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改憲のジレンマ

コラム 国際

 

日経の社説に「集団的自衛権めぐるジレンマ解消を」が書かれている。

 

「日本国憲法が施行されて3日で67年を迎えた。安倍晋三首相の私的諮問機関である『安全障の法的基盤の再構築に関する懇談会』(安保法制懇)は今月中旬にも、憲法が禁じていると解釈してきた集団的自衛権の行使を容認する報告書を提出する予定だ。 首相周辺はこれを受けて政府・与党内の調整を本格化させ、秋の臨時国会に関連法案を提出するスケジュールを描いている。集団的自衛権の行使容認は安全保障政策だけでなく、現行憲法のあり方そのものの転機になる。

 

 

<グレー領域の調整カギ>

『自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利』というのが集団的自衛権に関する現在の政府見解だ。国連憲章51条にもとづく権利で、保有しているものの、日本は憲法9条の規定から行使は許されないとする解釈である。安倍首相はかねて内閣法制局によるこうした政府解釈に疑問を示しており、安保法制懇の報告を踏まえ、見直しへの手続きを踏んでいく意向とされる。中国の脅威や朝鮮半島の情勢など、東アジアの環境変化を踏まえても、従来の集団的自衛権の解釈を変更して、日本の安全保障にとって何が抑止力になり、プラスなのかを幅広く考えていくべきときだ。 政府見解の見直しを進めるにあたり3つのジレンマがある。その解消に動くことが求められているといえるだろう。 第1は『安倍首相のジレンマ』である。集団的自衛権の解釈変更は安倍首相が前面に出てくれば出てくるほど、抵抗が大きくなるという政治の現実がある。靖国神社参拝にみられるように首相は保守のイデオロギー色が濃い。見直し反対派がボルテージをあげる理由のひとつがここにある。 このジレンマを解消するには、集団的自衛権の見直しに反対してきた公明党の理解を得ることが何よりも必要になる。個別的自衛権や警察権の拡大で対応できると主張する公明党をいかに説得できるかにかかっている。 自民党の高村正彦副総裁が指摘している1959年の砂川事件の際高裁判決を論拠とする集団的自衛権の限定容認論にも公明党は難色を示している。警察権と自衛権、自衛権も集団的と個別的のそれぞれグレーな領域をどう整理するのか。知恵の出しどころだ。 第2は進め方の問題である。『政権公約のジレンマ』を抱えているからだ。自民党は2012年の衆院選の政権公約で、国家安全保障基本法を制定し集団的自衛権の行使に道を開く方針を打ち出した。ところが、首相の側から聞こえてくるのは安保基本法によるのではなく、自衛隊法などいきなり個別法を秋の臨時国会で処理する段取りだ。筋論からすれば基本法を制定し、考え方をはっきり示したうえで個別法に入るべきである。政治の駆け引きの材料となってきた9条の政治史を思いおこすと、個別法先行の考え方も理解できないわけではないが、基本法と個別法の同時処理も検討すべきだ。少なくとも基本法に盛り込むべき内容などを閣議決定し、政府声明や首相談話のかたちで明らかにする必要はある。

 

<解釈と明文改憲の区別>

第3は『改憲のジレンマ』である。もし政府解釈の変更によって集団的自衛権の行使に風穴をあけると、首相が掲げる改憲が差しせまった問題ではなくなり、むしろ遠のくという皮肉な結果をもたらす可能性をひめているためだ。 改憲ではさまざまなテーマが取り沙汰されるが、9条問題のように明文改憲をしない限り動かないというものはほとんどない。取りあえずの対応策として、そこをいわゆる『解釈改憲』でしのぐとすれば、国論を二分する憲法改正は急ぐまでもないといった意見が強まってくる事態も予想される。 解釈変更でできるのはどこまでで、武力行使を伴う多国籍軍参加のようにここからは明文改憲をしないとできないといった改正の仕分けをきちんとしておくべきだ。同時に改憲の手続きを定める国民投票法の今国会成立に向けた努力も当然求められる。戦後政治をふり返ると、自衛隊の存在、日米安保条約のあり方、そして集団的自衛権の解釈と、憲法9条が常に争点となり、その攻防がひとつの軸になってきた。もし、ここで集団的自衛権の問題に一応の方向が定まれば、憲法論議は新たな段階に入っていく」。 社説の結語である「戦後政治を振り返ると、自衛隊の存在、日米安保条約のあり方、そして集団的自衛権の解釈と、憲法9条が常に争点となり、その攻防がひとつの軸になってきた。もし、ここで集団的自衛権の問題に一応の方向が定まれば、憲法論議は新たな段階に入っていく」は、正論である。 まさに「改憲のジレンマ」である。政府解釈の変更によって、集団的自衛権行使に風穴が開くと、安倍首相が掲げる改憲が差し迫った喫緊の課題ではなくなり、改憲の機運が遠のくという矛盾である。今そこにある危機を、「解釈改憲」でしのげるからである。問題は、それでも安倍首相は、「解釈改憲」に突き進むしかないのである。

憲法を守って、国を滅ぼす愚を犯さないために、である。

 

編集 持田哲也

オバマ訪日、訪韓の狙いは?

