協定更新の期限迫る」が書かれている。

「日韓両政府の経済分野での対立が安全保障協力に影響を及ぼし始めている。北朝鮮のミサイル発射など有事に備えて連携する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新期限が8月末に迫るが、韓国側は継続の見直しを示唆している。韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題も尾を引いており、日韓の防衛交流も滞っている。

日本と韓国は地理的な近さから安全保障政策で利害を共有する国同士だ。周囲には核実験や弾道ミサイル発射の脅威がある北朝鮮、軍事力を拡大する中国がある。情報共有を密にするため2016年11月にGSOMIAに署名し1年ごとに更新してきた。いずれかが破棄を事前に申告しない限り、自動延長される。今年の申請期限は8月24日だ。

防衛省幹部は『通常は破棄は考えられない』と指摘するが、雲行きは怪しい。

元徴用工訴訟に端を発した日本による対韓輸出規制の強化で両政府の対立は深まるばかりだ。韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は18日、GSOMIAを巡り『今は維持する立場だが、状況に応じて再検討もあり得る』と語った。

菅義偉官房長官は29日の記者会見で『日韓関係は厳しい状況にあるものの、連携すべき課題はしっかり連携することが重要だ。適切に対応する』と述べ、協定を維持すべきだとの認識を示した。岩屋毅防衛相も『わが方から破棄する考えは全くない。安全保障ではしっかり連携していく』と強調した。

北朝鮮は日韓の関係悪化に便乗し、対南宣伝サイト『わが民族同士』でGSOMIAの破棄を韓国に求めた。対北朝鮮政策で融和路線を取る文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の要求にどう対応するか不透明だ。

日韓の国防当局間には、18年12月に起きたレーダー照射問題も横たわる。韓国海軍の駆逐艦が自衛隊機に、攻撃前の威嚇にあたる火器管制レーダーの照射をした。

日本は現場の音声や映像を公開して抗議したが、韓国はレーダー照射の事実を認めていない。それどころか自衛隊機に過失があると主張している。

岩屋氏と韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は6月、シンガポールで非公式の会談を開いた。約8カ月ぶりの会談で局面打開が期待されたが主張は平行線に終わった。レーダー照射問題が起こってから日韓の防衛交流は中止が相次いでいる。

23日に起きた島根県の竹島(韓国名・独島)でのロシア軍機による領空侵犯も日韓の関係悪化につけ込む狙いが指摘されている。韓国は竹島上空でロシア軍機に警告射撃した。韓国の『領空』に侵入したことを理由に挙げた。日本は竹島を『わが国固有の領土』と主張しており、韓国に抗議した。ロシア軍機には中国軍機も同行しており、中ロで日米韓の防衛体制を試す意図を共有していたとみられる。

トランプ米大統領は一時期、日韓の関係を仲裁する姿勢を見せたが、具体的な行動には至っていない。米政府は過度な介入を避ける意向を示しており、修復の糸口は見通せない。防衛省内では『経済と安保はこれまで別問題として扱ってきた』との声がある。一方『今回は国防当局の関係断絶にまで至る恐れがある』との懸念の声も広がっている」。

期限が8月24日の日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の継続が危ぶまれている。韓国側が継続の見直しを示唆しているからである。北朝鮮・中国の軍事情報を共有するもので準同盟国として必須なものであるのに、である。その継続を拒否することは準同盟国ではないと同義となるが。北朝鮮が執拗にGSOMIAの破棄を文政権に迫っており、日韓・米韓分断との目論見となるが。

東京の「日本の岐路」「7月をつづる」に、金井辰樹・編集局次長が「10・27埼玉秋の陣」を書いている。

「『<一障害者を利用するつもりか>。この言葉に対して、私は言います。上等です。障害者を利用して障害者施策を変えようじゃないか』

参院選の政見放送で、れいわ新選組の山本太郎代表が語った、このセリフが頭から離れない。比例代表の特定枠に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の船後靖彦氏と重度障害者の木村英子氏を擁立したことに対する批判に、開き直るような口調で反論したのだった。

21日の参院選の結果、船後氏と木村氏の二人は当選した。その後、国会では、二人を受け入れるために急ピッチでバリアフリー化が進む。山本氏による政見放送での約束は、早くも成果を見せつつある。

消費税の廃止、『奨学金チャラ』など山本氏の訴えは、とにかく分かりやすかった。徹底して弱者に光をあてる政策を訴える姿に共感を持った人も多い。もちろん実現性には疑問を投げかける声も根強いが、選挙後の国会の動きを見ていると『実現不可能と決めつけてはいけない』とも思えてくる。

れいわに投票した人は、自分の一票によって二人が当選し、それがきっかけで国会が変わったと実感を持っていることだろう。『安倍一強』と言われ、数の力がものをいう政治が続く中、久しぶりに少数の声が国を動かした。

参院選の結果をあらためて振り返ってみたい。自民、公明の与党は、安定的な政権運営を続けるに十分な議席を得た。しかし、両党に日本維新の会などを加えた改憲勢力は、国会発議に必要な『3分の2』を、4議席下回った。

野党側は32の1人区で統一候補を擁立し、10勝22敗だった。3年前の参院選は11勝21敗だったので前回並みだ。野党が一本化すれば、今回ぐらいの結果は期待できることが証明された形だが、今のままの共闘では、それ以上は見込めないという限界も露呈した。現状では政権交代への道筋は見えてこないかもしれない。

注目の選挙が10月に行われることになりそうだ。大野元裕参院議員が埼玉県知事選に出馬するのに伴う参院埼玉県補選。10月27日に投開票となる見通しだ。自民党は、改憲勢力の議席数を一つ回復すべく総力を挙げて勝ちを目指すだろう。

一方の野党側は、参院選での『限界』を超える新しい野党連携の形を見せることができるだろうか。新しい形とは、れいわを含めた『野党大連合』だ。埼玉県は立憲民主党・枝野幸男代表の地元。れいわは、首都圏で支持が多い。参院選の比例代表では埼玉で13万を超える票を得ている。枝野、山本の両氏を中心とした野党党首たちがそろって街頭に立ち支持を訴えれば、インパクトは大きい。衆院選も視野に入れた新しい野党協力の可能性が見えてくるだろう。

れいわの二人も含む新しい顔触れで構成する国会は、8月1日に召集される。そこから『埼玉秋の陣』に向けた与野党の動きが本格化する」。

10月27日に参院埼玉補選が行われるが、れいわを含めた野党大連合と自公の一騎打ちとなる。先の参院選で32の1人区で野党共闘は10勝22敗となり、3年前の11勝22敗より1議席減となり野党共闘の限界を露呈した。その中にあってれいわは比例全体で220万票をとり、埼玉では13万票を超えている。れいわを含めた野党大連合と自公とは基礎票で拮抗する。次期衆院選の前哨戦となるが。

長期政権で野党「負け組」?

政治

産経の「正論」に吉崎達彦・双日総合研究所チーフエコノミストが「問われる政治的『安定』の意味」を書いている。           

「参議院選挙が終わった。その結果を一言でまとめるならば、『安倍・自民党が国政選挙で6連勝を収めた』ということに尽きる。

1人区で惜しい競り合いがあったとか、自民党が単独過半数を割ったとか、いわゆる『改憲勢力』の議席が3分の2に届かなかったとか、細かなことを言い出すと切りがない。肝心なのは、与党が改選過半数を制し、非改選議席と合わせて141議席という安定多数を得たことである。

<長期政権で野党「負け組」?>

2012年12月の衆議院選挙に勝利し、第2次安倍内閣が発足して以来、この6年半に行われた衆議院2回、参議院3回の選挙はすべて勝っている。このままいけば、安倍晋三氏の首相在任期間はこの夏に通算で佐藤栄作首相を超え、秋には桂太郎首相を超えて歴代最長となる見込みである。

参議院選挙における比例代表での自民党の得票率を見ると、13年、16年、19年と3回連続でほぼ35%となる。これに公明党の13~14%の得票をかさねると、与党の得票は約半分に迫る。この組み合わせが長期政権を可能にしてきた。

これに対し、最大野党は13年には民主党であったが、16年には民進党となり、19年には立憲民主党と国民民主党に分裂した。毎回、党名が変わるようでは、二大政党制の枠組みさえ危うくなってきた。連敗を続けるうちに、『負け癖』がついたと評しては気の毒だろうか。

与党の6連勝とは、有権者が『藪の中の二羽』を求める野党やマスコミの声に耳を貸さず、着実に『手中の一羽』を選択してきたことを意味している。世界的に『ないものねだり』のポピュリズム(大衆迎合主義)が跋扈し、既成政党の機能不全が目立つ中にあって、日本における政治の安定度は際立っている。

<安定による貴重な「一羽」>

この6年半に日本経済は、名目国内総生産(GDP)で平均1・8%、実質GDPで1・1%成長を続けてきた。『緩やかな景気回復』で実感を伴わないとしばしば言われるが、人口減少などの構造的問題を乗り越えてきた成果だ。政治の安定によってもたらされた貴重な『一羽』と言えよう。

ただし、このモメンタムを維持していくことは容易ではない。秋に控える消費増税や、本格化する日米経済協議、貿易戦争に伴う世界経済の減速に備えていかなければならない。この夏には、補正予算の編成が必要かもしれない。

参院選に備えて、今年の安倍内閣は『安全運転』に徹してきた。『平成から令和へ』という歴史的な転換点に当たり、国会で審議する法案も絞り込んできた。しかし選挙後は、さまざまな面で長期的課題への対応を加速していかなければならない。

今年は5年に1度の『財政検証』の年に当たる。本来は6月頃に、厚生労働省が年金制度の長期持続可能性のシミュレーションを公表するはずであった。ところが『老後資金2千万円問題』が注目を集めたこともあり、発表は先送りされている。選挙前に、将来の年金支給への不安を増幅させたくなかったのであろう。