コラム 国際

 
読売に「日韓協議前の綱引き」「議題幅広く」「慰安婦だけ」「今週視野に詰め」が書かれている。
 
「日本と韓国の関係改善に向けた日韓外務省局長級協議の開催を巡り、両国が綱引きを続けている。日本側が竹島問題など幅広い懸案事項について話し合いたい意向なのに対し、韓国側はいわゆる従軍慰安婦問題だけを議題とすることを求めている。韓国側は、今月下旬のオバマ米大統領の日韓訪問前の協議開催を求めており、両国は早ければ今週の開催も視野に、つめの協議を進めている。
 
3月25日のオランダ・ハーグで行われた日米韓首脳会議では、3か国共通の懸案である北朝鮮の核・ミサイル開発問題が議題だった。日韓両国で対立がある慰安婦問題などの歴史問題は取り上げられず、日本政府関係者は『関係改善の糸口はまだ見つかったと言えない』と話す。
日本政府内には、日韓関係の本格的な改善は、『両国間の多くの懸案について冷静に話し合うことが出発点になる』(外務省幹部)との見方が多い。このため議題は慰安婦問題に限らず、竹島問題や韓国人元徴用工を巡る訴訟など幅広いテーマを議題とするよう提案している。
韓国側は慰安婦問題のみを取り上げることにこだわっているが、1965年の日韓請求権・経済協力協定で『完全かつ最終的に解決された』と規定されていることから、仮に局長級協議で議題になっても、日本側の歩み寄りは困難だ。
ただ、日本政府内では、対話の枠組みを築くことが両国の国益につながるとの見方が強い。両国が議題で折り合えない場合、韓国側が態度を硬化させて、局長級協議が実現しない可能性もあり、ジレンマを抱える。
日本政府からは、局長級協議を実現させて、今後の定期的な政府間協議の開催や首脳会談につなげることへの期待から、『ここは、何としてでも協議開催にこぎ着けるべきだ』(政府関係者)との声も出ている。
 
<出方うかがう韓国>
韓国の朴槿恵政権は、日韓関係の早期改善を求めるオバマ米大統領の訪日、訪韓をテコに、対日外交の最優先課題である従軍慰安婦問題で、日本から譲歩を引き出したい考えだ。ただ、慰安婦問題で目指す『落とし所』について、政権内で意思統一がされておらず、当面は日本の出方をうかがう方針だ。
韓国が日韓局長級協議の議題を慰安婦問題に絞るよう主張しているのは、日本側の意向通り、韓国人元徴用工を巡る訴訟など幅広い懸案を協議した場合、『最も重要な問題が埋没する』(韓国政府当局者)と懸念するためだ。
 
日本に国家としての法的責任を認めさせた上で賠償を受け取ることが、元慰安婦の支援団体の主張とも重なる最善のシナリオだが、安倍政権が応じないことは織り込み済みだ。『法的責任』や『賠償』になるべく近い形で、韓国内の世論の支持を得られる解決策を探ることになりそうだ」。
オバマ大統領の訪日、訪韓を控えて、日韓外務省局長協議の開催を巡り、綱引きが行われている。協議開催自体は一致しているが、議題でもめている。韓国側は、慰安婦問題のみを取り上げることに固執、日本側は、竹島問題や韓国人元徴用工を巡る訴訟等幅広いテーマを議題とするよう主張しているからである。
問題は、いずれが、正論か、である。3月25日の3カ国首脳会談を仲介したオバマ大統領の意向、訪日、訪韓の意向を基準にすれば、日本側が正論となる。韓国の朴槿恵大統領は、慰安婦問題の突出を抑えるよう米国から警告を受けているからである。歴史問題よりも今そこにある危機を重視せよ。である。北朝鮮問題である。北朝鮮問題への日米韓の連携が急務なのである。
 
オバマ訪日、訪韓の狙いの1つは、日韓首脳会談への督促となるが。
 
編集 持田哲也

デフレからインフレへ

コラム 経済

 
日経の「けいざい解読」に滝田洋一・編集委員が「供給増へ投資の出番」「低すぎる成長の天井」を書いている。
 
黒田東彦日銀総裁は8日の記者会見でとても大切なことを語った。『日本経済の需給ギャップはほとんどゼロに近づいている』と言う認識を示したのだ。需給ギャップとは、経済全体でみて供給に比べ需要が足りないことを指す。モノやサービスを売ろうにも買い手が少ないのだから、値段は下がる。日本が苦しんでいた継続的な物価下落つまりデフレである。
このギャップが解消したのは、供給に比べて需要が持ち直したからだ。その結果、モノやサービスの値段は上がりだした。デフレの時代に幕が引かれ、緩やかな物価上昇つまりインフレの時代に入りつつある。
 
茶道に表千家と裏千家があるように、需給ギャップには様々な測り方がある。それにしても、最も重要な供給側の要素である人手が足りなくなっている。2月の失業率は3・6%。完全雇用に近い。今や大企業ばかりでなく中小企業でも賃金が上がり始めている。
黒田総裁は昨年4月に『2年をメドに2%のインフレを達成する』と約束した。その時は『できっこないさ』と懐疑のまなざしを向ける賢者たちが多かったはずだ。たった1年で世の中は様変わりといってよい。
 
アベノミクスと異次元緩和は魔法のつえだったのだろうか。謎を解くカギは、経済が無理なく伸びられる潜在成長率の低下に潜む。日銀によれば0・5%、内閣府の試算だと0・7%。
長引く景気低迷で、潜在成長率は1%をも下回る水準まで低下している。対する2013年度の実質成長率は2%台の半ば。この程度の成長でも潜在成長率の天井を突破し、需給ギャップが縮小するのである。
 
日本経済は体力の落ちた病人のようなものだ。デフレ不況で縮こまっているうちに、基礎体力がますます低下してしまった。これが潜在成長率の低下である。それではいけないと運動を始めた。アベノミクスの財政、金融政策であり、円高・株安の是正だ。おかげで体が温まってきたのはよいが、基礎体力が回復し切っていないものだから、下手をすると汗が止まらず息切れしてしまう。デフレの長いトンネルから抜けた後、いまの日本が直面するのはそんな事態である。
更新せず古くなった設備を使い続けると、ちょっと注文が増えただけでいたずらに繁忙となりかねない。特定の業種では人手が足らず、てんてこ舞い。かえって効率が落ちてしまう。
ところが、設備や雇用の不足を訴えながらも、新規の投資や正社員の増員に二の足を踏む企業も多い。高齢化や人口減の道を歩む日本では投資しても負担になるだけではないか。経営者にそんな究極のデフレ心理がへばりついている。
 
実際には成長の天井が意識されだした今こそ、情報技術を生かした合理化や省力化のための投資が欠かせない。20年には団塊の世代が全員70歳代になる。超高齢化に備えた介護ロボットの開発など、需要を先取りするときでもある。しがらみと足かせを取り払い企業の投資を引き出してこそ、低すぎる成長の天井を突破できる」。
「供給増へ投資の出番」は正論である。デフレの長いトンネルを抜けた後、今、日本が直面しているのは、供給増への設備投資の急増である。それには、法人実効税率の引き下げが急務となる。
 
編集 持田哲也

鹿児島2区補選にみる与野党の力関係

コラム 社会

 
産経に「政治とカネ、原発争点」「衆院鹿児島2区補選、15日告示」が書かれている。
 
「徳州会グループの選挙違反事件を受けた徳田毅氏=自民離党=の辞職に伴う衆院鹿児島2区補欠選挙が15日、告示される。告示直前の週末となった12日は自民党の石破茂幹事長、民主党の海江田万里代表がそれぞれ現地入りし、前哨戦を展開。補選は安倍晋三政権の経済対策に加え、補選の原因となった『政治とカネ』などが争点になりそうだ。27日に投開票される。
 
石破氏はこの日、奄美大島を回って、『次の時代に借金を残してはならない』などと訴え、社会保障制度を維持するための消費税増税に理解を求めた。安倍首相(党総裁)も19日に現地に入る方向で調整している。
 
もともと鹿児島2区は自民党が強固な地盤を誇る選挙区だが、今回は焦りを募らせている。事件の影響で、徳田氏の支持組織が『非常に動きづらい』(選対幹部)状況になっているからだ。増税に伴う逆風をかわすとともに、『政治とカネ』の争点化は避けたいのが本音だ。
これに対し、海江田氏は鹿児島市で『カネまみれの自民党だ。金権政治が行われたのは恥ずかしい』と批判。さらに、安倍政権の経済政策なども攻撃し、支持拡大を狙う。民主党と日本維新の会、結いの党、生活の党は『<政治とカネ>問題に終止符を打つ』を旗印に共闘している。
 