しかし選挙後は、財政検証と年金問題をめぐる議論が待ったなしだ。その上で来年の通常国会では、年金改革の法改正をスケジュールに乗せる必要があるだろう。

<社会保障改革に取り組むべき>

さらに22年には、団塊の世代の先頭が75歳にさしかかる。向こう2年間は、高齢者医療の在り方を検討するラストチャンスとなろう。将来的な給付と負担のバランスを見直す社会保障改革に取り組むべきである。

カジノ解禁を認めた『統合型リゾート施設(IR)実施法』では、実施に向けたルール作りを始めるべき時期と定めているが、その作業は先送りされてきた。カジノ反対の世論が選挙に影響することを恐れたからだが、この作業も急がねばならない。大阪におけるIR開業はできれば25年の万博開催に間に合わせたいものである。

思うに政治的安定とは、それ自体を目的にするものではない。安定を生かして何を実現したいのか。参院選後に問われよう。

ところで7月19日付の英エコノミスト誌が、『満足のパラドックス』という興味深い記事を掲載している。『繁栄から取り残された』と感じる有権者は、景気のどん底でポピュリズム政党になびくのではない。むしろ景気が良くなり始めたときに急進的になるという。言われてみれば、世界経済は08年のリーマン・ショックから長い低迷期を経て、それが少し良くなり始めた16年になり英国は欧州連合(EU)離脱を決め、米国はトランプ氏を大統領に選出した。

この法則を日本経済に当てはめると、今回の参議院選挙における左派ポピュリスト政党『れいわ新選組』の人気は、日本経済が既に最悪期を脱していることの証左かもしれない。

とはいえ、試されるのは保守政治の側である。参院選で得られた政治的安定を、安倍内閣がどう使うのかに注目したい」。

安倍自民党が国政選挙で6連勝を収めたが、その要諦は参院選の比例代表の得票率で3回連続の35%と公明党の14%とで49%とほぼ半分に迫っていることである、問題は、安倍晋三首相の悲願である憲法改正をなすには、公明党の14%が期待できないことである。自民党得票率の10%アップが必須となる。自民支持層の思想武装が急務となるが。

③日経の「参院選投票分析」㊥に「1人区の野党当選者、無党派6割が分水嶺」「自民支持層1割切り崩す」が書かれている。

「与野党の一騎打ちとなった32の1人区では、10の選挙区で野党統一候補が自民党候補に勝利した。野党が結集しても支持層で一般的に劣勢に立たされがちな候補が勝つには、無党派層や与党支持層を切り崩す力が問われた。

共同通信の全国出口調査では、自民支持層が37%、特定の支持政党がない無党派層が20%を占めた。野党は立憲民主党支持層が14%、共産党支持層が6%などで、合計して過半数に届かない。単純計算では、多くの選挙区で野党支持層を1人に集めただけでは自民候補には勝てない。

票差が約9000票と32の1人区で最小だった宮城では立民の石垣のり子氏が制した。出口調査で自民支持と答えた割合は39%、野党は国民民主、共産、社民各党を加えた4党の合計で26%だ。投票者数に換算すると13万人の差がある。無党派層の得票率で65%と相手候補の26%を圧倒し、自民支持層からも12%の票を奪い、この差を埋めた。

野党候補が無党派層の票をどれだけ集められたかを比べると、選挙区によって大きな差が出た。32選挙区で無党派のなかの得票率が最も高かった野党候補は愛媛の永江孝子氏の74%、最も低いのは共産党候補に一本化した福井の33%だった。40ポイント超の差がある。

32人の野党候補のうち無党派層の得票率60%以上の野党候補は12人。このうち、秋田の寺田静氏や沖縄の高良鉄美氏ら9人が当選した。今回の1人区では『無党派層の6割』が当落の分水嶺だったと言えそうだ。

勝利を収めた野党候補は自民支持層からも一定の票を集めた。愛媛の水江氏には自民支持層の33%も投票した。ほかの9人の候補も自民支持層からの得票率が全員10%を超えた。10%を集められなかった青森の立民候補や三重の無所属候補は落選した。

もっとも選挙区によって野党支持層の厚みは異なり、候補者の特性など例外はある。岩手では自民支持が33%、野党4党の合計が31%。双方が自陣の支持層を固めるだけで接戦になる。長崎の国民民主候補は無党派6割、自民支持1割を集めても敗れた。長崎は自民支持率が41%、野党4党が22%と差が大きく、切り崩しが足りなかった。『無党派6割』などの目安は投票率の高さによっても変わる可能性がある」。

自民党は32の1人区で22勝10敗となったが、10敗の敗因は何か、である。自民支持層、公明支持層の1部が野党共闘候補に流れたからである。事実、愛媛では自民支持層の3割が回っている。自民支持層の思想武装が急務となる。次期衆院選は国民投票とのダブル選となり、9条改憲が争点となるからだ。

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