だが、政策面での足並みはバラバラだ。民主と維新は消費税増税容認だが、結いと生活は反対しており、『政治とカネ』でしか一致できないのが実態といえる。鹿児島2区は再稼働が焦点となっている川内原発に近接し、原発政策も争点になりそうだ。しかし、野党4党の間では原発政策に温度差があり、自民党との対立軸を明確に打ち出せていない」。
 
衆院鹿児島2区補選が15日、告示されるが、自民党候補の圧勝となる。自民党支持基盤が強固であり、「政治とカネ」「原発」が争点になっていないからである。内閣支持率60%前後、自民党支持率40%がストレートに反映されての圧勝である
 
編集 持田哲也

ネガティブサプライズ

コラム 国際

 
日経の「スクランブル」に、「『6月波乱』の足音」「追加緩和巡り探り合い」が書かれている。
 
「日銀の3月の全国企業短期経済観測調査(短観)を受けた1日の東京株式市場は大きな反応を見せなかった。だがよく目を凝らすと、株式市場の追加緩和期待をくっきりと価格に反映しているマーケットがある。日経平均オプション市場だ。投資家の動向をつぶさに観察すると、株式市場で消えかかっていた追加金融緩和への期待が再び高まり始めていることが分かる。
 
『全体として市場の予想より悪かった点は否定できない。株式市場は今後、日銀の追加緩和を期待する動きになっていくだろう』。みずほ投信投資顧問の柏原延行氏はこう指摘する。
 
株式市場参加者が今回の日銀短観で注目していたのは、4月1日からの8%への消費増税を受けて、企業の景況感がどこまで悪化するのかの一点に尽きる。
 
足元の大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス17と2007年12月以来の高水準だったが、3カ月後の先行き見通しはプラス8と9ポイント低下。市場予想の中心値(プラス13)を5ポイント下回っており、企業が消費増税後の景気動向を予想以上に警戒している現状が浮き彫りになったといえる。
 
振り返れば、3月11日の金融政策決定会合後の記者会見で日銀の黒田東彦総裁が『現時点では何か金融政策を調整する必要があるとは思っていない』と景気の現状に対する自信を表明。この発言を受けて、追加金融緩和に対する株式市場参加者の期待が大きく後退したという経緯がある。そのいったん消えかかった期待を再燃させたのが、今回の短観だったというわけだ。
 
野村証券の尾畑秀一氏は『日銀はもともと市場予想より高かった成長率見通しを引き下げざるを得ないだろう。今回の短観は直ちに4月に日銀が追加緩和を検討するまでの材料にはならないだろうが、様子をみて7月には動く』と読む。こうした動きを見据えているのが、日経平均オプション市場だ。
 
オプション価格から逆算した相場の予想変動率を5月物から順番に並べると、先週の3月27日の数値と比べ、1日時点ではすべての限月で予想変動率が上昇している。この数字は、オプションの投資家がその満期時点で日経平均がどの程度変動すると見込んでいるのかを示す。注目すべきは、6月物と7月物の予想変動率が他の限月に比べ高くなっている点。通常、満期が遠くなるほど予想変動率が高まるはずだが、オプション市場は『6~7月に相場が最も大きく変動する』と予想しているわけだ。
 
ゴールドマン・サックス証券の宇根尚秀氏は『ここ数日、満期6~7月では権利行使価格1万5500~1万6000円の日経平均のコールオプション(買う権利)の買いが目立ち始めた』と説明。『海外勢の一角が6~7月の追加緩和のサプライズに備えようと動き始めている』と指摘する。
 
日経平均が行使価格を大きく上回って上げた場合、このオプションがあれば行使価格で買って現値で売ることで利益を得られる。それだけ大幅高を見込む投資家が多いわけだ。こうした動きが、同時期の予想変動率の上昇につながった。
 
首尾良く市場の期待通りに日銀が動けばいいが、必ずしもそうとは言えないだろう。『日銀幹部と話す際には緩和の話題を極力持ち出さないことにしている』。ある大手証券の幹部はこう明かす。なぜか。『黒田総裁は市場に催促されて動くのを嫌うと思う。本当に動いてもらうためには、サプライズがあると思ってもらわないと』(同幹部)
 
緩和がなければ、逆にネガティブサプライズを呼び起こす可能性もある。いずれにしても、オプション市場が見据えるのは『6月の相場混乱』だ。オプションの価格が示すように、市場は将来を先読みしてどんどん動いていく。追加緩和という最大の材料を巡り、株式市場と日銀の『腹の探り合い』が始まった」。
 
日経平均オプション市場で、「6~7月に相場が最も大きく変動する」と予想している。「海外勢の一角が6~7月の追加緩和のサプライズに備えようと動き始めている」。日銀の追加緩和は、サプライズで前倒しの4月の可能性もあるが。
 
編集 持田哲也

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